第15話 実技試験
さていよいよ午後の実技試験だ。試験は午前の試験の時に貰った番号の順番に行われる。つまり僕はテディーの次だ。
テディーは緊張で真っ青になっている。アオが回復魔法をかけるが焼け石に水だった。
試験内容は、最初に名前とジョブを名乗り水晶に触れる。これはクラス分けのためらしい。
そうしたら、用意された的に魔法の基礎と呼ばれている一番簡単な水の魔法を当てる。
その次は得意魔法。これは多重展開ができるものは必ず多重展開をしなければならないらしい。得意魔法は身体強化系も含まれる為、的を殴ったりしても構わないそうだ。
的はいくらでも壊してくれていいと言っているが。強度の高いシールド魔法がかかっている。壊すのは中々難しいと思う。
試験は最初から最後まで衆人環視の元行われる。チラホラ制服姿の人も居るのはどうしてなんだろう。
僕とテディーは最後の方なので最初の人達の試験を眺める。
すると一人の女の子が目に止まった。
僕と変わらない年齢に見えるのに、魔力操作技術の熟練度が高くて驚く。水魔法を極限まで絞って的を破壊していた。
ジョブはまじない師らしい。彼女のかけるまじないはかなりの効果がありそうだ。多重展開は出来ないようだけど、きっとすぐに身につけられると思う。
「あの子凄いね、きっと合格するよ」
テディーも感嘆していた。『鑑定士』であるテディーのお墨付きだ。筆記も良ければ間違いなく合格だろう。
他にも面白い子が居た。
僕より少し歳上に見える体格のいい男の子で、最初の基礎魔法は散々だったが、得意魔法の身体強化の熟練度が高すぎる。素手で的を破壊した唯一の子だ。
後は基礎魔法は平凡だが、剣を強化魔法で強化して的を貫いた子。身体強化も同時に行っていたようだ。自身の身体強化は魔法陣が必要ないから、多重展開にはならないが結構な技術だ。
そしていよいよテディーの番が来た。これまで的を破壊できたのは三人だ。テディーは何を見せてくれるんだろう。
テディーは緊張した様子で前に出る。
最初の基礎魔法はなかなかの出来だった。そして得意魔法。
テディーは炎の魔法と水の魔法を多重展開する。先に炎魔法が的にあたり、水魔法が同じ場所にあたる。水魔法は見事的を貫いた。
きっと何が起こったか分からない人も多かったと思う。テディーは鑑定士だ。恐らく的にかけられたシールドの魔法の劣化具合を鑑定して、弱っている部分を集中攻撃したんだ。だから威力の弱い魔法でも的を壊すことが出来た。
僕は思わず拍手してしまった。テディーは満面の笑みで戻ってきた。僕の肩をすれ違いざま叩いて応援してくれる。
僕は前に出た。後ろからアオとシロがついてくる。
「エリス・ラフィンです。ジョブは『テイマー』よろしくお願いします」
僕は水晶に触れた。僕からはよく分からなかったが、試験官の人達にはクラスが分かったのだろう。
最初の基礎魔法の準備に入る。試験官の人の合図とともに魔法陣を描く。スピードと威力重視だ。前の自分の世界のピストルのようになるまで水を小さくして思いっきり飛ばした。
結果、魔法はシールドを貫通して的を貫いた。やった!成功だ!
次は得意魔法、僕が得意なのは土と風の魔法だ。新しく設置された的に向かって多重展開する。小さな土の玉を作り出し、風魔法で速度をつけて押し出す。土の玉は的にめり込んだ。残念、貫通しなかったか。
試験官さん達に礼をして退場すると、テディーが笑って迎えてくれた。
「凄かったよ、五人目の的破壊。僕みたいに小狡い方法じゃなくて実力で破壊するんだもん。ビックリしたよ」
「テディーのあれも実力のうちだと思うけど、凄かったね。テディーの目は何でもお見通しだ」
二人で笑いながら、的を破壊できたことを喜び合う。二人とも合格できるといいな。
一応最後まで試験を見学して、僕たちは帰ることにした。
結局的を破壊できたのは五人だけだった。でも流石名門学園だ。魔法の技術が既に高い子が多かった。
僕とテディーは再会を約束しあう。出来れば一緒に合格して一緒に学びたい。そう思うくらいには僕たちはたった一日で仲良くなっていた。
帰宅するとお父さん達がお疲れ様会をしてくれた。
僕の好きな物が一杯で、夢中になって食べる。昼は緊張してあんまり食べられなかったんだ。
友達ができたと言うと、みんな我がことのように喜んでくれた。
夜、ベッドの中でおばあちゃんに今日の出来事を報告する。
その日見た夢は、前世大学に合格した時の夢だった。
僕も同じように合格できるといいな。
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