第20話 Bランク昇級試験
冒険を終えてギルドに戻ると、ギルドマスターに呼び出された。
「Bランク昇級試験ですか?」
僕らは訝しんだ。少し早すぎるからだ。
「国から横槍が入ったんだ、精霊の召喚者をいつまでも下のランクに置いておくなと」
なるほど、Cランクは試験が必要ないのでその分冒険者の責任も軽い。国からの依頼など大きな依頼は受けられない。だがBランクになると試験を経てしかなることが出来ないため、重要な依頼を受けることも可能だとギルドでは決まっている。
国は何か僕に依頼したいのか。まあ、どうでもいい依頼なら拒否するけど。冒険者ギルドは全国にある国際組織だから国もあまり強くは出られないはずだ。
「我々としてもいざと言う時のために精霊の契約者にはそれなりの地位にいて欲しい。両者の思惑が合致した形だな」
筋骨隆々なギルドマスターは自身の筋肉の具合を確かめながら言う。思惑とか言うな。いや、分かりやすくていいけど。
僕はみんなの顔を見回した。みんな苦笑しながらも異論は無さそうだ。そうして僕達は早すぎるBランク昇級試験を受けることになったのだ。
ギルドの昇級試験は、面談、筆記、実践で行われる。Bランクだから面談と筆記は簡単なものだ。
その代わり、実践の試験は厳しい。ギルドが指定する依頼を、ギルドが指定した試験官の監視の元で達成しなければならないんだ。
戦闘力だけでは無い色々なものが問われる試験だ。因みに上にあがるのに一番大事なものは戦闘力と素行だと言われている。日頃の行いで一生Cランクで終わる人もいるくらいだ。
面談と筆記は何とか全員合格することが出来た。後は実践のみである。
僕らの試験官はなんとSランクパーティーの『グローリア』が務めることになった。なんでもグローリアの面々は僕らに興味があったらしい。精霊の契約者という理由で興味を持たれるのは少し嫌だなと思う僕だった。
僕らはギルドの応接室で、グローリアの面々を待っていた。これから顔合わせと、明日からの実践試験についての詳しい説明を聞く事になっている。
先程から、英雄マニアのふたりはソワソワしている。憧れのグローリアと会えるために緊張しているんだろう。
ファミリアたちはシュガー以外はみんなキリッとした顔をして、大人しくお座りしている。気合十分と言った感じだ。
シュガーは相変わらずのいつも通りである。
やがてノックとともに、ギルマスが入ってきた。その後ろに三人の男性がついてきている。あれ?グローリアは六人じゃなかったっけ?
「待たせたな、コイツらが今回の試験の試験官だ」
「グローリア、リーダーのローガンです。こっちのデカイのはルーカス、地味なのがジミーね。よろしく『インフィニティ』のみなさん」
派手な金髪の男性が、そういって礼をした。僕たちも立ち上がって挨拶する。それにしても酷い紹介の仕方である。ジミーさんが可哀想だ。
「あの、他の三人は今回はいらっしゃらないんですか?」
「あいつらはちょっと用事があってね、悪いけど今回は僕らだけなんだ」
アイヴァンは少し残念そうだ。ルシアは三人と会えただけでも嬉しいのか顔がにやけている。
「では早速課題について説明する。課題は『東の森の調査』だ。今東の森に起こっている異変を調査して、場合によっては解決して欲しい」
ギルマスが真剣な顔で言う。僕は具体的にどのような異変が起こっているのか聞いた。
「魔物の分布が短期間で大きく変わったんだ。それもただの縄張り争いでは考えられない変化の仕方でな。それの原因を究明して欲しい」
「それは通常Bランクの試験に使われる依頼ではありませんよね?もっと上のランクの仕事のはずです」
僕はわざと怒ったような顔でいった。
「……悪かった。正直原因が分からなくてお手上げなんだ。精霊の力を借りたい」
最初からそう言えばいいのだ。こんな騙し討ちのような真似をされると気分が悪い。僕はもう今日はずっとギルマスの前では不機嫌な顔を作っていようと思う。
「ではこれは試験であり、ギルドからの正式な指名依頼という事でよろしいですね?」
タダ働きはしないと言う意思表示だ。ただの調査依頼と指名依頼では報酬が雲泥の差なのだから、当然の権利だ。
「本当に悪かった。勿論そうさせてもらう」
ギルマスは項垂れていた。大人は汚い。
「レインくんはしっかり者だね。君たちがBランクに相応しいか、こちらはしっかり審査させてもらうよ。とりあえず今のやり取りで加点十ね!」
ローガンさんがおどけて言った。掴みどころのない人だな、この人。
僕達はギルマスから資料を貰い、明日のことについて話し合った。その様子をグローリアの人達は真剣に見ていた。もう試験は始まっているんだ。
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