第27話 女神様のお願い

 みんなで教会の椅子に座り女神様に祈りを捧げる。

 また僕は動くことが出来なくなった。女神様の声が頭の中に木霊する。

『レインよ。お願いがあります』

 呪いの事ですよね、きっと……

『そうです。禁じられた呪いを研究し、森に呪いを振りまいている不届き者がいます。レインにはシュガーと共にその者を何とかして欲しいのです。手段は問いません』

 やっぱりあれで終わりじゃなくてまだあるんですね。

『はい、他にも仕掛けるつもりのようです』

 犯人の名前とか分かりますか。

『それは制約に反します。教えることはできません』

 女神様にも無理なことがあるんですね。

 呪いに関しては騎士団と魔法師団達が動いていると思いますよ。

『彼らでは呪いの気配を察知することができません。どうしても後手に回ってしまうでしょう』

 なら呪いの気配を察知する魔法具を作るのはどうでしょう?

『それでもかまいません。シュガーの協力があれば不可能では無いでしょう。私は制約により人間に直接手を下すことはできません。よろしく頼みますよ』

 

 女神様との対話が終わると。またみんなが僕の顔を覗き込んでいた。毎度ビックリするからやめて欲しい。

「今日は長かったな」

 アイヴァンが心配そうに言う。僕は会話の内容を説明した。

「やっぱりその事ですよね。呪い探知の魔法具ですか……確かにそれを量産できれば、人海戦術で犯人を追い詰めることも可能でしょう。呪いは使用した本人も蝕むと言いますし……でも呪いの気配がどういうものか分からないのが問題ですよね」

 オフィーリアが悩ましげに考え込んでいる。

「それはシュガーに協力してもらうしかないだろうな……」

 僕がシュガーの方を見ると、シュガーは微妙な顔をしていた。

「レインは呼吸をどうやってしているのか、別の生き物に詳しく説明できるかしら」

 なるほど、シュガーにとっては呪いを感知できるのは当たり前のことすぎて説明が難しいのか。これは安請け合いをしたかもしれない。せめて呪いのサンプルがあればな……父さんに頼んでみるか。

 

 僕はその日のうちに父さんに事情を説明して、前回の呪われた魔物の一部をサンプルとしてもらった。しかし魔法具制作は難航した。呪いの気配だけ感知するというのが思ったよりずっと難しくて、シュガーが協力してくれてもなかなか上手くいかなかったのだ。今回の女神ションは難易度が高すぎる。

 日に日にイライラしてくる僕に、一日気分転換に冒険に行こうとみんなが提案してくれた。

 

 

 

 冒険者ギルドに行くと、久しぶりに氷の剣のメンバーに会った。僕が魔法具制作している間はみんな冒険に行っていたため、彼らの話は聞いていた。でも見るのは初めてだ。彼らはみんなファミリアを召喚していたのだ。サラさんはファイヤーマウス、ハロルドさんはウルフ、ダレンさんはファルコンだった。みんな戦闘が得意な種族で何よりだ。

「レイン!久しぶりね!難しい魔法具作ってたって聞いたけど出来たの?」

 サラさんの言葉に僕は首を横に振った。

「今日は気分転換です」

「そっか、やっぱ篭もりっぱなしは良くないよな。今日は暴れようぜ」

 ハロルドさんが僕の肩を叩いて慰めてくれる。なんだか体の力が抜けた気がする。ここ数日行き詰まってたから、無意識に力が入っていたのかもしれない。気分転換しに来て正解だったな。

 今日は依頼を決める前に会えたので、せっかくだから合同で依頼を受けようということになった。こういうのもたまには楽しい。

 掲示板を見て何がいいか話し合う。近場のダンジョンの二十一階層に居る水ワニの皮の採取依頼がいいだろうということになった。僕達は過去に二十階層までは行ったが、二十一階層は初めてだ。

 氷の剣は最近二十階層前後を拠点に狩りをしているらしいので、案内してもらえることになった。

 

 ダンジョンまでの道中、氷の剣のみんなは僕達のBランク昇級を祝ってくれた。今日の冒険の終わりには食事を奢ってくれると言うので甘えることにする。

「俺達ももうすぐBランクに上がれそうなんだ。シンディーさんがそろそろ上がって欲しいからギルマスに掛け合ってくれるって」

 氷の剣は僕らより一年冒険者歴が長い。確かにそろそろ上がり時だろう。彼らは品行方正だし、何よりファミリアを得てからは強くなった。

「じゃあ合格したらうちの拠点でお祝いしますよ」

 僕が言うと、氷の剣のみんなは大はしゃぎだった。何でもアイヴァンから僕の料理の美味しさを聞いていたらしい。あ、僕が料理担当なのは決定事項なんですね。まあ、仕方ないか。料理を作るのは嫌いじゃないし。僕は冒険者が好きそうなメニューを頭に浮かべて、氷の剣の試験合格を願った。

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