第14話 精霊型の戦い方

 おっ、食いついてきた。

 やはり、プライドが高い分、指摘されればむかついて、話を聞いてくれると思った。

 本来ならニューライトブルーシティーで習うことだが、先に教えてもいいだろう。

「精霊型は他の型と違って、力を授けてくれた本人が傍にいるだろう」

(……つまり、ももと一緒に戦えというの?)

 頭の回転も速い。

 トネールは思っていた以上に優秀だぞ。

「そういうこと。おそらく、君の力をももちゃんが使えない使と知っていたから、オオカミ男たちは積極的にももちゃんを狙ったんだ。なぜだか分かるか?」

(焦らさないで、早く答えを言いなさい!)

「精霊型のDIFは、契約した精霊に使い方を教わることで、自身の体から力を放出することを覚えさせるんだ。この工程がないと、先ほどのように契約者であるももではなく、トネールが前に出て戦闘をするはめになる。そんなもの他のDIFから見たら、契約者を襲ってくれと言っているものだ。力の使い方を知らない精霊型のDIFなんて、そこら辺にいる人間と大差ないからな。このことをオオカミ男たちは知っていたはずだ。だから執拗にももちゃんを追いかけさせたんだろうね。そうすれば必ず、トネールが前に出てくるから、ももちゃんに力の使い方を習わせる時間を潰せる。彼らにとって、トネールの攻撃にだけ全神経を尖らせていれば問題はなかったんだ。だって、ももちゃんは人間と同じで何もできないんだからね」

(ぐほっ。ま、まさか、そんな弱点があったなんて……私はももを危険にさせていたのね)

 走矢の指摘を受けたトネールの心のダメージは効果抜群だったようで、胸を押さえながら大きくのけぞる。

 まさか、守ろうとしていたのに実は、ももを危険に晒していた事実が突き刺さったみたいだが、正直少し酷なところはある。というのも、おそらく敵側もトネールがももに使い方を教えないよう、小出しで仲間出していたような感じがする。もしそうならば、走矢が辿り着くまでももを守ったトネールの働きは素晴らしいものだと思うし、その作戦を考えたオオカミ男たちの主――とある男という奴は、中々頭の切れる奴ではないか。

「それなら、私が今トネールに教えてもらえば、万事解決ってことになるんじゃ……」

(……そうね。本当は私だけの力で守ってあげたかったけど、それでももが危険になるんじゃ意味がないからね。それで……ももにどうやって教えるのかしら?)

「二人は契約して繋がりができているから、目を閉じて意識を集中させてみて」

 走矢の指示のもと、二人は目を閉じて意識を集中させていく。

「あっ、体からすごい力が流れてくる。これが……」

(そうよ、もも。それが私の力。さぁ、右手を前に出して、流れている力を外に押し出すようにイメージをして)

「……えいっ!」

 可愛らしい掛け声と共に、ももの右手から紫色の雷が歪な軌道で正面にあった木へ当たった。

「これが精霊型の基本的な攻撃技かな。ももちゃんは雷の精霊だから雷が出たけど、例えば炎の精霊だったら火が。水の精霊なら水が。風の精霊なら風の刃が出てくるよ。ちなみに私はラディが光の精霊なので――」

 走矢が右手を木へ向けると、その手から白い光が木へ当たる。

 木は黒い煙と燃える臭いを放っている。

「このように光線が出るんだな」

「(おおっ)」

 ももとトネールの声が重なる。

 初歩の技を見せただけなのに、ここまで驚かれると何だか――悪い気はしないな。

「後の技は二人で話し合って、独自の技を作っていけばいい。そうやって、二人の繋がりがさらに強くなれば、ももちゃんはある技を覚えることとなる。それを覚えて、初めて精霊型のDIFとして一人前になれる」

「その技とは?」

「どんな攻撃でも軽減する結界を張れる。名を『エレメントフィールド』という」

 特殊なフィールドが使用者を包み込むように展開され、そこに入った攻撃は全て軽減される。使用者の熟練度によっては完全に攻撃を防ぐことも可能となるが、軽減できる容量は使用者の熟練度合いによって決まっており、これを超えた場合は軽減できなかった分の威力が使用者に届いてしまうリスクもある。

 しかし、『エレメントフィールド』を覚えておけば、万が一奇襲攻撃をされても致命傷を避けることが可能となる。

 精霊型はこの『エレメントフィールド』を覚えることが、一人前とされる理由なのだ。

(ということは、あんたは『エレメントフィールド』を覚えているのよね。なら、どうして出会った時、私の攻撃を避けたのかしら?)

「覚えておくといいが、相手の攻撃を『エレメントフィールド』で受け止めるのは、経験の浅いDIFか覚えたてのDIFだ。熟練のDIFはむやみに受け止めず可能な限り避け、『エレメントフィールド』の一部を攻撃に触れさせて、軽減できる容量を調べ相手の強さの力量を観察。軽減の容量によって、戦略を立てていくというのが熟練DIFの基本戦術となる」

(なら、私の攻撃はあんたの『エレメントフィールド』で全て軽減できたのかしら?)

「ノーコメントだ」

(……むかつくわね)

 二人の間で見えない心理戦が勃発しそうになりかけた時、

「おーい、走矢!」

 と、見知った声が背後から届く。

「やっと来たか」

 走矢は待ち望んでいた人物がやって来たことに、安堵の表情を見せると笑顔で振り返った。

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