第37話 酒乱

 さて次に僕はタコワサの製作に取り掛かった。

 ワサビを摩り下ろし、タコと和える。ワサビは少なめにしておいた。味見したシュガーが悲鳴をあげる。

「なにこれ絶対食べ物じゃないわ!」

 シュガーは前足でテーブルの上をぺちぺち叩いたり、尻尾でビタンビタンしたりしていた。

 

「これは酒とあわせてこそ美味しいものなんだよ。という訳で今からお酒解禁です!」

 お酒解禁と聞いてグローリアが歓声をあげる。早速封を開けていた。

 しかしシュガーの反応を見てだろう、なかなかタコワサに手をつけようとしない。

 僕はタコワサを一つ口にいれると、一気に酒を煽った。あー最高である。

 グローリアは誰が一番最初に手をつけるか押し付けあって、結局ジミーさんが行くことになった。ジミーさん、名前といい貧乏くじ引きすぎじゃないか?

 恐る恐る口に入れる。瞬間辛っ!と叫んで悶絶した。

「そこで一気にお酒です!」

 僕が叫ぶとジミーさんはお酒を煽った。

「あー確かにこれ、無限に酒飲めるわ」

 慣れたら気に入ったらしく、次々にタコワサを食べるジミーさんにみんな覚悟が決まったらしい。それぞれ口に入れていく。

 タコワサの評価は真っ二つに別れた。ワサビは癖が強いから仕方ないことだがちょっと悲しい。

 悲しかったのでタコ唐揚げも作ってみた。こちらはみんなに好評だった。酒瓶がどんどん空になって行く。

 

 皆が潰れる前にと海鮮焼きそばも急いで作る。僕ほとんど料理しかして無くないか?僕ももっとお酒飲みたい。

 ファミリアたちはみんな呆れ返ったようで、隅っこで団子になって寝ている。ローガンさんのファミリアであるワイバーンのセスは、大きすぎてみんなの枕になっていた。

 

 しばらくしてみんな出来上がってきた頃、オリバーさんに絡まれた。

「お前んとこはいいよな、女の子多くてさ、俺たちなんて男六人だぜ、花も何もあったもんじゃねーよ」

 どうやら春が来ないことに悩んでいるらしい。かなり鬱陶しい。終いにはうちのメンバーを勧誘しだした。

「ルシアちゃんグローリアに入らない?今なら逆ハーレムだよ?」

 

「こいつは俺のなんでダメです」

 

 思いっきりお酒を吹き出してしまった。アイヴァンさん!?

 ルシアがアイヴァンの発言に真っ赤になっている。青春かよ!

 

「おま、誤解を招きそうな発言はやめろ!」

 ルシアの叫びにアイヴァンはそ知らぬ顔でなんか間違ってるか?と言っていた。そうだ、こいつはこういうヤツだった。

 ルシアは返す言葉もなく固まってしまった。僕の隣ではウィレミナがにやけ顔で僕の肩をバンバン叩いている。痛いよウィレミナさん。突然の少女漫画展開に興奮するのは分かるけど、力加減してください。

「ほら焼きそばもっと食うだろ?」

 何事も無かったかのようにルシアに焼きそばを差し出すアイヴァンに、ルシアは無言のままそれを受け取った。

 青春だな!


 その光景を見たオリバーさんは狡いと泣いていた。なんだこのカオスな空気。誰かなんとかしてくれ。

「レイン、タコ唐追加しておきますね」

 普段と変わらないテンションで聖母のように微笑むオフィーリアに少し救われた気がした。しかもタコ唐を追加で作っていてくれたらしい。きっと将来はいいお嫁さんになるだろう。

 

 

 

 その後も飲み会は続き、最後にはみんな酔いつぶれた。結局グローリアの拠点に泊めてもらえることになり、みんな翌日の昼まで爆睡していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る