第40話 到着

 と不満を口につつも水上は左側のドアから、走矢は右側のドアからそれぞれ外へ出た。

「ねぇ、二人とも。私たちには話が見えないのだけれど、説明プリーズ」

 同じく車外へ出た七海が疲れ切った顔で訊いてくる。

「簡潔に言うと、千両寺冬也がすぐにやって来るってこと」

「……マジ?」

 というわけで、説明タイムが始まった。

 二人があの一撃――巨大な光の螺旋――の正体を千両寺冬也だと見破ったのは、水上のビームが弾かれた時に一瞬だけ出現した薄い膜だ。

 走矢にはあまり馴染みがないためすぐに反応はできなかった。だが、常に使用している水上にはあの膜の正体が『ソウルウォール』だと一目で理解した。バリアを展開できるのはDIFの周囲に限定されるため、巨大な光の螺旋は雷を纏ったDIFが突撃してきたということになる。

 となれば、あの状況で走矢たちへ攻撃を仕掛け、水上のビームを弾ける『ソウルウォール』を展開しつつ、その身に雷を纏いながら空を駆けることのできるDIFは一人しかいない。

 雷鳥オスカーイルと貸与している千両寺冬也という結論に至ったのだ。

「という理由だ。わかったら、さっさと用意を――」

「残念だが、もう到着をしてしまったようだ」

 水上の視線を追うと、正面からあの鳥がなだれ込むように次々と飛んでくる。

「な、何よあの数は!」

「と、トネール」

『が、頑張って……人間?』

 女性陣が数の暴力に狼狽えている中、走矢が一歩前に出る。

「みんな落ち着きなさい。トネールは二人を守ることだけを考えなさい。他は私たちで対処する。いいな?」

「問題ない。それが仕事だ」

 水上の力強い言葉を聞いて安心をしながら、走矢は地面に膝をついて右手を置いた。

「よし。とりあえず、あれは私が対処しよう……砂嵐!」

 長い間使われず地面に積もった塵や砂が、走矢の風によって激しく舞い上がった砂嵐は、突っ込んでくる鳥を飲み込む他、天井を吹き飛ばしながら上空を旋回していた鳥たちをも巻き込んでいく。千両寺冬也の鳥は砂嵐な中でミキサーのように引き裂かれながら形を保てなくなり消滅していった。

「すごいです」

『もう驚きすぎて疲れたわ』

 車のドアに持たれながらももは感嘆し、トネールは呆れた様子で見ている。

「砂がないと使えないけどね」

 走矢は左手で押し出す動作をすれば、砂嵐も真っ直ぐ進んでいく。

 これで時間を稼げれば、と思った矢先だった。

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