第4話

「ん……」



 澄んだ川が流れ、青々とした草原が広がる見事な景色の中で海は立ったままで目を覚ました。そして頭がまだ少し働かない状態で辺りを見回すと、ボーッとした様子で口を開いた。



「……ここ、は……?」

『ここは夢の中、ドリームマッチによって作り出された特別な夢の中ばくよ』

「わっ!?」



 背後から聞こえた声に海は驚くと、弾かれたように振り返った。そしてそこに立っているばっくんの姿に胸を撫で下ろすと、少し怒った様子で話しかけた。



「まったく……いきなり話しかけるなよな」

『ビックリさせたのは悪かったばく。さて、さっきも言ったようにここはドリームマッチによって作り出された特別な夢の中ばく。貴方はここでドリームマッチが選出したマッチング相手と出会って、お互いの相性の良さを見極めてもらうばく』

「そういえば、さっき好みのタイプとかどういう交際がしたいかみたいな事も聞かれたな。その相手もドリームマッチに選ばれた人なのか?」

『その通りばく。向こうも条件やら何やらをしっかりと設定した上でここに来るから、向こうさんにとっては貴方が理想の相手という事になるばく』

「理想の相手って言われるとなんだか照れるな。それで、その相手はいつ来るんだ?」

『もう少し待つばくよー。だから、その間にもう少しだけ説明をしておくばく』



 海が頷いた後、ばっくんは話を始めた。



『まず、貴方とお相手にはここで八時間半過ごしてもらうばく。八時間半っていうのは人間にとって理想の睡眠時間で、現実ではいつも通りの睡眠時間だけどきっちり八時間半寝た分の満足感を起きた時には味わえるからそこは楽しみにしておいてほしいばく』

「八時間半……まあ結構時間はあるし、お互いの話をするには十分すぎる時間だな」

『そうばく。それで、貴方とお相手にはそんな一日を七日間過ごしてもらい、七日目が終わる時に結論を出してもらうばく。今回の貴方達の場合は現実でも付き合うかどうか決めてもらう感じばくね』

「一週間か……因みに、その相手とはその七日間の間に現実で会っても良いのか?」

『良いばくよ。まあその相手によっては自然と会う事になる事にもなるばくから会っちゃいけない制約を設けたら現実での生活がやりづらくなるばく』

「まあそれもそうか」



 海が納得顔で頷いていたその時、そこにばっくんと同じ姿をしたモノと一人の人物が現れた。



『おっ待たせ~ばく』

『お、来たばくね。伊吹海さん、この人が貴方のマッチング相手ばくよ』

「ああ、わかっ……え?」



 海はその人物の顔を見て驚き、ばっくんはクスクス笑った。



『改めて紹介するばく。この人が貴方のマッチング相手、上野司さん。ご存じの通り、貴方の上司にあたる人ばくよ』

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