第45話 王都への帰還
もうすぐ年越しだというところで、僕たちは一度王都に帰還することにした。やっぱり年越しは家族とすごしたい。
グローリアのみんなに宿を提供してもらったお礼を言って別れる。ファミリアたちはみんな寂しそうだった。今度会う時にはマットさんとチャドさんにもファミリアができていたらいいな。
王都にたどり着くと、まず冒険者ギルドに寄る。
シンディーさんに大歓迎された。心配されていたらしい。
帰りの道中狩ってきた獲物を売ると、近況を報告し合う。呪われた魔物がぞくぞく発見されているのだと教えてもらった。僕の魔法具が役に立っているようで良かった。
この後は各々実家に戻ることにする。年越し期間は休息だ。オフィーリアは店の手伝いをさせられるから帰りたくないと言っていた。商人に休みは無いらしい。
僕はシュガーと一緒に家に帰る。最近騒がしかったからなんだか寂しい。シュガーの尻尾もしょんぼりしている。
「ママも寂しがっていたでしょうね」
「そうだね、早く母さんに会いに行こう」
シュガーを撫でると家路を急ぐ。
帰宅すると、そこには母さんだけでなく父さんもいた。僕を待ってくれていたらしい。
久々に母さんの作ってくれた夕食を食べながら、冒険の成果を報告する。
母さんは最近教会と孤児院に手伝いに行くようになったそうだ。そういえば、もうすぐ年始のバザーだ。孤児院のみんなにも会いに行かないとな。
ダンジョンでオーエンとウォルト兄さんに会った話をすると、父さんは複雑そうな顔をしていた。ウォルト兄さんと飲みに行ったというとホッとしたようだ。正妻様には内緒にして欲しいとお願いしておいた。
父さんの時の研修も同じ内容だったのかと聞くと、顔をしかめて、傷だらけになりながら何とか二十階層まで辿り着いたと教えてくれた。騎士団員は誰もが通る道らしい。
シュガーがそんなに大変なダンジョンだったかしらと不思議そうにしていた。僕らがわざと罠に掛かりに行ったことを暴露されて少し叱られてしまった。シュガーめ、後でもふもふの刑に処してやる。
家族との食事はとても楽しかった。食後に時間停止機能付きのマジックバッグに残っていた大ダコでタコ唐揚げを作ったら父さんがハマってしまったらしく、レシピを要求された。王都だと海鮮はちょっとお高めなのだが、この分だと取り寄せて作りそうだ。
久しぶりの家族団らんだったが、僕はいつものパーティーメンバーが恋しく感じた。旅の間はずっと一緒にいたから、第二の家族のように思える。みんなも同じように感じてくれていると嬉しいな。
次の日は朝から女神様へ祈りに教会へ行った。一人で教会に来るのは初めてだ。僕は座って祈りを捧げる。
するとまた体が動かなくなった。
『久しぶりですねレイン。たこ焼き美味しかったです』
ありがとうございます。気に入っていただけて何よりです。
『今日は少しお願いがあります。この教会横の孤児院に居るファミリアを、何か怪しい人物達が狙っているようです。助けてあげてください』
前に会ったグラスバタフライだろうか。やっぱり狙われたか。
『おそらく近日中に動くでしょう。お願いしますね、レイン』
僕は目を開けると、まず父さんに魔法具の伝書鳥を飛ばした。そして孤児院に急ぐ。
院長先生に神託があったことを話すと、真っ青になってしまった。僕はグラスバタフライの召喚者を紹介してもらう。
来たのは体格のいい同い年くらいの男の子だった。
「初めまして、マイクって言います。精霊の召喚者様にお会いできて光栄です!」
彼は精霊信仰が強いらしい。キラキラした目でシュガーを見ていた。今はそれどころでは無い。僕は神託があったことをマイク君に伝えて、周囲に気をつけるように言った。
グラスバタフライは幻術で姿を消せる。確実に手に入れようとするなら本体を直接狙うより、召喚者を誘拐してファミリアを脅迫するほうが確実だ。
そう言うとマイク君は落ち込んだ様子で言った。
「最近視線を感じると思っていたんです。やっぱりジーナが狙われているんですね……僕悔しいです。ジーナを守るために強くなろうと決めたのに、こんな時にどうしたらいいのか分からなくて」
それはそうだろう、彼はまだ十五歳だ。凶悪な犯罪者に一人で立ち向かえるわけが無い。僕は父さんが来るまでマイク君を慰め続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。