第24話 side 千両寺冬也
鳥の視界を通して映る光景は、部下たちがお昼時に行くオアシス公園。
あの場所はたくさんの店が立ち並び、味も値段もいい人気のスポットで毎日選ぶのが大変だとうれしい悲鳴を上げていると聞く。
そんな彼らの憩いの場所から連絡が入った。
『ターゲットを発見した』
すぐに鳥を飛ばしたところ、時田走矢と川本の娘が呑気にお昼ご飯を食べている途中だった。
先ほどの戦いで時田走矢の感知範囲が高いことは、鳥を破壊されたことで分かっていたので、少し離れた電線柱に止まって観察をしていると、さらに男女の二人と合流をする。
どうやら、彼らと合流をするためにここで待っていたようだ。
さらに女性がノートパソコンを取り出し、USBメモリを川本の娘から受け取っている。
このままではUSBメモリの内容が彼らに知れ渡ってしまい、今回の犯人が自分だとばれてしまう――と一瞬考えたが、そのリスクよりもこちらが何の労をせずに、USBメモリの内容を確認できるメリットの方が何倍もいい。
ジャーナリストはみな用心深く、川本みなとの前にも他の国から四匹ほどの小バエを捕まえ、そいつらからUSBメモリを奪い取り、中身を確認しようとしたがパスワードを解読できず、結局中身を見ずに壊した経緯があった。
だからこそ川本みなとが、一体何をUSBメモリに残しているのか気になった。
ここは静観するのがいいだろう。
『現在ターゲットは、オアシス公園で何かを話し合っています。社長、いかがなさいますか』
「待機しているメンバーに連絡。今は静観をするが、俺の合図でいつでも動けるようにしていろ」
『かしこまりました』
部下にスマホで指示を出した冬也は、次に勇気に連絡を取る。
『はいよ。俺はどうすればいい?』
「一緒だ。車でDIFのメンバーと一緒に待機。俺の合図で移動できるようにな」
『了解だ。しかし、奴らも運が悪いな。俺たちがいつも使う駐車場の公園に来るなんて』
「もしかしたら、天が俺たちに味方してくれているのかもな」
『だといいな――』
通話を終えた冬也は、屋上からオアシス公園の方角から東方向へ視線を向いた。
「よし、これで準備は完了だな。後は、あちらの状況次第かな」
左目を閉じ、右目に意識を集中して、列車と並走している黄色い鳥の視界を共有する。
映し出されたのは雄大な海が広がる中、大きな橋の下を走る十両編成の特別列車が走っている。その左の窓には、青山を暗殺するため一人の何かが、彼の車両のドアの前で警備の黒服とやり合っているところだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます