第33話 マルクモア

 王都から馬車で五日間、僕たちは貿易都市マルクモアに到着した。

 僕たちのパーティーはオフィーリア以外はみんな王都から出たことがないので、みんな大はしゃぎだ。特に海を見たルークの反応が凄くて、飛び込むんじゃないかと思った。

 

 ここにはひと月は滞在することになるので、僕たちはまず冒険者ギルドに向かった。まずは情報を仕入れなければ。

 ギルドに入ると、王都とはまた雰囲気が違った。なんだか多国籍な感じがする。外国から来ている冒険者もいるのかもしれない。

「王都ギルド所属のBランク冒険者さんですね。ギルドカードを確認します。……はい、問題なくこちらで依頼を受けていただけます」

 ギルドカードの確認がなされる。ここで問題があると依頼が受けられなかったり、受けられる依頼に制限がかかるらしい。日頃の行いは大事である。

 僕たちはとりあえず今日は宿を紹介してもらうだけにした。やっぱり街を見て回りたい。

 

 

 

 ギルドを出て大通りにやってきた。心なしか王都よりも活気がある気がする。売っているものも多国籍だ。僕たちは露店を冷やかしながら歩いた。

 すると、アクセサリーを売っている露天を見つけた。守り石のアクセサリーらしい。せっかくだからみんなで購入することにした。

 僕が青、アイヴァンが赤、ルシアがオレンジ、オフィーリアがピンクそしてウィレミナが緑のネックレスだ。

 僕以外はみんな髪の色に近い色になった。こういう時灰色は損だ。

「いいじゃない似合ってるわよ」

 シュガーが褒めてくれたので、指先で頬を撫でる。ファミリアの分も用意できたら良かったんだが、大きさ的に難しかった。

「今度みんなで作りましょうね」

 オフィーリアが笑っていう。そうだ、ずっと一緒にいるのだから、何度だって機会はある。僕達は笑いあった。


 

 

 そのあと僕達は、浜辺へ行ってみることにした。

 浜辺の傍には漁師がやっているらしき店があって、新鮮な魚を焼いて食べることができるようだった。

「これは食べるしかないだろう!」

 ルシアの言葉にみんな頷いて、新鮮な海鮮に舌鼓を打った。ティアが貝を殻ごと食べていたのには驚いてしまった。ミミは貝殻が不思議だったらしくカチカチして遊んでいる。カスタネットかな。

 食べ終わると、ルークがアイヴァンの服を噛んで引っ張っていた。早く海に行きたいらしい。

 浜辺に着くと、ルークは真っ先に海に飛び込んだ。飛び込んですぐ、しょっぱかったのかびっくりしているのが面白かった。ミミが飛んでルークのところに行く。水に浸かる勇気はないようで、低空飛行で飛沫を浴びていた。ティアは水に浮かんでクラゲと化している。シュガーは意外に普通に泳いでいた。

 僕たちはみんな足だけ海に入ってみることにした。前世の海水浴を思い出してなんだか懐かしい感じがした。

 そのとき、ウィレミナが砂に足を取られて転んでしまう。ずぶ濡れになってしまった。それを見たアイヴァンがすかさず僕に水をかけてきた。それからはみんな水の掛け合いだった。ファミリアたちも加わって乱戦である。

 そしてその光景を、キャロットだけが浜辺で欠伸をしながら眺めていた。断固海に入る気はないらしい。酷く呆れた顔をしていた。


 散々海で遊ぶと、僕たちは魔法で水のシャワーをだして全身を洗う。浜にいた他の人々が奇怪なものを見る目で僕たちを見ていた。

 そのあとは温風魔法で乾かして終了だ。遠くで見ていた漁師が拍手していた。

「海の魔物討伐もしてみたいな」

 ルシアがそんなことを言う。一度依頼を受けてみるのもいいかもしれない。なんにせよ、明日は今度こそ冒険だ。

 面白い依頼が見つかるといいな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る