第13話

『滑り込みセーフ!!』


 本鐘二つ目で席に座ったパレシャは肩で息をしていた。すぐに教師が来て授業が始まるが当然のようにパレシャは授業に興味はない。


 秘密のノートを広げてさっき起きたことを思い返していく。


『なんでズバニールがCクラスにいるのよ。ズバニールはAクラスにいるはずでしょう? Cクラスにいるはずのアリサとテッドとメイロッテはどうしたのよ? あ、ズバニールはAクラスに帰る途中で私にぶつかったのかもしれない。Aクラスにはケネシスもいるはずだから会いにいかなくちゃ』


 翌日の昼休みに二年Aクラスへ行ってみるとAクラスに続く廊下に衛兵が立っていた。


「ここからは関係者以外は立ち入りできません」


 Aクラスまでは五十メートルほどあり教室を伺い知ることもできない。


「同じ学校なのにおかしくない?」


「こちらのクラスは高度な授業のため生徒の皆様に集中していただくように配慮されております。

それに……」


 衛兵はパレシャの様子を見た。クラスで女子生徒はリボン、男子生徒はネクタイが異なるのでパレシャが二年Aクラスの生徒でないことは一目瞭然だ。

 パーティーでもないのにツインテールにつけられた派手なリボンに膝上までまくり上げた短いスカートとタイツも履かない生足、さらにはブレザーのボタンを外してブラウスをチラチラと見せている。はだけた姿を想像させる装いだが胸が小さいのでそこまでエロティックではないが淑女らしからぬ着こなしに何かしらの意図があるのではと勘ぐられる。

 ということは衛兵が訝しむに充分な状態である。


「こちらのご子女様方は大変に優秀ですので(貴女のような)不埒な思惑がある方をいれないためでもあります」


 衛兵が最初に述べた理由は本当のことだが二つめの理由は衛兵のパレシャに対する嫌みである。それほどまでにこれまで何度も、将来が約束された者たちとの接点を持ちたい不埒な希望者の襲撃があったことは事実だ。


「信じらんない!!」


 パレシャは頬を膨らませるとふいっと横を向いた。


『そのような装いでそのような仕草はあざとい。このような生徒をAクラスの方へ通せば学園長に叱責を受けてしまう』


 衛兵は自分の判断にホッとした様子だ。それに気が付かないパレシャはもと来た廊下を戻っていった。そしてクラスへ戻る途中でCクラスを覗くとタイミングよくズバニールと目が合った。


『えーー! ズバニールってやっぱりCクラスだったのぉ??』

 

 パレシャも驚いているがズバニールも驚いていた。だが自分になぜか自信たっぷりのズバニールがニヤリと笑って立ち上がりパレシャのいる廊下へやってきた。


「また来いとは言ったが翌日に来るとは随分と積極的な女だな」


「え? あ、うん、貴方がかっこいいなって思ったから」


「おまえ、名前は?」


「パレシャ・ユノラドよ」


「ユノラド? 聞かぬ名だな」


「南部の男爵家なの。転校してきたばかりなんだ」


「そういえば昨日もそのような話をしていたな。

俺はズバニール・オルクスだ」


「うん。知ってる」


 ズバニールがニヤける。


「そうか。さすがに俺は有名か。まあこの地位と美貌ならしかたあるまい」


 こうしてズバニールとパレシャは話をするようになり『よるコン』の他の登場人物に接触できないパレシャはとりあえずズバニールを攻略しておくことにした。


 パレシャはズバニールを攻略していきながら情報を収集していった。


『ケネシスがAクラスなのは『よるコン』と同じだけどアリスもテッドもAクラスってどういうことよ。メイロッテなんて一学年上のAクラスって話じゃん!』


 寮のベッドで枕をテーブルに投げつける。


「とにかくテッドとケネシスと出会わないと話は始まらないよね。このままズバニールを落とせばメイロッテが来るんじゃないかな。そうしたらアリサに助けを求めに行ってついでにテッドとケネシスを紹介してもらおう」


 パレシャは唯一接点が持てる食堂でテッドやケネシスとの出会いを画策しようとした。

 いつも多くの男子生徒とともにいるテッドには話しかけにくいがわざと目の前で転んでみたら同じEクラスの男子生徒が助け起こしてなぜかその生徒がテッドに謝っていた。

 そしてケネシスはいつもランチボックスを購入するとどこかへ行ってしまう。何度かケネシス追跡を試みたが足の長さと運動神経が違うため全く成功の兆しもなく消えられてしまっていた。

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