第34話 光岡時雨
「あなたは誰ですか?」
リカードは看板に立つ漆黒の服を纏う女性に問いかけつつ観察する。
よく見れば、頭にカチューシャ、真っ黒なドレスと白いエプロンの装いは、この女性がメイドであると主張している。
「お初にお目にかかります。私は
深くお辞儀をした時雨は満面の笑みをリカードに向ける。
「そのメイドがどうして私の船にいるのかな?」
リカードは改めて数分前の事を思い出す。
ストライクガイアベアーとのリンクが途切れて意識が戻った時、船には確かにリカードだけだった。その後、走る列車を眺めたところで、船を動かすため振り向いて移動し操舵席へ座り、キーを回して進もうとした瞬間、背後から呼び止められた。
いくら任務が失敗して気分が落ち込んでいたからといって、竜王が近づいているのだから周囲の警戒を緩めてはいなかった。にもかかわらず、視線を外した数十秒で背後を取られたという事実。
船内は隠れるところはない。
海から現れたのか。メイドの服、髪、足元には濡れている気配はない。
ならば一体どこから。
このメイド――できる。
「その質問をお答えして欲しいのなら、先ほどあなた様が口にした“呪い”の意味を教えていただけないでしょうか?」
「はて、何のことですか? 私はそんなことを口に――」
「野良猫が言っていましたのです」
「野良、猫⁉」
急にこのメイドは何を言い出すんだ。
「実は私、青山龍太郎市長の護衛をしておりました。すると、列車の上に黒い野良猫黒い野良猫がいることに気づきまして、少し戯れておりましたの。ですが、疲れてしまったようでおねんねしてしまいまして、少々困っていましたら、不自然に浮かぶ船を発見しましたので、少々お話をしにまいりましたのです」
「あ、青山の護衛? く、黒い、野良猫?」
待て待て待て、情報量が多すぎる。
少し整理をしよう。
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