第4話 枷

Sとの別れから4年が経とうとしている。

当時は一生この喪失から立ち直れないと絶望したものだが、時の流れというものは偉大だ。

独りの夜にかさぶたの上から傷跡をなぞり、昔の痛みを思い出す程にまで私は回復した。

新しい環境と友達に囲まれ都会の波に晒されて、生身の心を守る術を身につけてきたつもりだ。

今を生きる私にとって、過ぎ去った日々は文字通り過去でしかない。

でも欲を言えば、最後でいいからもう一度Sの目を見て、できれば笑顔で言葉を交わしたい。

もしこの願いが聞き届けられるなら、今後あなたと会う時に胸を張れる自分でいられるよう一人でも頑張り続けると誓おう。

二度と会えなくても大丈夫なように、彼女の瞳も言葉も胸に焼き付けて、彼女の中の私の記憶は丁寧に塗り変えたい。

思い返す時、あなたにとっても大切で美しい思い出であってほしいから。

そんな微かな望みが心の奥底で燻って、彼女が私に与えた呪いから解放してくれない。


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