第16話 試験結果
試験から数日たった日のこと。僕はアオとシロと一緒に回復薬を作っていた。
『おく~すり~をつく~るの~』
アオが体液を提供してくれながら歌っている。
シロは何だか元気がないようだ。
「シロどうしたの?」
『……僕何にもできることがなくて役たたずだよね』
僕はその言葉に驚いた。そんなことを考えていたのに気づいてあげられないなんて、僕はテイマー失格だ。
「僕は役に立つからシロと一緒にいるわけじゃないよ。シロは僕の大切な家族なんだから」
『そうなの!家族なの!』
アオも一緒にシロを慰める。それにシロはまだ子狼だ。大きくなればきっととても強くなるだろう。
僕がそう伝えるとシロは少し安心したようだった。
『僕、早く大きくなってエリスの役に立つね!』
別に役に立たなくてもそばに居てくれるだけでいいのに、シロはこの間の試験の時に、他の人の強そうな従魔を見たからそう感じてしまったのだろうか。僕はシロを撫でながら考えた。
「僕はシロを抱いて寝たらいい夢が見られる気がするんだ。だから毎日一緒に寝てくれる?」
『もちろん!僕もエリスと一緒に寝るのが好きだよ』
少し元気が出たようでホッとした。
『ずるいの!私も一緒に寝るの!』
アオが体当たりで主張してくる。
「うんもちろんアオも一緒だよ」
三人で笑いあっていると、ドアをノックする音が聞こえた。
回復薬の入った鍋の火を止め、ドアを開ける。
するとそこにはお母さんがいた。
「エリス!学園から試験結果が来ているわよ!」
僕は途端に緊張した。お母さんに連れられ、リビングに行くと、お父さんと兄さんも居た。テーブルの真ん中には封筒が置かれている。
心臓がバクバクしてきた。ちゃんと合格できただろうか。
「開けてみなよ」
封筒を渡され慎重に開封する。その途端、封筒から花吹雪が舞って合格おめでとう!と不思議な声がした。
僕はあまりにビックリして呆然としてしまった。
お父さんたちは拍手で合格を喜んでくれる。
合格?合格でいいんだよね。ビックリしすぎて実感が湧くのが遅くなった。ジワジワと嬉しさが込み上げてきて、僕は飛び跳ねて喜んだ。
封筒の中身を見ると、黒い紙に白い文字で合格と書かれていた。
なぜに黒?と思っていると兄さんが言った。
「エリスはブラッククラスか、予想外だな」
なるほど、クラスの色なのかと納得する。紙には入学式の日程が書かれていた。もう一枚の紙には入学までに用意するものが書かれている。制服とバッグ、杖とフライングシューズ、それに筆記用具くらいだ。
「早速制服を仕立てに行きましょう。早く行かないと混むわよ」
お母さんが指定のいくつかの仕立て屋の中から良さそうな店を見繕っている。そのままお母さんと兄さんと一緒に制服を仕立てに行くことになった。
仕立て屋に着くと、先客が居たようだ。顔を見ると、試験の時に素手で的を破壊していた男の子だった。彼も制服を仕立てに来たのだろうか。
「あ!お前……」
目が合うと向こうも僕を覚えていたらしい。驚いた顔をされた。
「お前も合格したのか!クラスは?俺はレッドクラスなんだ」
彼の真っ赤な髪と快活そうな性格にピッタリのクラスだ。
「僕はブラッククラスだよ。名前はエリス・ラフィン。よろしくね」
僕が名乗ると彼も名乗ってくれる。
「俺はメルヴィン・ゲデス。よろしくな!……エリスは何歳だ?」
七歳だと答えると、驚愕されてしまった。
「凄いなお前、俺なんて十二歳だぞ。二回試験に落ちてるからな」
なんと五歳も歳が離れていた。メルヴィンは絶対あの学園に通いたくて挑み続けていたらしい。
「憧れの人があの学園の出身なんだ!折角なら同じとこに行きたいだろ」
彼は真っ直ぐな性格なんだろう。合格出来てよかったねと言うと嬉しそうに笑った。
「そうだ、俺入学出来たらお前を勧誘しようと思ってたんだ。冒険者に興味無いか?」
冒険者と聞いて僕はテンションが上がる。彼は冒険者なのだろうか。
「学園の休日に一緒にパーティー組んで小遣い稼ぎする仲間探してんだ。あの試験の時一緒に居た、緑の髪のやつも一緒にどうだ?」
『エリス、絶対受けるの!冒険するの!』
アオが冒険と聞いて飛び上がって喜んでいる。僕は少し迷った。回復薬を作る時間が減ってしまうからだ。
「エリス、経験してみたらどうだい?前から冒険者に興味あっただろう?薬のことは別に作らなくても大丈夫だから」
兄さんが背中を押してくれる。僕は好奇心には勝てなかった。
「わかった。テディーは了承するかわからないけど、僕はいいよ。一緒に冒険しよう」
そう言うと、メルヴィンはとても喜んだ。
「他にも目をつけてるやつがいるんだ。的破壊した連中な。入学したら聞いてみようぜ」
僕らは採寸が終わったら、一緒に冒険者ギルドに行くことにした。
メルヴィンは二年前からソロで冒険者をしているらしく、何でも聞いてくれと言った。とても心強い。
「お友達が出来てよかったわね」
お母さんが頭を撫でてくれる。僕はギルドに行くのが楽しみだった。
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