第15話 ライスパーティー
それから一週間ほど経った。みんな屋敷に引っ越してきて、早くも共同生活を始めている。全員実家が近いので頻繁に帰っているけど、みんなで暮らすのもなかなか楽しい。僕はアイヴァンのおかげで主に調理担当をする事になった。掃除はアイヴァンが主にやってくれているのでいいんだけど、アイヴァンは僕の料理が好きすぎる気がする。
僕は転生当初は日本の料理に飢えていて、再現料理を沢山作っていた。その結果、アイヴァンは女性だったら求婚していたと冗談を言うくらい、僕の作る日本の料理のファンになっていたのだ。
その日はオフィーリアが大量の米を仕入れてくれたので、みんなそれが食べたいと言い出した。神託により賜った食材だ、みんなが興味を持つのは当たり前である。
ちなみに神託はたまに授かることがあるとみんなが知っている。でも授かるのはほとんど神官であり、ましてや食材の場所を教えてくれるなどほとんど無い。大体は災害予報なのである。
でも女神様は僕に米の場所を教えてくれた。これはもう米を食えということである。
僕はオフィーリアに頼んでいた米を受け取る。小麦と同じようにちゃんと精米してくれたようだ。やった、間違いなく米だ!
「こんな嬉しそうなレインは初めて見るな」
アイヴァンに驚かれているが知ったことか、米が食べられるのだ!
僕は早速米をといで水につけた。給水中に他のものを作る。今日作るのは牛丼モドキと唐揚げ丼とチャーハンのつもりだ。僕の食べたいものトップスリーである。
みんな調理工程を不思議そうに見ている。唐揚げはアイヴァンも大好物なので途中で気づいたようで、嬉しそうだ。
吸水が終わるととうとう炊く作業だ、上手くいくか心配だ。僕はしっかりと水を測って鍋で炊き始める。
ファミリアたちは退屈なのだろう、みんなこちらを気にすることも無く寛いでいる。
炊いている間は絶対に蓋を開けない。その間に唐揚げを揚げて、牛丼の具を作る。いい匂いが充満しだした。
そこでファミリアたちも起き出してそわそわし始める。肉食組には一つくらいなら唐揚げをあげてもいいだろう。
ようやくご飯が炊き上がった、成功だ!ありがとう女神様!
僕は最初にチャーハンを作った。卵と具と一緒に高火力で炒めるとパラパラのチャーハンの出来上がりだ。
そして牛丼と唐揚げ丼も作る。牛丼は汁だくで、唐揚げ丼は千切りキャベツとマヨネーズをたっぷりと載せる。
カロリー?何それ美味しいの?である。
みんなが全種類食べられるように小さめに作ると、いざ実食である。
女神様に祈りを捧げてから、みんな恐る恐る食べ始める。すると、みんなの顔が輝いた。
「美味しい!流石神託の食材です!」
苦労して仕入れてくれたオフィーリアがため息を零しながら感動している。
「本体はほとんど味しないけど、具と一緒に食べると最高だな!」
ルシアも嬉しそうだ。アイヴァンは無言でかき込んでいる。よほど気に入ったのだろう。
「食べた事の無い味だけど美味しい!」
ウィレミナはチャーハンが気に入ったようで沢山食べている。
そして僕は久々の米の味に泣きそうになっていた。泣かないように慌てて牛丼をかき込む。最高の味だ。ありがとう女神様。
「この穀物は北の貧しい地域で育つんです。そこは食べられるものがほとんど育たず、餓えるものが多い土地です。この穀物は沢山生えていますから、食べられると分かれば多くの人が救われるでしょう。流石女神様ですね」
オフィーリアの言葉を聞いてまさかと思った。僕は米が食べたかっただけだけど、女神様的には人助けだったんだな。
「この米の食べ方を現地の方に教えてもいいでしょうか?勿論今後もレインのためにこれを仕入れるから」
オフィーリアの言葉に快諾する。女神様のおかげなのだから、是非ともそうしてほしい。
それから僕たちはお腹がいっぱいになるまで料理を食べた。
アイヴァンなんて唐揚げ丼が気に入りすぎて三回もおかわりしていた。ルシアも唐揚げ丼を気に入ったらしく、最後の唐揚げを取り合っていた。微笑ましい事だ。
肉食組に唐揚げを一個だけあげたのだけど、もっと欲しいと催促されて大変だった。体に悪いからごめんなと言ったら、しょんぼりされてしまってこちらまで悲しくなった。今度油をほとんど使わないヘルシー唐揚げを作ってあげよう。
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