第39話 宝探しダンジョン

 グローリアの面々と別れ、僕たちは宝探しダンジョンに挑むことにした。目指すは十階のセーフゾーンである。

 

 宝探しと聞いてファミリアたちも楽しそうだ。僕らはギルドでダンジョンの入場予約すると早速ダンジョンに向かった。

 ダンジョンは賑わっていた。王都近郊のダンジョンより人が多い。トラブルにならないよう気をつけなければ。

 

 ダンジョンの中に入ってみるとそこは本格的な迷路だった。僕たちは左手を壁に着けながらとりあえず出口まで向かうことにした。魔物の数は驚くほど少ない。

 袋小路に差し掛かると、そこには宝箱があった。一つ目の宝箱である。

 ワクワクしながら箱を開けると、そこには小さなマントが入っていた。

「ファミリア用かな?」

 サイズ的にそんな感じがした。どうやら火耐性のあるマントらしい。

「火耐性ならキャロットにつけてもいいか?」

 ルシアがみんなに確認する。誰も異論は無い。

「良かったなキャロット、よく似合ってるぞ」

 マントをつけたキャロットは誇らしげだ。どうやら随分気に入ったらしい。一つ目のお宝から当たりだな。

 

「なんかお前がいると当たりを引き続けそうな気がするな」

 アイヴァンがしみじみと言う。僕にそんな能力はない。だが、女神様には神託を貰った縁があるので、運は上がっているのかもしれない。どうだろうな。

 結局この階層で見つけた宝箱は一つだった。

 

 次の階層に降りると、またまた迷路だった。だが今度は魔物も多くいる。強い魔物では無かったのでサクサク攻略していると、また宝箱を発見した。

 今度の宝箱はかなり高いところに設置されていた。ミミが飛んで宝箱を持ってくる。中に入っていたのは大粒の宝石だった。

 なかなか高く売れそうである。

 

 そんなふうに宝箱を探しながら降りていくと、かなり早くワープ機能のある十階層にたどり着いた。

 十階層までほとんど迷路続きだったので広いところに出られてホッとした。

 

「何でここにいるんだよ」

 突然後ろから声をかけられる。そこに居たのは僕の腹違いの弟のオーエンだった。

「それはこっちのセリフだよ。お前は騎士じゃ無かったのかよ」

「その騎士団の研修だよ」

 曰く、騎士団も何かあった時のためにダンジョンを経験しておかないといけないらしい。それで新人研修としてやって来ていたというわけだ。

「兄さん達は気楽な冒険か?羨ましい限りだ」

 オーエンが皮肉を言うが僕は別のところが気になった。兄さん!まさかの兄さん呼びである!疎まれてると思ってたけど、そうでも無かったのかもしれない。僕がニマニマ笑っていると、失言に気づいたらしいオーエンが慌てて言う。

「なんだよ、なんか文句あんのか!?一応兄だろう!」

 オーエンは思いの外可愛い弟だったらしい。これからは兄として可愛がってやることにしよう。

「とにかく、こっちは研修中なんだ!邪魔すんなよ!」

 オーエンは足早に去ってしまった。ツンデレかよ。

 

 僕らは地上に戻るのも面倒だったので、ここに一泊して二十階層を目指すことにした。次からは敵も強くなって、楽しくなってくるだろう。


 

 

 ダンジョンは十一階から妙に難易度が高くなった。

 罠が多い上に魔物が強いのだ。群れではなく単体で出てくる。まだ余裕はあるが、二十階まで今日中に行くのは厳しいかもしれない。

 罠は今のところファミリアたちが全部見つけてくれてるのだが、いつ引っかかるか分かったものでは無い。


 しかも所々で罠にかかって怪我をした冒険者に出会うのだ。その度にティアが大活躍してお礼で小銭が増えてゆくが、なんだか士気が下がる。

 これはお宝を見つけないと帰れないぞ。

 

 やっとの事で十三階層にたどり着いた時だった。向こうから一匹の猿が駆けてきた。あれはオーエンのファミリアだ、確か名前はタイレル。

 タイレルは僕たちの前で止まるとシュガーになにやら訴えだした。

「あらあら、弟くんが落とし穴に落ちて出られなくなってるらしいわよ」

 マジか。僕達はオーエンの救援に向かうことになった。

 タイレルが先導してくれて、一時間ほどでオーエンの元にたどり着いた。タイレルはこの距離を助けを求めて走ったのか。すごいな。

 


 

「おーい!生きてるか?」

 落とし穴の中を覗くと数名の騎士がいた。何故かみんなボロボロである。

「とりあえずロープを落とすから登ってきてくれ」

 

 僕が穴の中に叫ぶと騎士たちが礼を言ってきた。

 全員穴から上がるとかなり怪我人が多いことに気づく。ティアは早速治療しにいった。

 

「助かったが、なんでお前そんなに綺麗なんだ」

 オーエンが言う。え?何、口説かれてるの僕?禁断の兄弟愛とかやめて欲しいんだけど。

「そうじゃない!何で罠にかかった様子がないんだって言ってんだよ!」

 オーエンが顔を真っ赤にして怒った。だって罠にかかってないんだから当たり前だろ?

「寧ろそっちはなんでそんなに罠に掛かってるんだ?よく生きてたな」

「強制解除しないと進めない罠もあっただろう」

 なるほど、彼らは自ら突貫して無理やり罠を解除したのか。そりゃ傷だらけになるな。

 

「魔法で解除すればいいだろ」

 そう言ったら、オーエンたちは呆然としていた。気づかなかったのかそれほどの魔法を使える人がいなかったのか、どっちだろうな。

「もういい……とにかく助かったありがとう」

 ちゃんとありがとうが言えるんだな、お兄ちゃん嬉しいぞ。ニマニマしていたらオーエンに思い切り睨まれた。

 コイツほど揶揄い甲斐のあるやつは他に居ないだろう。

 

「何か礼をしたい、冒険者はこういう時どうするんだ」

 冒険者が誰かに助けられた場合、大抵は金を支払う。他には狩った獲物を譲ったり、宝箱の中身を差し出したりだ。どちらにせよ金になるものだな。

「ならばこれをやろう。宝箱に入っていたものだが俺達には必要ないからな」

 それは女性用の装飾品類だった。ウチには女の子が三人いるからちょうどいいと思ったのだろう。それぞれ物理耐性をあげる魔法が付与されているようだ。これ結構なお宝じゃないか?

 礼を言って受け取ると早速女性陣に差し出す。

 ルシアは小さな魔石が沢山ついたアンクレット。オフィーリアは魔法石のついた装飾の細かい髪飾り、ウィレミナは魔法石の沢山付いた腕輪を選んだ。

 みんなよく似合っている。いいもの貰ったな。

 

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