第25話 ファミリア風呂と肉まん

 焼肉パーティーの次の日、午前中は二日酔いで動けなかった。午後になってやっと落ち着いた僕はリビングで何をしようか考えていた。

「今日はファミリア風呂でも作るかな」

 前々から構想を練っていたファミリア風呂の製作に取り掛かろう。そう思って呟いた言葉だった。

「ファミリア風呂とはなんですか!?」

 今回は金になる話では無いのだが、オフィーリアが釣れてしまった。

 言葉から自分に関係あるものだと推測したのだろう、シュガーも早く言いなさいよと頬をペチペチしてくる。

「ただのファミリアのためのお風呂だよ、訓練後に汚れるから庭に作ろうと思って」

 それを聞いてみんな目を輝かせる。特にルークは飛んだり跳ねたり突進してきたりと大騒ぎだった。

「ルーク、風呂好きだから」

 アイヴァンが欠伸をしながら言った。ルークはキラキラした目で僕を見つめながら尻尾を振っている。もうちょっと待ってください。

 

 

 

 作業工程はこんな感じだ。まず土に浴槽の形より少し大きな穴を掘る。そこに石材を敷き詰め隙間を埋め、浴槽を作る。そして僕の作ったお湯(適温)のでる魔法具を置く。これだけである。

 みんなに説明すると、早速ルークが地面に穴を掘り出した。そこに負けじとミミが加わる。うさぎは穴掘りが大得意なのだ。僕たちもスコップで掘っていくが、ルークが穴をドンドン広げてゆく。広すぎですルークさん。

 ルークが駄目?とでも言いたげにこちらを見る。しょんぼりしたシッポと耳に罪悪感が湧き起こる。……ダメじゃないです。こうなったら広めに作ろう。

 ルークの大きさに合わせた浴槽部分を作ったら、ミミ達用に浅瀬も作る。出来上がりより少し大きめに作ったら次は石材だ。

 大量の石材を魔法で形を整えながら、敷き詰めていく。みんなでやったらあっという間だった。後は魔法具を入れて完成である。

 途中お風呂に興味が無いキャロットが眠ってしまったり、石が重すぎて運べなかったティアが潰されたりと色々あったが、大満足の出来上がりだ。

 

 僕は早速魔法具のスイッチを入れると、浴槽においた。ルークが浴槽に飛び込む。早い早い、まだお湯溜まってないから。

 僕は浴槽の深い所側の地面に、敷物を敷くと靴を脱いで裾をまくった。

 

「足だけでも浸かろうよ」

 これが僕のやりたかったこと、足湯である。寒い日には最高だよね。みんな賛同してくれたので、僕らはみんなで足湯に浸かった。

 お湯が溜まったのでシュガーもミミもティアも浅瀬の方に浸かる。キャロットは少し嫌がったのだが、気持ちよさそうにしているルークを見て、勢いよく水に飛び込んだ。勢いで水面が揺れてミミが溺れそうになっていたが、ティアがミミの体を流されないように固定して助けていた。

 キャロットは一度浸かるとなんでもないと思ったのか、気持ちよさそうだった。

 みんな楽しそうでなによりである。

 

「みんな、肉まん食べない?」

 僕は最高のタイミングで蒸しあがった肉まんをみんなに配る。肉まんもこの世界にまだなかったので、僕の創作料理扱いである。みんな不思議そうにしていた。

 食べてみたら美味しかったらしくみんな夢中で肉まんを頬張っている。シュガーも湯船に浸かりながら魔法を使ってちぎって食べていた。器用だな。

「肉まんも最高だし湯船も最高!広く作ってよかったな、ルーク!」

 ルークは得意げに鳴いた。

 

 

 

 足湯に浸かってまったりしていると、アイヴァンが言った。

「そういえば、レイン。シュガーに名前をつけた時、綿あめみたいだからシュガーって言ってただろう。ずっと気になってたんだけど綿あめって何だ?」

 この幼なじみはまたどうでもいい事を覚えているな。オフィーリアが新たなお金の匂いを嗅ぎつけてこちらを見てるじゃないか。

「あー明日見せるよ。可愛いだけであんまり美味しい物じゃないけど」

 綿あめは言うとただのふわふわの砂糖の塊だからな。美味しいとは違うだろう。僕は明日までに綿あめ製造用の魔法具を開発することになってしまった。飴を温めて高速回転させるだけだから簡単だろう。

「食べ物なのか?シュガー様に似てる食べ物なんて不思議だな」

 ルシアが首を傾げている。まあ、そうなるよな。綿雲みたいなお菓子だよというと、みんなますます困惑していた。


 僕はその後ザラメに近い砂糖と食紅、製造機の材料を買いに行くと、綿あめ製造機を作り始めた。

 作業スペースが必要だったのでリビングで作っていると、大きな製造機にみんな不思議そうにしていた。どうせなら専門店のような大きな綿あめを作りたかったので業務用サイズだ。制作は夜中までかかってしまった。明日みんなの驚く顔が楽しみだった。

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