第3話「忘却の彼方へ…」

ーー白。どこまでも白。

どちらが上で下で。

どちらが右で左で。

わからない、白。

ーーあ。

これは、左手⁇

じゃあ、こっちが右確定。 

左はこっちか。

ーー白。

時間経過がわからない白。

それは、闇に包まれてるのに等しい。 

 

「 ……ねぇ。 ……ねぇ。」

「 ……聴いてる? …聴いて…。」

霞の中から現れたそれと眼が合う。

「聴きたい事があるでしょ〜?」 

 ……⁈

ーー無理矢理、眼を合わせて来たそれ。

「あ!このままじゃ話しにくいよね!」

ぱちんっ

ーーそれが指鳴らした途端、身体が半回転。

「これで話しやすくなったよね!

でも、残念だね。モアは声が出ない。」


「でも、驚いちゃった!きみ達が行き来できるのは知ってたけど、モアがここに来ちゃうなんて。

ここは、2〜3次元の狭間の世界。

きみ達が、良く行き来してる通り道の…裏の路地??って言えばわかるかな?

クフフフ、クフフフ。

あの子は、元気にして聴いているよ!

きみの存在してたはずの世界で、きみが与えるはずだった喜びも悲しみも存在してない。

あの世界でモアは過去も未来も存在してない。

モアがいなくなっても…必要なかったんだ。

この世界ではどうかな?…楽しみにしているよ…。」

ーーあの子?

ちくっ。

…。

''ッ。

粘着質な笑顔を向けられる。

気持ちが悪い。


ーーこいつ似ている。

何かに似ている。

でも、霞がかかってわからない…。


ーーあぁ''雨。

大雨。

人を小ばかにして…拍手喝采の様なその音は、当分鳴り止みそうにない。

あぁ最悪…。


「おう。モア!」

ーーこいつは…どんな時でもおめでたい奴。

「ソノ顔は、プリィだな?!」

 あぁ。

「プリィの何がそんなに嫌なんだ?」

ーーまず、濡れる。

思ってもない仕事先で、ずぶ濡れになるほど気分の悪いものはない。

ーーそして、音。

耳障りなあの音が意識のある間、連いて纏わりつく。

ーーあの、空気。

まるで、蜘蛛の巣の様な空気が纏わり付いてくる…鬱陶しい。

 全部。

「ォイ…どんだけ嫌いなんだよ…。」

ーー今日、仕事行くのやめよう…。

「…行けよ?…仕事。」

ーー絶対行かない。

 嫌。

「えぇぇ、我が儘言うなよぉ…。」

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