第6話 領主様一家
領主様の御屋敷はとても大きかった。扉の前には沢山の花が咲いていてとても綺麗だ。門から玄関までが長く、不思議な感じがした。
領主様に手を引かれキョロキョロしながら歩いていると、前庭に複数の犬の姿が見えた。
「ああ、先に顔を見せておこうか」
領主様が笛を吹くと、犬たちが集まってきた。シロがしっぽを振っている。
大きな犬たちに囲まれるのは少し怖かった。
「こうしておけば敷地内を歩いていても襲われることは無いよ」
僕は犬たちに挨拶した、手をかざして匂いを覚えてもらうのだそうだ。シロも匂いを嗅ぎあって挨拶している。
『わたしも挨拶する!』
アオがそう言うので、僕の頭の上から下ろしてやる。匂いを覚えてもらったからもう安全だ。
屋敷の中に入ると早速、四人の人がいた。
「玄関で待っていたのか?」
領主様は呆れた様子だった。
「だって可愛い子が来るって言うんだもの、早く逢いたいじゃない」
恐らく奥さんだろう、オレンジの綺麗な髪をした女の人が笑っている。
「しょうがないな。エリスくん、彼女は私の妻のリヴだ。隣は息子のパーシー」
パーシーさんは十五歳くらいの明るい茶髪の青年だった。目が合うと笑って挨拶してくれた。
「エリスと申します。この子達はアオとシロです。これからお世話になります」
僕はそう言って頭を下げる。
「礼儀正しい子ね、流石大魔女様のお孫さんね」
僕は褒められて嬉しかった。僕に沢山のことを教えてくれたおばあちゃんの為にも、いい子で居ないとと誓う。
「こっちにいるのはメイド長のラキータと執事長のダレルだ。屋敷に関わることで分からないことがあったらなんでも聞くといい」
二人は黙礼して答えた。
「さて、部屋に案内するよエリスくん」
領主様に連れられて入った部屋はとても広かった。
家具はブラウンで統一されていて、とても落ち着いた部屋だ。
「こんなに広い部屋をお借りして良いんですか?」
僕は少し不安になった。身に余る待遇な気がしたからだ。
「家には部屋が沢山あるからね、気兼ねなく使ってくれて大丈夫だよ」
領主様は笑って頭を撫でてくれる。
『わー、広い』
一足先に部屋に入ったシロとアオが飛び跳ねている。
僕は領主様に感謝して部屋を使わせてもらうことにした。
食事はみんなでとるようで、時間になったらメイドさんが呼びに来てくれるそうだ。
次に案内されたのは庭に建てられた小屋だった。僕が回復薬を作れるように空けてくれたそうで、なんだか申し訳ない気持ちになった。
中には簡易だが厨房もあるし、周囲には花壇があって薬草を育てられるようになっていた。
「他に何か必要なものはあるかい?」
僕は首を横に振った。薬を作るならこれで十分だ。
沢山作って領主様の役に立とうと思う。
その後は奥様達とお茶に誘われた。見たこともないような綺麗なお菓子が並んでいて、アオが興奮していた。
「エリスくんは今いくつなの?」
「七歳です」
奥様が僕を質問攻めにしてきてちょっと面食らった。
パーシーさんはとても話し上手な人で、屋敷のことを色々教えてくれた。普段は学園に通いながら次期領主としての勉強もしているらしい。
学園はどんな所なのか気になって、沢山質問してしまった。
大体十歳くらいから通って主に一般教養と魔法を学ぶものらしい、頑張れば僕も通えるだろうか、ちょっとドキドキした。
領主様一家はみんな気さくな人ばかりで、夕方には僕の緊張もだいぶ和らいだ。こんな素敵な人たちと暮らせるなんて夢のようだ。
夕食もとても美味しくて僕はつい食べすぎてしまった。
夜、ベッドの中でアオとシロとお話する。
シロを抱えて、今日は楽しかったなと笑った。
『楽しかったね、明日は街を見たいな』
シロは御屋敷までの道のりで楽しそうなお店を見つけていたようだ。
アオはふかふかのベッドが気に入ったようで、先程からずっと飛び跳ねている。
寝る前に心の中でおばあちゃんに今日の報告をする。そうしている内に、僕の意識は夢の中へ落ちていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。