第36話 出会ってしまった

 巨大タコを退治してグローリアの拠点に行く前に、必要なものを買いに行くことにした。

「たこ焼きと……あと焼きそば食べたいって言ってたので、海鮮焼きそばでいいですか?」

 みんなに確認をとると、アイヴァンがものすごくキラキラした目で海鮮焼きそば!と言っていた。こいつ焼きそば大好きだからなぁ……

 食料市場を探すと、エビやイカといった普通の海鮮もあったので購入する。というか普通のタコもあった、大王ダコを狩った意味……いや、あれは人助けだ。あいつを倒さなきゃ漁師さんが漁に出られないのだから。

 

 他にも必要な食材を探してゆく。女神様はかつお節があると言っていた。僕は目を皿のようにして探した。するとひとつの店にそれらしいものを見つける。ありがとう女神様!女神様に感謝しながら削り機と一緒に大量購入する。

 他にも店を回ると青のりっぽいものを見つけた。紅しょうがはしかたない諦めよう。

 

 

 

 そうして店を冷やかしながら歩いていると、僕は見つけてしまった。タコと最強に相性のいい食材を。

「どうした?なんか見つけたか?」

 感動にうち震える僕にオリバーさんが声をかける。僕はその食材を指さした。

「何だこれ?値段高くね?」

 高いからなんだと言うのだ。僕は絶対にこれを買う。買わなければならないのだ。

「これはワサビです。タコと最高に相性が良く、ツマミにすると無限にお酒が飲めます」

「よし買おう」

 酒のつまみと聞いてグローリアの表情が変わった。前回ものすごく飲んでたもんな。タコワサは好みがわかれるが、みんなはどうだろうか。食べた瞬間の反応が楽しみだ。

 視界の端でルークがわさびの匂いを嗅いでものすごい顔をしていた。これホントに食べ物?という顔で僕を見てくる。僕は好きなんだけどな。

 

 

 

 買い物を済ませ、グローリアの拠点にやってきた。広い庭のあるなかなかいい家だ、さすがSランク冒険者。

 僕は許可をとって庭にたこ焼き器を設置する。みんなその形状に不思議そうにしていた。

「なんだ、この穴だらけの鉄板?」

 ふふ、この穴こそが重要なんだ。完成品を見て驚くがいい。

 

 みんなに火を起こしてもらい、僕は巨大タコ足と格闘する。塩水でぬめりを落とすところからだ。重労働である。

 火起こしに溢れたメンバーが手伝ってくれた。タコを食べたことの無いシュガーがこれ本当に食べられるの?と聞いてくる。美味しいから待ってなさい。

 力のある男性陣に鰹節を削ってもらって、タコをぶつ切りにしたら準備は完了した。

 さて、いざたこ焼きパーティーの始まりだ!

 

 僕は鉄板に生地を流し入れる。しばらく待って穴のところに大粒のタコを投入する。そしてここからが本番だ。

 僕はたこ焼きをくるりとひっくり返す。そして形を整えるとオーディエンスから歓声が上がった。

「なるほど、そのための穴だったのですね」

 オフィーリアが納得したようにうなづいた。みんなもファミリアたちも、興味津々でたこ焼きが出来上がってゆくのを眺めている。

 焼きあがったら青のりとソースとマヨネーズ、そして鰹節をかけて完成だ!

「すごい、中身がトロトロ!タコも不思議な食感でおいしい!」

 たこ焼きは大好評だった。でも僕はもう一つ用意している。

 僕は焼きあがったたこ焼きを油の中に投入した。揚げたこ焼きである。

 こちらも好評だった。たこ焼き派か揚げたこ焼き派かで論争が起きるくらいには。僕は揚げたこ焼きかな。外のカリカリ感がたまらないのだ。

 

 せっかく新鮮なタコなので、タコそのものの味も味わって欲しくて僕はタコ刺しも提供した。みんなタコの食感が気に入ったようでホッとした。嫌いな人もやっぱり居るからな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る