第28話 合同依頼

 ダンジョンの入口にたどり着くと、僕達は早速二十階層にワープした。 

 今日の依頼は革細工職人からの依頼で、ダンジョン二十一階層から二十二階層に棲息する水ワニの皮をできる限り大量に入手して欲しいというものだった。

 傷がつかないように倒さなければならないので中々大変だ。

 

「でもどうやって倒そうか、皮に傷をつけないようになんて……傷が少ないほど査定額が上がるんでしょ?」

 そう、それが問題だ。迂闊に炎魔法など使えないから、今回は剣で一突きにするのが理想である。魔法使い組は補助に回るのがいいだろう。

 二十一階層に向かいながら、作戦を練る。ダレンさんのファミリアのファルが、誘導なら任せろと空を旋回してアピールしていた。やっぱり鳥のファミリアはいいな。

 僕の浮気な考えが伝わったのか、シュガーに尻尾で顔を叩かれる。モフモフの尻尾はご褒美です、ありがとうございます。

 

 二十一階層に辿り着くと、そこには見事な大河が流れていた。どこかジャングルを彷彿とさせる景色だ。本当にダンジョンはどうなっているのだろうか。

「水ワニは水の中からいきなり襲ってくることもあるから気をつけてね」

 シンシアさんが周囲を警戒しながら言う。

「とりあえず、ワニの群生地に行くか」

 僕らは氷の剣に先導してもらって歩き出した。着いた先は大きな湖だった。

「ここに大量に生息してる。囲まれたら厄介だから、少しずつおびき寄せよう」

 サラさんの言葉にみんな首肯すると、作戦を開始した。

 ファミリアたちがワニを誘き寄せ、剣で切り裂いてゆく。

 やってみたらずいぶんと効率が悪いように思う。

 

 そこで僕は閃いた。

「あの、やってみたい事があるんですがいいですか?」

 僕はみんなに許可をとると、魔法石を構えた。

 そして、高威力の雷魔法を湖に放つ。すると、湖の中にいた生き物たちが気絶して浮いてきた。前のカエルの時にやったビリ漁である。

 僕は風魔法で何匹かすくいあげると、首に土魔法の杭を突き立てた。

「どうです!?これなら早いでしょう!」

 僕が振り返ると氷の剣は唖然とし、僕の仲間は大笑いしていた。

 日本では禁止されているビリ漁は、なかなか衝撃だったらしい。

 ファミリアたちは飛び上がって喜んでいた。声をあてるなら大漁だー!だろうか。ファルは浮いた魚を拾い上げて、みんなのところに持って行っている。

 氷の剣のみんなも衝撃がとれたのか、笑い出してしまった。

「よし、このまま狩れるだけ狩るぞ!」

 後はお祭りである。気絶したワニを魔法使い組が風魔法で安全なところまで運搬する。そして剣士組がとどめを刺す。途中 浮いてきたワニ以外の魔物も狩ってウハウハである。いつのまにか、ワニだけでマジックバッグが三ついっぱいになっていた。大収穫だ。ワニは皮だけじゃなくて肉も売れるから最高の収入になるだろう。

 ダンジョン内では魔物はすぐに増えるので、生態系を気にしなくていいのは楽でいいな。

 

 ギルドに戻ると、依頼人さんが待っていて、大変驚かれた。当たり前だ。次も僕たちに頼むと言ってくれて、報酬にも色をつけてくれた。通常依頼三回分の稼ぎになったとみんなで喜んだ。

 

 

 

 依頼後、いくつか魚を持って、サラさん達の知り合いの店に行った。あの湖、実は高級魚が生息していたのである。今日はこれを焼いてもらって食べることにしたのだ。ファミリアたちにも大盤振る舞いだ。

 みんなで乾杯して美味しい料理に舌鼓を打つ。

「いやーレインのおかげで今日は得したわー、なんか悪い気がするな」

「昇級祝いだったはずなのに、何だか私達の方が得しちゃったわね」

 ダレンさんとサラさんが申し訳なさそうにしていた。

 僕はみんなの役に立ててなによりだ。雷魔法が使える人は少ないから、ちょっとずるい気もするが今更だろう。

「便利よね、雷魔法……私も練習しよう」

 魔法使い組は本気で身につけようとしている。今日のあれを見たらそう思うのも仕方ない。


 その時ティアがテーブルの上に乗ってきた。そしてパチパチと小さな静電気のようなものを発生させたのだ。まさかティアが真っ先に覚えるとは、驚きである。

 みんな大喝采でティアを称えた。オフィーリアが抱き上げて撫で回している。スライム漁師になれる日も遠くないだろう。

 

 それにしても今日は良い息抜きになった。誘ってくれたみんなに感謝する。呪い探知の魔法具完成まで頑張ろう。

 

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