第40話 お宝

「オーエン達はこれからどうするんだ?」

「俺達は二十階層まで行かなければならない」

 きっと二十階層まで行くのが研修なのだろう。僕はちょっと心配になった。コイツらたどり着けるのか?

 心配にはなったが一緒に行動する訳にもいかず、彼らとはそこで別れた。

 まあ、彼らの後をゆっくり行けば、また罠にかかっても助けてやれるだろう。僕たちもとりあえず進むことにした。

 

 僕たちはオーエンを救った後も、十三階層をブラブラしていた。

 ここの罠は特に悪質らしく、二重トラップなどが多かった。それにちょっと楽しくなってしまったのだ。

 うちのファミリアたちは罠を見破るのが得意な子が多く、今のところ全ての罠を回避出来ている。まあ、シュガーも今回は罠探しに参加しているから、そのせいもある。

 

「こういうのって、わざと罠にかからないと手に入らない宝箱とかあったりするよな」

 僕がポツリと零すとみんな不思議そうな顔をしていた。

「なんか楽しそうだからやってみるか」

「どの罠にします?」

 何故かみんな乗ってきた。うちのパーティーノリがいいよな。

 ウィレミナ曰く、僕が言うから何かありそうな気がしてしまうらしい。みんなの中の僕はいったいどうなっているのだろう。

「よし、一人だけで落とし穴に落ちてみるか」

 そういったアイヴァンが勢いよく落とし穴がありそうな場所に飛び込む。思い切りがいいな。

「あったぞ!宝箱!引き上げてくれ」

 本当にあったらしい。このタンジョン面白いな。

 アイヴァンはロープを伝って登ってくると。大きな宝箱を掲げた。

 大きさに期待が高まる。

 そっと蓋を開けて中をのぞき込むと、そこには刀身が波打った美しい剣が入っていた。これはあれだ、見たことがある。たしかフランベルジュと言うやつだ。

 しかも炎属性が付与されているらしい。かなりの金額で売れそうだ。

「これカッコイイな!俺が使ってもいいか?」

 アイヴァンが嬉しそうだ。

 

 ただ、この剣は負傷兵を増やすために使われていた剣だ。刺すだけで傷口が大きくなるので、治りが遅くなり、感染症になりやすくなる。確かに刀身は炎の様だが、炎属性を付与すれば傷口が焼かれて、本来の役割を果たせなくなるのではないだろうか。

 どの道確実に仕留めなければならない魔物狩りには向かない剣だろう。

 そう説明したのだが、アイヴァンはどうしても気に入ったらしい。サブウェポンとして持つことにしたようだ。カッコイイのは本当だから気持ちは分かる。

 その後もわざと罠に引っかかったりしてみたけど、宝箱は手に入らなかった。残念だ。

 僕たちは十四階層に降りた。

 

 十四階層もまた迷路だった。迷いながら進んでいると、またタイレルに会った。タイレルは僕たちを見つけた瞬間安堵したのか泣き出してしまった。

「また罠に捕まったようよ」

 あいつらいい加減にしろよ。

 

 またタイレルについて行くとオーエンたちは無数のツタに拘束されていた。もう研修を諦めた方がいいのでは無いだろうか。

「騎士団は魔法が苦手なヤツが多いんだ。得意なやつはみんな魔法師団に行くからな。だから魔法で罠を回避するとか出来ないんだよ」

 助け出したオーエンはそう言った。まあ確かに一理ある。

 というか研修場所がここなのは、魔法師のありがたみを分からせるためだったりしないだろうか。ありそうだ。もしくは魔法の練習もちゃんとしとけという無言のメッセージだったりしてな。

 何はともあれ頑張れオーエン!お兄ちゃんは応援してるぞ。

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