第19話 ファミリア達の装備
翌日僕たちはアリシア商会にいた。ルシアとアイヴァンが、ファミリア用の防具が欲しいと言い出したためだ。
大型のファミリアには主人と一緒に戦う者も多いから、商会には一通りの種類がそろっていた。
僕もシュガーに何か買ってやりたいが、マグカップサイズのシュガーに合う防具なんてない。ミミやティアも同様だ。ティアに至ってはリボンですら付けられないんだから。
ウィレミナはそれでもミミのために何か探そうとしていた。ミミは最近毎日クタクタになるまで魔法の練習を頑張っているようで、何か買ってあげたいのだそうだ。
ミミは本当に努力家だ。師匠であるシュガーも鼻が高いだろう。
「人間だと、魔法石のアクセサリーとかなんだけどな」
「あら、いいじゃない!魔法石があれば種族の固有魔法以外も使えるようになるかもしれないわよ!」
僕の何気ない言葉にシュガーが爆弾を投下した。全員その場で固まる。僕はまたファミリア界の常識を破壊するようなことを言ってしまったのかもしれない。
「え?キャロット、氷以外の魔法使えるようになるのか!?」
ルシアに問われたキャロットがニャーンと困惑した様子で鳴いて首をかしげている。そりゃあファミリアは普段魔法石に触れることなんてないのだ。分からなくて当然である。
ミミはキラキラした目でウィレミナを見つめている。風以外の魔法を使えるようになりたいのだろう。
「とりあえず、この後拠点で検証してみるってことでいいかな……?先に買い物をしてしまおう」
みんな異論は無いようだった。
ルシアとアイヴァンはファミリアのための防具を選ぶと、それぞれのサイズに合わせて細かい調整をしてやっている。ふたりとも嬉しそうだ。
さて、ところ変わって拠点である。
僕は部屋からいくつかの魔法石を持ってくると、並んだファミリアたちの前に一つずつ置いた。
「さてこれから検証を始めます」
見ている四人から何故か拍手が巻き起こる。僕は自分の前に魔法石の指輪をかざした。
「これから僕が色々な属性の簡単な魔法を使ってみるから、真似してみてください!いいね?」
ファミリアたちは気合い充分である。僕はまず、指先から滴るような水を出してみた。するとシュガーが魔法石に前足を置いて、同じようにして見せた。シュガー以外はみんなそれぞれ苦戦しているようだったが、やがてティアとキャロットが水を出すことに成功した。
オーディエンスは大歓声である。
次は炎、これはシュガー以外に成功者はいなかった。
そして次は土、土魔法はミミがかなり得意な様子だった。
そして風はルークがなんとか使うことが出来た。
もう皆大興奮だ。アイヴァンもルシアもウィレミナも魔法石の首輪を買ってあげるとファミリアに約束していた。僕も全ての魔法を使えたシュガーに首輪を買ってあげようかと言ったら、なくても使えるから要らないと言われてしまった。どうやら精霊は全ての魔法を自由に使えるらしい。
オフィーリアとティアだけは困っていた。スライムのどこに魔法石を付けられるのか分からなかったからである。何せ綺麗な水饅頭型だ。
僕たちは興奮冷めやらぬままアリシア商会に戻って、魔法石を探した。オフィーリアがサイズが分かれば特注もできると言っため、みんな特注で作ることになった。値段を見るに、これまでの冒険の稼ぎがほとんど飛んだ。また冒険に行かなくてはならないだろう。
余談だが後日、オフィーリアがティアに魔法石をプレゼントした。それは綺麗なハート型に加工された赤い魔法石で、それをティアは、体の中に収納していた。ゼリーの中に違う色のゼリーが入っているみたいで可愛かった。ナイスアイディアだ。
その日の夜、初ダンジョンの感想を聞きに来てくれた父さんに、全てを話した。父さんは最初は相槌をうちながら聞いてくれていたんだけど、次第に無言になっていく。
「お前はまたなんということを……私はお前に感心すればいいのか心配すればいいのか分からなくなってきたぞ」
「両方して欲しいです!」
僕が元気いっぱいに言うと、父さんは僕の頭をぐりぐりと撫でた。
「しかしファミリアに魔法石か……考えたこともなかったが、確かに魔石と魔法石の違いは魔物の体内にあるか自然界にあるかの違いだけだと言っている研究者がいたな」
実は魔石でも魔法は使うことが出来る。しかし、魔石ではひとつの属性の魔法しか使えないのである。魔物は自分の体内にある魔石を介して魔法を使う、それでは一属性しか使えなくてあたりまえだ。
「お前を研究者に会わせたら、喜ぶだろうな」
面倒なのでごめん被りたい。なんだかモルモットにされそうで嫌である。
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