第2話

「ふう、ようやく落ち着いたな」



 寝間着に着替えた男性は息をつくと、手に持った携帯電話に視線を落とした。画面におかしなところはなかったが、ある一点を見ると男性は首を傾げた。



「やっぱり見覚えがないよな、このドリームマッチっていうアプリ。まさかウイルスとかじゃないよな……」



 男性がドリームマッチのアプリを見ながら怪しんでいたその時、画面上に小さなばっくんが現れた。



『こんばくー!』

「わっ!?」



 突然の出来事に男性は携帯電話を落とし、恐怖と驚きで男性が携帯電話をただ見る中で携帯電話からはばっくんの声が流れ続けた。



『わっ、とは失礼ばくねー。まあばっくんは今世紀最高のイケバクだからその程度は気にしないばくよー』

「な、なんだ……やっぱりウイルスか何かだったのか!?」

『ウイルスじゃないばくよー。まあ突然お邪魔したのは悪いと思ってるばくけど、今回は貴方に素晴らしい提案をしに来ただけばくよ』

「す、素晴らしい提案? というか、お前は誰なんだよ?」

『申し遅れたばく。ばっくんはこのドリームマッチの案内人ばく』

『ばっくん……? 案内人っていう事は、そのドリームマッチっていうアプリの正体を知ってるんだよな?』



 男性は恐る恐る携帯電話に近づき、画面上のばっくんは笑みを浮かべた。



『もっちろんばくー。まず、ドリームマッチは簡単に言えばマッチングアプリって奴ばく。マッチングアプリを使った事はあるばくか? 伊吹いぶきかいさん?』

「な、なんで俺の名前を!?」

『ばっくんは何でも知ってるばくよー』

「つ、使った事はないよ。だって、マッチングアプリっていわゆる出会い系って奴だろ? それに関わって事件に巻き込まれる話だって少なくないし、そんなの怖くて使えないって」

『ドリームマッチをそんじょそこらのマッチングアプリと一緒にされちゃ困るばくよー。そういう悪質な物と違ってドリームマッチはその人にとってベストマッチな相手を見つけてマッチングさせるし、別に恋活とか婚活に特化しているわけじゃないから、これ以上ない程の友達にも出会えるかもしれないんだばく』

「出会いと一言で言っても色々な物があるからな。それで俺に出会いをもたらすためにお前は来たって事か?」



 画面上のばっくんは大きく頷く。



『大正解ばく。さて、それじゃあどんな方法でマッチングをして、その後も付き合いを重ねていくか。それが気になるところだと思うばく』

「まあな。それで、その出会いってどんな感じに始まるんだ?」

『ふっふっふ、良い食い付きばくね。当アプリ、ドリームマッチの出会い方、それは!』



 海が息を飲む中、ばっくんはニヤリと笑いながら言葉を続けた。



『ズバリ夢! 貴方は夢の中で出会った相手と付き合いを始めるんだばく!』

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