第14話 女神様の報酬と拠点

 それからおよそ三日間。僕達は精霊の領域を拠点に、湖の様子を見ながら狩りを続けた。このパーティーは全員お金持ちの子供なので、みんな容量の大きいマジックバッグを持っている。三日間でバッグの中はかなりいっぱいになった。

 湖の浄化も終わったし蛙も見かけないので、僕たちは女神ッションクリアという事で帰ることになった。

 帰り際、精霊の領域の花々が少ししんなりしていた。寂しいんだろう。シュガーがまた遊びに来ると慰めていた。

 

 

 

 僕らは街に戻るとその足で女神様に祈りにゆく。祈るとまた女神様の声が聞こえた。

『よく頑張ってくれましたレイン、約束通り米のありかを教えましょう。米は西の隣国の北側にあります。この世界では米はまだ家畜の餌です。安価で手に入れることができるでしょう。そしてレイン、これからは食事を食べる前に私に祈りを捧げるのです。そうすることで私もレインの食べている食べ物の味が分かるようになります』

 ……女神様、食べたかったんですか。わかりました。今度からそうすることにします。

『感謝します。また定期的に教会に祈りに来てくださいね』

 女神様との対話が終わって目を開けると、また皆に見られていた。

「女神様は何と?」

 オフィーリアの問いに、僕は女神様に報酬としていい物を教わったと返した。そして協力を要請する。米の仕入れをお願いしたかったんだ。オフィーリアは少し考えると、迅速に仕入れてみせると約束してくれた。

 

 僕らは冒険者ギルドに行くと狩った魔物の素材を売り払った。軽く本来Cランク冒険者では有り得ない金額を稼ぐことが出来た。

 シンディーさんは苦笑している。

「貴方達、トラブルになるといけないから絶対に収入を他のCランクに教えちゃダメよ」

 流石にそんなことはしない。僕達はみんな自分達が恵まれた環境に居ることを知っている。

 

 その後時間があったので、僕は皆にある提案をする事にした。

「みんな、拠点を持つ気ある?」

 皆はポカンとしていた。僕は王様に貰った屋敷の鍵を出すと事情を説明した。

 色々考えてパーティーの拠点にするのが良いかと思ったんだ。

「屋敷なんて貰ってたのか。拠点、いいんじゃないか?今後荷物も増えるだろうし」

 アイヴァンが早速見に行こうと僕を急かす。皆ワクワクしているようだった。

 

 屋敷は中流層の家が立ち並ぶ区画にあった。治安は良さそうだ。冒険者ギルドからも近い。そして屋敷は小さめだけど庭がかなり広かった。屋敷選びには父さんが関わってくれていたみたいだから、僕の好みの屋敷にしてくれたんだろう。

「いい家ですね、本当に拠点にしてしまっていいんですか?」

 オフィーリアが予め揃えられていた家具を確かめながら聞いてくる。

「いいよ、いずれSランクになるんだから必要でしょ?」

 僕らはもう成人したんだ。何時までも親の世話になってる訳にはいかないだろうし、ここに引っ越して皆で冒険した方が良いだろう。

 冒険者は高ランクになればなるほどパーティーとしての拠点を作って活動している人が増える。緊急依頼なんかが入ることもあるから、拠点を作ってパーティーで暮らしているんだ。

 この屋敷なら僕らで暮らすには丁度いい大きさだ。各自の実家にも近いし親も安心だろう。

 

 僕はお風呂場だけ大きく改装したいなと思いながら、部屋を見て回った。

 それぞれの個室を決めると、引越しの算段を話し合う。女性陣はパーティーメンバーとはいえ男性と暮らすことに、親は何も言わないだろうかと心配だった。

 みんな特に問題なさそうな顔をしているけど、ちゃんと許可をとるように念押ししておく。特にウィレミナは侯爵令嬢だ。普通は家が許さないだろう。

「私は昔魔力暴走で屋敷を半壊させてるから、貴族にまともな嫁ぎ先がないの。だから家を出るつもりで居たから大丈夫」

 ウィレミナの言葉に沈黙してしまう。だから侯爵令嬢が冒険者なんてやってるのか。ウィレミナの魔力量で暴走を起こしたなら被害は甚大だっただろう。貴族界隈で噂になって忌避させても仕方ないのかもしれない。

「私、令嬢より冒険者をやっている方が楽しいの。だからそんな顔しないで」

 僕はどんな顔をしていただろうか。ウィレミナはころころと笑っている。

 結局各自の親の許可をとってから順次引っ越して来ようと言う話に落ち着いた。

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