第7話 実力はいかに

 翌日冒険者ギルドで新しくCランクの冒険者カードを受け取った。その足で待っていてくれた三人と合流する。三人は一足先にCランクに上がっていたらしい。同い年なのに早いな。

 今日は五人で火トカゲの討伐だ。火トカゲは強くないが、内蔵が薬になるので傷だらけには出来ない。一気に首を落とさないといけない魔物だ。実力を見るには丁度いいだろう。

 みんなで和気あいあいと近くの森に向かう。

 森に入ってからは事前に覚えさせていた火トカゲの匂いをルークに追ってもらう。

 あっという間に火トカゲを見つけてくれた。ルークはみんなに褒められて嬉しそうに尻尾を振っている。

「さあ、誰から行く?」

 

 僕が言うとアイヴァンが手を挙げた。一匹で日光浴しているらしい火トカゲの背後から、アイヴァンは高速で駆け寄った。そして一撃で首を両断する。

 ルシア達は口をあんぐり開けていた。

「なんだ今の!?」

 ルシアが戻ってきたアイヴァンに掴みかかる。

「身体強化魔法だ」

「いや、それにしても早すぎだろう!何をしたらそうなるんだ!」

 アイヴァンが遠い目をして言った。

「レインに鍛えられたんだ……」

 一斉にみんなの視線が僕に向く。ちょっと怖い。

 僕の夢にアイヴァンを巻き込もうと決めた時、僕はアイヴァンを徹底的に鍛え上げた。僕は前世の記憶があるせいか、魔法に関しては他者よりはるかに抜きん出ていた。アイヴァンは魔力量が少ないので燃費のいい身体強化魔法を重点的に鍛えたのだ。

 その結果アイヴァンは身体強化魔法のエキスパートになった。

 

「私も鍛えてくれないか!」

 ルシアが必死で言い募る。

「やめとけ、こいつは鬼畜だぞ。習うなら俺にしておけ」

 アイヴァンがルシアを止める。酷い言いようだ。ちょっと指導に熱が入りすぎただけだろうに。

 アイヴァンが虚無の表情で僕を見ている。うん、ごめん。反省してるよ。してるから真顔で見るのはやめて欲しい。

 

「じゃあ次はルシアな」

 騒ぎも落ち着いて、改めて仕切り直す。ルシアは気づかれないように火トカゲに近づくと駆け出した。火トカゲが口から火を吐き出すと引き付けて避ける。そして鮮やかな剣さばきで首を落とした。

 驚いた。思っていたよりずっと強い。何より剣の技巧が優れている。流石英雄の娘だ。アイヴァンも驚いている。

「速さではアイヴァンには及ばないが、剣だけなら自信はあるぞ」

 そう言ってルシアは不敵に笑った。

 

 さて次の火トカゲを探した後、僕はオフィーリアに一人で倒せるか聞いた。オフィーリアの武器はクロスボウなんだ。一応腰にナイフも下げているが、火トカゲと戦うには心許ないように思う。

「大丈夫です、このクロスボウは特別だから」

 そう言ってオフィーリアはクロスボウを構えた。放たれた矢が火トカゲの目に命中すると、なんと火トカゲの顔がみるみるうちに凍りついた。動きが鈍くなった火トカゲに、オフィーリアは悠々と近づくと腰のナイフで首を落とした。

 まさかの高級品、属性付与魔法具のクロスボウである。オフィーリアはやはり良いとこのお嬢さんらしい。

 矢の命中精度も素晴らしかった。しかもナイフ捌きを見るに、通常の戦闘もこなせるらしい。意外と侮れない。

「私は基本的に後衛ですけど、それなりに戦えます」

 

 さあ最後はウィレミナだ。ウィレミナは完全な魔法使いらしい。

 武術の心得は護身術程度だそうだ。

 ウィレミナは魔法で風の刃を作り出すと、火トカゲの首を落とした。

 こんな大きな魔法を戦闘の度に使っていたらすぐに魔力が枯渇するんじゃないかと思って見ると、ウィレミナは涼しい顔をしていた。

「私は魔力量なら誰にも負けない。これくらいの魔法なら何度も撃てるよ」

 なるほど、シンディーさんがこの三人は今年の新人の中で二番目に強いと言っていたけど、本当だったようだ。ちなみに一番目は僕達らしい。

 

「さて、最後はレインだな」

 アイヴァンが笑いをこらえた顔で言う。何を考えてるんだか。

 僕は火トカゲに向かって、魔法石のついた指輪を付けた人差し指を向けた。するとパンッと高い音と共に火トカゲの体が力を失った。

 これは僕が前世の拳銃の仕組みを魔法で再現したものである。名づけて銃魔法。

 振り返るとみんな口を開けて僕を見ていた。アイヴァンだけは腹を抱えて笑っている。

「あんたって規格外よね」

 シュガーが呆れた顔で言った。精霊にも規格外と呼ばれる僕は一体何なんだろう。

 

 みんな我に返ると僕に詰め寄った。

「なんですか、この魔法!?」

「一瞬だったぞ、何でこんなに早いんだ!?」

 ウィレミナとルシアが僕に詰め寄ってくる。

 オフィーリアはキラキラと目を輝かせて言った。

「この魔法紋、うちの商会に売る気は無いですか!?」

 

 魔法は想像力だ。魔法石に魔力を込めて起こり得る結果を想像して使う。しかしそれ故にイメージが完璧でなければ魔法は使えない。僕は前世の科学知識を持っているからか、魔法に関しては天才だった。

 魔法を使うと、魔法石に紋が現れる。その魔法紋をコピーすれば誰でもそれと同じ魔法が使えるようになるのだ。だから魔法使いは新たな魔法を開発すると特許申請したり売ったりする。

 

「ごめんこの魔法は人も簡単に殺せるから売りたくないんだ」

 僕はオフィーリアに言った。

「あ……そうですよね、すみません。ちょっと興奮してしまって」

 オフィーリアは正気に戻ったようで俯いてしまった。

 しかしオフィーリアはうちの商会と言った。やっぱり裕福な家のお嬢様だったらしい。

 

 これで全員の実力が知れた。僕達は今後どうするか話し合った。

「私達としてはこのままパーティーを組みたい。実力はは二人に劣るかもしれないが、このメンバーならSランクを目指せる気がするんだ」

 ルシアの言葉に二人は頷いた。僕達もこのメンバーならやれると思った。

 こうして僕達はパーティーを組むことになったのである。

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