第四話 学園の性的暴行事件

魔法第一高等学校。

広大な敷地と豪華な建物が連ねる光景。

一目夢の国の遊園地に来たと錯覚させる程の敷地内は学生たちで賑わっている。

俺は錬金術を扱うために魔道具店へと入店した。

外から見ても大きな建物だと圧巻だったが、中は更に凄まじい。

ガラスケースに守られた魔道具がづらりと並んでいる光景はマニアにはたまらない。

目的を見失わないように魔道具エリアのすぐ隣にお目当ての素材エリアへと移動する。


「何を見ていらっしゃるのですか?」


「福原か、」


そう後ろから話しかけてきたのは福原有栖。

福原はふふっと笑みを浮かべていた。


「式神が錬金術の能力を与えてくれてな。

 道具を買いに来たんだ」


「まぁ!錬金術を得たのですね!

 大当たりじゃないですか」


「そう…だな、そうだと良いが」


実際錬金術は希少価値のある能力だが、才能がなければ豚に真珠だ。

大当たりと言うのは期待をされていると受け取るか、


「今、式神を見せてもらう事ってできます?」


「悪いが式神は家に居るんだ。

 どうも俺の身体には戻りたくないようでな」


すると福原は目を見開いて驚き、少し残念そうにする。


「そうですか、、可愛らしいですね」


可愛らしい?

俺には生意気なガキにしか見えないが、、


「魔力消費は大丈夫なんですか?」


「今のところ問題はないな」


「そうなんですね」


終始ニコニコ話す福原。

顔が整っていて愛想も良い。

モテるんだろうな。


「どうしました?」


「…何がだ?」


「不思議そうに私を見ていたものですから…何かあるのかと」


「いや、モテそうだなと思っただけだ」


「私がですか?」


「あぁ」


「不思議なことを言いますね」


そう言って福原は手で口を隠しながら目を細めて笑う。


「それを言うなら石神さんもモテそうですけどね?」


「俺はモテないぞ」


「そうですか?

 顔も整っていて身長も高いですし」


「自分ではわからないな」


「そうですね、私も同感です。

 と、少し買い物のお邪魔をしてしまいましたね」


「いや、大丈夫だぞ…福原は何を買いに来たんだ?」


「私ですか」


福原は小さく屈んで指を指す。


「これを買いに来ました」


指さすのは拳サイズの魔玉だ。


「魔法の杖に嵌めるのか」


「よくわかりましたね。

 今は所持金も限られていますので高価な魔玉は買えませんが…」


この学園は携帯の決済でしか買い物をすることが出来ない。

携帯には入学金として30万ポイントが配布され、その後はダンジョンやグループ活動などによるミッションで支給される。

福原が指さす魔玉はそう高くないが、今後のことを見越してのことだろう。


「俺も買うとするか…」


必要な素材は携帯にメモしてある。

福原にも手伝ってもらい、素材を買って俺たちは店を出た。


「手伝って貰って悪いな」


「いえいえ、楽しかったですし。

 私、またお買い物しましょうね」


「俺でよければ」


「では」


福原有栖はその場で手を振り石神彰人と別れる。


「少し遅くなりましたね」


残りの買い物を終えると時刻は午後八時。

太陽は沈み、辺りは暗い。

家へと帰路についていた福原は不思議な空気に不気味さを感じる。

先程まで学生で賑わっていた路地は薄暗く人気が無い。

少し不安になりつつ足早になっていくが、何かが迫っている感じがした。


「なんですか…これ」


数分前に見た光景が繰り返されている。

まるで同じ道をループしているかの様に。


「やっと術に嵌ってくれた」


「え、」


荒い息遣いが耳元で聞こえる。

そして福原は身体を抱きしめられる。


「なんですか?」


「冷静だね」


福原は顔を少し逸らして抱き着いている者を確認する。

顔を正確に確認することは出来ないが、たくさんの脂肪が顔についていることがわかる。

また、よだれが私の制服に滴っていることも。


「可愛いねぇ」


クンクンと巨漢の男は匂う。


「すみません、離してください」


「嫌だ。

 僕とエッチしてくれたら良いよ?」


「嫌です」


「安心して?

 ここは僕のワールドだから。

 誰にも見られることもないからさ」


福原は確認する。

相手は制服姿の男子学生であること。

おおよそ上級生であるということ。


「掲示板で知っています。

 見知らぬ男に抱き着かれ、性的暴行を受ける事案が多発していると」


「うんうん、けどね。

 このワールド内じゃ証拠は残らないんだよ」


【ワールド】

戦闘系の能力であり、優れた人材が扱う事の出来るチート技。

自分に有利な世界に引き込み、強力な攻撃を仕掛ける事のできる技術の高い技である。

実際私の足は動かない。

予想は影か闇系の能力。


「私がワールドを持っていたらどうします?」


「ん?

 持ってないでしょ?

 実施今使ってないんだから。

 仮に持っていたとしてもワールドの押し合いに負けないよ」


男はそう言うと福原の胸を制服越しに揉み始める。


「見た目よりもおっぱい大きいね」


更に男は制服の下から中に手を伸ばす。


「じゃあ、いただくね」


肌に男の手が触れる感触が伝わる。


「仕方がありませんね…」

福原は手印を結ぶ。


「ワールド」


「な、なんだ!?」


男の情けない言葉と共に「パリン」と割れる音が鳴る。

暗闇の世界に光が差し込み、空間崩れていく。


「う、嘘だろ…!?」


そしてパシャリという音が聞こえる。


「ワールドを使ってわいせつ行為…あんた退学だな」


福原と男の前には携帯を片手にした男。

その男に福原は見覚えがあった。


「大丈夫か?」


「石神さん、」

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