第17話 冒険者ギルド

 お母さん達と別れた僕は、メルヴィンと一緒に冒険者ギルドへ向かう。

 冒険者とは有り体に言うと何でも屋だ。ギルドに登録して、依頼をこなすか、もしくは狩ったり採取したりした物を売っている人のことだ。小遣い稼ぎから大金を稼いでいる人まで幅広くいる。

 銅級、銀級、金級、プラチナ級の四クラスあって、指定の条件をクリアすると昇級できる仕組みになっている。最初は皆銅級からのスタートだ。

 

「ソロだと危なくて討伐依頼は受けられないからな。採取系の依頼より討伐の方がやっぱり稼げるからさ、仲間が欲しかったんだ」

 メルヴィンが扉を開けながら言う。

 たどり着いた冒険者ギルドは立派な建物だった。もっと荒れた想像をしていたから綺麗で驚いた。

 受付のお姉さんにメルヴィンが話しかける。

「コイツの冒険者登録したいんですけど」

 お姉さんは前にテイマーギルドでしたのと同じような水晶を取り出すと、血を一滴垂らすように言う。登録方法は全く同じらしい。

 銅級のカードを貰ったので、テイマーカードと一緒に首にかける。

 

「え?これだけ?」

 僕があまりの呆気なさに驚いていると、受付のお姉さんとメルヴィンが笑った。

「簡単だよな、俺も最初拍子抜けしたよ」

「みなさん大体驚くんですよ」

 僕はおかしくて笑ってしまった。

 

 

 

 メルヴィンに案内されて依頼掲示板を見に行く。

 薬草採取から魔物討伐まで色々な依頼があった。迷子の猫探しなんかもある。

『ドラゴンは無いのー?』

『薬草採取はいつもやってるよね』

 アオとシロの言葉に笑ってしまう。ドラゴンは流石に強すぎるし、僕がやっているのは薬草栽培だ。でもこうして見ると僕の栽培している薬草も意外と高く売れるんだなと思った。回復薬づくりで余ったら売るのもいいかもしれない。

『ど~らごん、ど~らごん!た~いじするの~!』

 アオは上機嫌で歌っている。メルヴィンは不思議そうにアオを見た。

「アオだっけ?こいつさっきからコポコポ鳴ってるけど大丈夫か?」

 アオの声は僕以外には水音に聞こえるらしい。歌ってるんだよと言ったら驚愕されてしまった。

「スライムって歌うんだな」

 素直な感想に可笑しくなってしまって僕はまた笑った。

 

「せっかくだから入学式までたまに二人で依頼受けないか?討伐系は人数揃ってからになるけど、採取系なら二人でも問題ないからさ」

「うん、楽しみだな」

 

 メルヴィンが僕の頭を撫でる。

 僕は森の中を歩くのは得意だ。何せ森に住んでたんだから。

 そう言うとメルヴィンはポカンとしていた。僕の生い立ちを説明すると納得したようだ。

「それでその歳でそんな魔法得意なのか、小さい頃から大魔女様の指導で毎日何時間も修行してたらそうなるのか、凄いな」

 メルヴィンはうんうん頷くと、ならと切り出した。

「この街のことあんまり知らないだろう、俺が案内してやるよ!」

 

 それはとても嬉しい。僕はまだパスカルさんのお店付近しか街を歩いたことがないんだ。

 二人で冒険者ギルドを出ると、街を散策する。

 オススメの防具屋を教えてもらったので、ついでに冒険者装備も揃えることにした。後衛の魔法使いになるので胸当てと膝あてくらいで良いようだ。メルヴィンも協力してくれて、必要な細かいものも買ってゆく。

 お金に余裕があれば、沢山物が入る魔法のかかったバッグを買うといいらしい。メルヴィンは冒険者になって真っ先にこれを買ったそうだ。素材を沢山持って帰れると収入が増えるもんね。

 

 僕もバッグはなるべく良いものを選んだ。回復薬作りで稼いだお金が結構減ってしまったけど、仕方ない。

「一気に買い物したけど大丈夫か?小遣いは計画的に使えよ」

 メルヴィンが兄さんみたいなことを言っている。僕がお金を持っているのが不思議なんだろう。

 僕は回復薬を作ってお金を稼いでいることを説明した。

 メルヴィンは納得してくれたようだ。

 

「冒険者に大人気の大魔女様の回復薬、今は弟子が作ってるって聞いてたけどお前のことだったんだな……今更だけど冒険者に勧誘して本当に良かったのか?」

 僕はもちろんと頷く。

「一度冒険者になってみたかったんだ!だってロマンがあるでしょ」

 メルヴィンはお腹を抱えて笑った。

「そうだな、確かに夢がある仕事だよな、わかるよ」

 学生の間だけになってしまうかもしれないけど、どうせなら上を目指したい。そう言うとメルヴィンは、賛同してくれた。

「俺の夢は騎士だけど、冒険者としても行ける所まで行きてーな。中途半端はかっこ悪いだろ。そうと決まれば最高のメンバーを集めないとな」

 僕はテディーがメンバーになってくれるといいなと思った。入学試験で的を破壊した残りの二人も、親しくなれるといいな。

学園の入学式が楽しみだ。 

 

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