第14話 精霊型の戦い方

 おっ、食いついてきた。


 やはり、プライドが高い分、指摘されればむかついて話を聞いてくれると思った。


 本来ならニューライトブルーシティーで習うことだが、今は少しでも戦力が欲しいから先に教えてもいいだろう。


「精霊型は他の型と違って、力を授けてくれた本人が傍にいるだろう」


(……つまり、ももと一緒に戦えというの?)


 頭の回転も速い。


 冷静なトネールは思っていた以上に優秀だぞ。


「精霊型のDIFは、他の型のDIFと違って契約してもすぐに力を使うことができない。なぜなら、人間は体の一部から火柱や竜巻、アスファルトを削るような威力の雷なんて出せないからだ。だから、契約しても使が分からないのさ」


(なるほど。ももに教える必要があるのね。でもどうやって?)


「ラディ」


 名前を呼ぶと、走矢の胸から光の精霊ラディが現れ、トネールの傍まで行き彼女へ耳打ちをする。


(なるほど。分かったわ)


「えっ⁉ トネール」


 ももは自分へ向かって飛来してくるトネールに驚く。


(もも! 私を受け入れなさい!)


「は、はい!」


 トネールの命令を素直に聞いたももは、背筋を正して胸を張る。


 そこへ飛んできたトネールが笑顔でももの胸へ突っ込むと、そのまま彼女の胸に吸い込まれていった。


「えっ、えっ、トネール? あ、聞こえるわ。うん、うん」


 傍から見ればももが独り言を呟いているように見えるが、実際は彼女の中に入ったトネールと会話をしている。


「あっ、体からすごい力が流れてくる。これが……」


 目を閉じて体に流れるトネールの力を感じ取ったももが、ゆっくりと右手を広げて前に出す。


「こうね……えいっ!」


 可愛らしい掛け声と共に、ももの右手から紫色の雷が歪な軌道で正面にあった木へ当たった。


 トネールと比べ、雷も小さく、操作もできていないが、ももが初めて放った攻撃であり、彼女にしてみればDIFとしての第一歩だ。


「おめでとう。これが精霊型のDIFとして初の攻撃だね」


 手を叩きながら振り向くと、自分の右手を眺めながら実感しているようだ。


「これが私たちの力。時田さん、ありがとうございます」


(ちょっと、私のお陰だってこと、忘れないでね)


 ももの体から出てきたトネールが、すねたように頬を膨らませる。


「もちろんよ。トネールもありがとう」


(どういたしまして)


「さて、DIFとしての第一歩を踏み出した君たちは、ここからは二人で考え、そして話し合って独自の技を作っていきなさい。そうやって、二人の繋がりがさらに強くなれば、ももちゃんはある技を覚えることとなる。その技を習得するのが、現段階で君たちの目標だ」


「技? ですか?」


「そうさ。どんな攻撃でも軽減するバリア、名を『エレメントフィールド』という」


 特殊なフィールドが使用者を包み込むように展開され、そこに入った攻撃は全て軽減される。使用者の熟練度によっては完全に攻撃を防ぐことも可能となるが、軽減できる容量は使用者の熟練度合いによって決まっており、これを超えた場合は軽減できなかった分の威力が使用者に届いてしまうリスクもある。


 しかし、『エレメントフィールド』を覚えておけば、万が一奇襲攻撃をされても致命傷を避けることが可能となる。


 精霊型はこの『エレメントフィールド』を覚えて、初めて一人前と呼ばれるようになるのだ。


(ということは、あんたは『エレメントフィールド』を覚えているのよね。なら、どうして出会った時、私の攻撃を避けたのかしら?)


 もっともな意見だが、もちろんそれなりの理由があるが――。


「内緒。君たちが『エレメントフィールド』を覚えた時に話してあげるよ」


(……ちぃ)


 トネールが不満げに舌打ちをしたその時だった。


「おーい、走矢!」


 と、見知った声が背後から届く。


「やっと来たか」


 走矢は待ち望んでいた人物がやって来たことに、安堵の表情を見せると笑顔で振り返った。

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