第38話 ファミリアの看護
翌日。僕達はお腹を空かせたファミリアたちに起こされた。
「ほら、もう昼よ!あんたたち起きなさい!」
シュガーの足がペチペチ頬を叩く。比較的飲む量が少なかった僕は、いち早く目を覚ますことができた。
しかし頭が重い。
「もうしょうがないわね、ミミ手伝ってちょうだい」
ミミがマジックバッグの中からコップ取り出すと、シュガーが魔法で水を入れる。ミミが差し出してくれたコップを取ると一気に飲み干した。水が冷たくて気持ちいい。
それに習ってか、ティアとポイズンスライムのベアトリスもコップを取り出した。体に幾つものコップが刺さっていて面白い。シュガーがその全てに水を入れると、酔い潰れているみんなの元へ運んで行った。
みんなのご飯を作ろうとキッチンに行くと、ワイバーンのセスが何やら獲物を狩ってきていたようだ。肉食組はそれをみんなで分け合って食べていた。朝からスプラッタな光景を見てしまった。
「ありがとうセス。みんなのために狩ってきてくれたんだな」
セスを撫でるとセスはしょうがないなという顔をした。もしかしたら慣れているのかもしれない。グローリアはしょっちゅう酔いつぶれていそうだ。
僕の足元について来ていたミミが僕のズボンの裾を引っ張る。まずはミミのご飯だな。
お腹をすかせていたのだろう、勢いよく食べていくミミに申し訳ない気持ちになった。お腹がすいていたのにこんな時間まで眠らせてくれたのだ、優しい子である。
僕はマジックバッグから米と味噌もどき取り出して味噌粥を作る。二日酔いには味噌だろう。昨日買ったアサリもどきも入れておこう。
いい匂いがしたのか、僕と同じで比較的酒量の少なかったオフィーリアがキッチンに来た。
「おはようございます。手伝いますね」
オフィーリアはアサリの殻を丁寧に取ってくれた。ミミもオフィーリアの真似をしだした。うさぎって器用だな。ちょっと毛が入らないか心配になるのだが、微笑ましさが勝って指摘できない。
食事が終わった肉食組は、まだ起きられない人達を起こしに行ったようだ。時々悲鳴が聞こえてくるのは気のせいだろう。どんな起こし方をしているのやら。
暫くするとオーロラバードのナナが、フラフラのオリバーさんをキッチンに連れてきて餌を催促してた。さっきは餌がどこにあるのか分からなかったからあげられなかったんだよね。
オリバーさんは戸棚を開けるとナッツを取り出してあげた。
ナナは嬉しそうである。
それから続々とみんな起き出してきた。ルーカスさんなど二首鴉のクロに交互に尻をつつかれている。
「ミミ?ここに居たの?ご飯遅くなってごめんね」
若干フラフラとしたウィレミナがミミに言う。体が小さいからか、ウィレミナは昨日早々に酔いつぶれて僕の膝を枕にして寝ていた。
「ミミの餌はあげておいたよ。座って待ってて、今雑炊ができるから」
「はー、酔いつぶれた次の日にまともな朝食食べれるのって初じゃね?レインちゃん嫁に来ない?」
オリバーさんが馬鹿なことを言っている。まだ酔いが覚めていないようだ。
キャロットにもたれかかったルシアが嫁という言葉に少し反応した気がしたが、そっとしておいてやろう。いずれ収まるところに収まるだろう、きっと。
ティアとベアトリスとシュガーは相変わらず水はいらないかと聞いて回っている。働き者だなぁ。酔っぱらいなど放っておけばいいのに。
出来たての雑炊をみんなに配ると歓声が上がった。グローリアはコメは初体験だと思うのだがどうだろうか。
「これ食べやすくて最高!二日良いなのにガンガン食えるわ」
どうやら気に入ってくれたようだ。作った分で足りるかなという勢いで食べている。
「あーもー本気でみんな勧誘したいわ。九人パーティーとかどう?」
残念ながらお断りしておきます。大勢なのも楽しいけどね。
「お前たち次はどうするんだ?ダンジョン潜るの?」
ジミーさんに今後の予定を聞かれた。どうしようか、まだ決めてなかったな。
ダンジョンに潜るのも楽しそうだ。
「ダンジョンはオススメだよ、ここのダンジョンは面白い仕掛けがあるからね」
「仕掛けっていうか、人を見てるんだよ。その人にふさわしい宝を与えられるって言われてるんだ」
なんだそれ、面白そうだな。元々ここのダンジョンは宝箱の数が多いことで有名だ。毎回出現する場所も違うから宝探しダンジョンなんて呼ばれていたりする。一生遊んで暮らせるほどのお宝を手に入れた人もいるらしい。
うん、次はダンジョンにしようか。
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