第6話 偶像
Sともう一度大人として正しい距離を保って出会い直す方法ならもう知っている。
彼女を忘れてしまえばいい。
学業や仕事、人生における揺るぎない地盤を築き己の刃を研ぎ澄ませることに没頭する。
Sを失ってから私の中の時間は止まったままだ。
止まっていた時を取り戻すように、地をしっかりと踏みしめ脇目も振らず自分の人生を突き進むのだ。
彼女が愛した私は、少なくとも彼女の中では他者に左右されたり人生の主導権を握らせたりしない、強くて孤高なイメージだ。
誰も頑張っていない時も、どうでもいいような事でも、意味などなくても一人でいつも全力で先頭を走り続けていて欲しいのだと思う。
人を寄せ付けず誰にも気づかれず片隅にひっそりと、だけど凛と咲く花。
私のそんな所にきっとSは惹かれていた。
だから彼女の偶像でいられなくなった時、彼女の中で私は死んだ。
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