第37話 二つ目のUSBメモリの存在を知る冬也
「落とされた? いや、そんなことより、あれはまさか竜王?」
青山龍太郎が襲われたことで、TWGが出張ってきたか。
だが、竜王が来てくれたことはある意味朗報だな。
竜王はTWGの中でも圧倒的な攻撃力を持っている反面、その一撃が広範囲に及ぶため遮蔽物のない空や海などの戦闘では厄介な相手だが、人や建物が密集している場所での戦闘は被害が大きすぎるため禁止されている。
竜王の目的が暗殺者を送り込んだ人物の確保、又は抹殺であることは間違いない。
しかし冬也がすでに東京にいる以上、広範囲攻撃しかもたない彼は何もできない。
一瞬、ヒヤッとしたが運は冬也を見放していない。
「青山龍太郎が合流する前にUSBメモリを手に入れてやる」
冬也の右目はもう一つの場所の映像を流す。
時田走矢たちから少し離れた木の影から黄色い鳥の赤い瞳が光る。
彼らはUSBメモリをノートパソコンに接続している。
「中身を見ているのか。これはチャンスだ」
USBメモリを無事に手に入れても、セキュリティートラップを設定している可能性が高く見る手段がない。そのため即刻壊そうとしていたが、もしかしたら内容を見られるかもしれない。
「待機しているメンバーへ連絡。A班は右から、B班は駐車場側から、今すぐ奴らを襲え! 残りは待機」
『了解です』
スマホで指示を出すと、一分も経たずに部下たちが時田走矢たちの前に姿を見せた。
「さて、うまく引き付けておいてくれよ」
黄色い小鳥を飛ばし、少しずつ距離を縮める。
幸いに彼らの意識は部下たちに向いており、誰も小鳥の存在に気づく者はいなかった。
「よし、一体何が書かれているのかな」
ノートパソコンの前まで辿り着いた小鳥は、小さな足を使って画面をスクロールしていく。
「ほうほう。色々なことを調べているではないか。やはり、始末したのは正解だった……何だと⁉ 二つ目のUSBメモリだと。そんな物があったのか。それで、その場所は……旧長屋道製鉄」
その文字を見た瞬間、映像が途切れてしまった。
「やられたか。だが、もう遅い。現在待機中のメンバーへ連絡。全員、今から旧長屋道製鉄へ移動だ。そこに川本みなとが隠した二つ目のUSBメモリがある。探せ!」
『了解です』
部下への指示が終わった直後、別の場所で待機している小鳥と視界をリンクさせる。
すると時田走矢たちも動き出す。
妨害する部下たちを時田走矢ともう一人の男が相手をし、その間に女性陣がオアシス公園から出ていく。
逃げているのか――いや、違うな。
彼女たちが向かう先には、コインパーキングがある。
「車を取りに行ったのか」
場所を知られたから慌てて取りに行き、旧長屋道製鉄へ先に着こう、という魂胆みたいだが、考えが甘い。
なぜなら、旧長屋道製鉄までは一般道を使うと四、五十分かかってしまうが、高速道路を使えば二十分まで短縮できるのだ。つまり、どれだけ早く高速道路へのれるのかが、勝負のカギとなる。
そして、待機していたメンバーの車四十台がすでに近くの高速道路を目指している。
一方、時田走矢たちはやっと車に乗り込んだところ。今さら残りの二人を拾い、四十台の車を出し抜いて高速道路へのれることは不可能だ。
「この勝負はもらったぞ。時田走矢!」
無人の屋上で高笑いを上げて、相手を出し抜けた高揚感に浸っていた次の瞬間、冬也はとんでもない物を見てしまう。
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