第17話 初ダンジョン

 僕らはまず冒険者ギルドに行ってダンジョンに挑む許可をとった。挑むのは一番王都に近い初心者向けのダンジョンだ。

 シンディーさんにくれぐれも気をつけて、ほかの冒険者とトラブルにならないようにと言われた。特に上層ではランクの低い冒険者が多いので、トラブルが多いそうだ。特に僕らは若いから絡まれるかもしれないと心配してくれていた。

 

 どのダンジョンでも同じだけど、ダンジョンには十階層ごとにワープスポットがある。上階もしくは一度行ったことのある階に飛ぶことが出来るんだ。そして魔物が出ないセーフゾーンが五階層毎にある。多くはそこで宿泊しながら下層まで降りるので、宿泊中は絡まれないように気をつけないと。

 


 

 昼前にダンジョンの入口にたどり着いた。そこではギルド職員と思われる人達が受付をしていて、僕たちが許可証を見せると中へ通してくれた。

 ダンジョンに入ると、そこは草原の道のようだった。背の高い生垣で区切られた、まるで迷路のような草原だった。話によると、ここには羽うさぎや子ネズミといった弱いモンスターが居るらしい。僕たちには少々つまらない敵だ。なるべく魔物はスルーしながら下層に降りることにした。

 降りる途中で宝箱を見つけたけど、中に入っていたのは回復薬になる薬草だった。ショボイ。

 途中避けられなかった敵はみんなファミリアが倒してくれた。特にミミが率先して倒してくれた。ミミのトレーニングには丁度いい階層かもしれない。

 

 二階層目も同じような感じだった。若干敵の数が増えたかなといったくらいだ。

 三階層目は景色はかわらず、出現する魔物は少し強くなった。ここから僕らも戦闘に参加し始める。今狩っている牙猪はそれなりの値段で売れる。それに美味しい。僕たちは牙猪を中心に狩りながら、さらに下層を目指した。

 四階層目も同じような感じだった。

 

 さて、続く五階層目はセーフゾーンだ。魔物が出ないため、宿泊することが出来る。僕たちは今日はもう休むことにした。明日は早起きして十階層まで潜りたい。

 セーフゾーンには他にも何組かの冒険者の姿があった。上層だからか年若い人が多い。あまり近づくと嫌がる人もいるので、挨拶は軽く礼をするにとどめた。

 

 

 

 さて、食事を取りながら明日の作戦タイムである。今日のメニューはレトルトのナポリタンと粉末スープだ。コーンスープのいい匂いが辺りに充満する。

「こんにちは、それって何処で買えるのかしら?」

 ふと、隣りにテントを張っていた冒険者達が話しかけてきた。美味しそうな匂いに我慢できなくなったらしい。

 彼女らは『氷の剣』という四人組のCランク冒険者らしく、よくダンジョンに潜っているんだそうだ。年齢はおそらく15歳くらいだろう。

「これはもうすぐアリシア商会で売り出される商品の試作なんです。お湯を入れるだけで食べられるスープに、茹でるだけで食べられる料理なんですよ。既存の保存食より少し高くはなりますが、味には自信があります」

 流石商機を逃さないオフィーリアがプレゼンテーションを始めた。僕もそれに便乗する。

「多めに持ってきているので、スープだけでも試飲しませんか?」

 そう言うとみんな喜んだ。彼らのカップに粉末スープをいれて、お湯を注ぐ。みんなとても驚いていた。

「本当にお湯を注ぐだけなのね!味も凄く美味しい!」

 

 特にリーダーのサラさんはとても気に入ったようで、オフィーリアにいつ頃売り出されるのか聞いている。他のパーティーもこちらの様子が気になるのかちらちらこちらを見ていたので、僕は試飲用のスープを多めに作って振舞った。幸いこの階層にいた冒険者に素行不良の者は居なかったようで、和やかな時間をすごせた。

 僕たちはそれで打ち解けて、ダンジョンの先輩に色々教えてもらうことができた。冒険者同士の交流も悪くないな。

 

 

 

 次の日、朝早くから僕たちは動き出した。話を聞くに、今日中に十階層に辿りつけるか分からなかったからだ。

 六階層に降りると、今度は壁が石で出来ていた。この階層には狼種や猪種が多く出るらしい。

 迷路の鉄則で片手を壁に付きながら探索していると、広い空間に出た。そこには十頭ほどの狼の群れがいて、僕たちに一斉に襲いかかってきた。オフィーリアがクロスボウを放ち、後方のオオカミの足止めをすると、前衛部隊が前の狼に切りかかる。固まっているところにはウィレミナが大きな火の玉を発生させて殲滅していた。

 勝てないと踏んだのか残りの狼たちは逃げてゆく。狼は毛皮くらいしか売れないので、深追いはしない。僕たちが狙うのは美味しい猪の方だ。

 

 そんな調子で六階層、七階層を踏破すると。景色が大きく変化した。八階層は広大な森らしい。一応獣道らしき道はあるが、それだけだ。先輩の話ではここからはこれまでに出た魔物が全て出現するらしい。

 僕たちは魔物の討伐より、十階層にたどり着くことを優先することにした。十階層からなら、ワープで地上に戻ることができるし、次も十階層から始められる。今日中に行ってしまいたい。

 

 戦闘をなるべく避けて、今日中に十階層にたどり着くことが出来た。二日で十階層までたどり着くのは凄いことらしい。自動マッピング魔法具様様である。まだ時間があるので、九階層に戻って猪を狩ってから帰ることにした。

 

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