第36話 驚愕
雄大な大空を優雅に飛び回る海鳥の群れに混じり、黄色い鳥が先ほどまでの戦闘を全て捉えていた。
凝視する真っ赤な瞳を通して、右目に流れた映像を見た冬也は舌打ちをした。
「サウスリーダーと光岡時雨の強さにも驚いたが……青山龍太郎があんなに強いとは知らなかった」
初めて三人の戦いを目の当たりにした冬也は鳥肌が立った。
サウスリーダーの『ソウルウォール』の強固なバリアとその使い方。さらに岩のように変化させた腕の一撃は、覚醒したリカードの巨大な酸の熊を吹き飛ばした。
そして光岡時雨に至っては、サイレントが繰り出すナイフの投擲や風の刃を、両手の細い剣で次々と弾き、彼女以上のスピードで間合いに入り、次々と剣を突き刺していって動きを封じ込めたのには、驚きを通り越して完全なホラーだった。
その後、列車から海に浮かんでいた船へ飛び降りていたが――いや、考えても無駄だ。彼女は規格外の化け物だと思って、この話はお終いとしよう。
少し想定外のこともあったものの、風の便りで四人のリーダーは強いことや、十二災害の一角ということで、ある程度の強さは想像できる――例外もあり――。
問題は青山龍太郎だ。
巨大な酸の熊を、まるで蛇のような動きで金が巻き付いた後、酸を吸い取って熊を倒してしまった。
何と恐ろしいことか。
金を生成するスピード、質量、操作、展性、延性、そして吸収。
あれを何の対価もなく、無尽蔵に生み出し、意のままに操り、天然の金にはありえない性質を付加することができる。
はっきり言って、青山龍太郎に勝てるビジョンが見えない。
今も平然と壊れた列車の天井を金であっという間に直していった。
ランクSで“王”の称号を持ち、群雄割拠の人工島をまとめ、ニューライトブルーシティーの頂点となった人物が弱いわけがないのだ。
「とんでもない奴に喧嘩を……何だ?」
目の前が暗くなり天を見上げると、そこには――。
「あれは……竜」
全てを見下ろす竜の影をその瞳に映した瞬間、映像は途切れてしまった。
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