第13話

 翌日、リビングでは海と司が向き合っており、司は居心地の悪そうな顔をしていたが、やがて申し訳なさそうな表情で頭を下げた。



「海さん、本当に申し訳ありませんでした。昨日も謝罪しましたが、私は本当に間違った事を海さんにしてしまいましたし、他の社員の方にも冷たく当たってしまいました……」

「まあ俺は良いけど、他の人達は司の豹変ぶりにだいぶ戸惑ってたし、そこはゆっくりどうにかしていくしかないよな」

「はい……あの木だって根本が少し腐ってしまっていましたし、私の言動は本当に良くなかったと思っています」

「俺の霧札でどうにか浄化したけど、あのままだと上の方まで腐っていって、最終的には枯れる可能性もあっただろうしな。でも、司が正気に戻ってくれて本当に良かった。今日明日しかもう無いけど、このまま二人で協力をして──」

「……本当に私で良いんですか?」

「え?」



 海が不思議そうにしていると、司は表情を暗くしながら口を開いた。



「昨夜は海さんにどうにかしてはもらいましたが、私が嫉妬深い性質なのは変わらないです。このまま私達が恋人になったとして、現実でもまた嫉妬深さから何かをする可能性は十分にあります。もし本当にそうなったら海さんに多大な迷惑を……」

「……いいよ、そんなの。俺だっていつも迷惑かけてるし、これからだって不甲斐ないところを見せると思う。それに、さ……恋人とかってお互いに遠慮するような関係じゃなく、迷惑をかけ合えるような関係だと俺は思ってるよ」

「海さん……」

「まあこれまで交際経験の無い俺が言っても説得力はないし、だからといって踏み込みすぎる関係が良いとは言わないけどさ。だから、司も遠慮なく俺に迷惑をかけてくれよ。そんなとこすらも受け止めて俺はお前を愛してみせるからさ」

「……海さんは本当に海のような人ですね」

「え?」



 海が驚く中、司はクスリと笑った。



「海は生命の母と呼ばれていて、優しく包み込むと同時に全てを飲み込むというイメージがあるんです。海さんは男性なので母性ではなく父性という事になりますが、その雄大さで私自身を包み込むと同時に悪いところすらも飲み込んでしまおうとするそういうところが海のようだと思います。海水には清めに使われる塩も含まれていますから、様々な物を浄化する霧札の能力を有する海さんらしいですしね」

「となると、俺達は自分達らしい能力を与えられた事になるんだな」

「そういう事になると思います。さて……海さん、そうと決まれば早速ミッションに移りますか?」

「そうだな。でも、どのミッションをやろうか」

「……私は一つ決めていたのでそれをやりたいです」



 そう言うと、司は椅子から立ち上がり、自分を見つめる海の方まで歩いていくと、その服の中に手を入れ、服で隠れている胸を軽く撫でた。



「つ、司……!?」

「愛を確かめ合うというミッション、覚えてますか?」

「あ、ああ……でも、あれは達成したはずだろ?」

「私もそう思っていました。けれど、よく確認したら達成度というのがあったんです」

「達成度……?」

「はい」



 司は答えると、もう片方の手を海の股間の辺りに置き、上目使いで海を見始めた。



「調べてみると、中にはそれのように達成度が定められているミッションがあるようで、同じような意味を持つ行動があったり複数回行えるミッションはそのようになっているようで、愛を確かめ合うもそれに該当するみたいなんです」

「司……」

「私達が初めに思った事も愛を確かめるに該当します。海さん、改めて私と愛を確かめあってもらえませんか?」

「……ああ。それじゃあ行こうか、司」

「……はい、海さん」



 二人は見つめ合うと、どちらともなく唇を重ねた。そして十数分そのままキスを交わした後、海は立ち上がり、司の腰に手を回しながら用意されている二人の部屋に向けて司と共に歩き始めた。

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