第12話
翌日、リビングで海は椅子に座ったままの司を後ろから抱き締めていた。しかし、幸せそうな司に対して海は虚ろな目をしており、光を宿していない目をしながら海は静かに口を開いた。
「つかさ、おれはしあわせだ。おまえみたいなあいてとマッチングできたんだから」
「私も幸せですよ、海さん。こんなに幸せな夢も今日を入れてあと三日。正直な事を言えば本当に寂しいです」
「だったら、げんじつでもこうすればいいじゃないか。おれたちはおたがいにすきどうしなんだから」
「そうですね。私達は愛のあるキスが出来る程に相手を想っていて、こんなに幸せな時間を過ごす事が出来ている。だったら、現実でも同じようにすれば良いんです」
「ああ、そうだな。だから……」
その時、海の目には光が戻り、海は司から身体を離した。
「もうこんなやり方は止めよう、司。このままじゃお互いに良くないからな」
「……え? ど、どうして……私の司配者は効いてたはずなのに!?」
「さっきまではな。けど、能力を持ってるのはお前だけじゃない。俺だっていらないかなと思ってたけど、こういうのがあったら便利かなと思った能力を貰っていたんだ。色々な物を浄化出来る能力、
「浄化……!? それじゃあその能力で私の司配者にかかっていた状態から抜け出したという事ですか!?」
「元々は何か汚れた時に使うタイプの能力なんだろうけどな。けど、言葉通り俺にとっての“切り札”になったし、これがあれば司の能力を幾らでも無効に出来る。もうお前の好きにはならない」
「そ、そんな……」
司は絶望したような表情で俯き、海は大きくため息をついた。そしてそれに対して司がビクリと体を震わせ、やがて目に涙を浮かべながらガタガタ震え出すと、海は司の体を静かに抱き締めた。
「か、かい……さん……」
「司がやってきた事は本当に良くないし、同じ事をされたら縁を切ろうと思う人だっていると思う。でも、俺はそんな事はしないよ」
「どうしてですか……私は貴方に嫌われたり非難されたりされたくないから司配者を使って従わせていたのに……!」
「そういう弱さなんて誰にだってあるよ。俺だって誰かに嫌われたり非難されたりするのは嫌だし、それを避ける手段があるならそれに頼りたい。だから、俺はそんな弱さを見せてくれた司の事も愛するよ。そんな姿すらも愛おしいと思える程にお前の事が好きだからな」
「かい……さん……!」
司の目からボロボロと涙が溢れ出した。
「ごめんなさい……本当にごめんなさい……!」
「うん、もうこんな事はしないようにしような」
海の優しい声に対して司が何度も頷く中、その様子をばっくんは外から眺めており、安心したように笑うと、そのまま静かに姿を消した。
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