第二話 式神との契約
「Nクラス…か、」
AクラスからOクラスまでの15のグループが掲示板に掲載されており、名前をタップするとその者のメールアドレスと顔写真などの詳しい情報が開示される。
『三浦 悟:Nクラスの石神彰人君だよね?
体育館の1コートに僕たちNクラスで集まろうと思っている。
僕は手を挙げて待っているね、』
ぽんとメールが通知される。
宛名はNクラスの三浦からだ。
先程マイクで話をしていた女性職員の姿は無い。
特に指示もないため自由時間という事だろう。
俺はメールの通り、体育館の1コートへと移動する。
「俺に指図すんな」
「あなた、出会った間もないけれど不愉快だわ」
「あ?やんのか女?」
大柄の男が黒髪ロングのキリっとした女子生徒の胸ぐらを掴む。
しかし女子生徒はその威嚇に動揺することは無い。
「離しなさい」
「嫌だと言ったら?」
「会話にならないわね、あなたと同じチームだなんて最悪だわ」
「ま、まぁまぁ。
同じチーム同士仲良く、ね?」
「俺は仲良しごっこするつもりで入学したんじゃねえ」
「それは同感よ」
「そ、そうかな…」
入りずらい。
非常にあの輪に入りずらい。
1コートに近づき、明らかに周りから浮いている輪が一つ。
同じグループのメンバーでないことを祈るが、、
「あ!もしかして石神君かい?」
やっぱりこのグループか…
最下層のホワイトランクに落とされたり、このグループに配属されたことも然り。
入学早々不運すぎないか?
「あぁ、石神だ」
俺は申し訳なさそうに手を挙げてNクラスの面子との距離を縮める。
「っち、ホワイトの雑魚じゃねえか」
肩のエンブレムを見て大柄の男はそう唾を吐く。
「あなたも大概よ」
そう煽る女子生徒のエンブレムは蒼色。
そして大柄の男は金色だ。
俺はすかさず掲示板でNクラスの面子の写真を確認する。
黒髪ロングで綺麗な顔立ちをしている女子生徒「椿 由梨」
長髪で金髪の髪色をした大柄の男子生徒「荒沢 真司」
そして優しく笑顔を振りまく女子受けの良い顔立ちをしている茶髪の男子生徒
「三浦 悟」
俺を含めてNクラスは四人が集まっている状況だ。
「まだ全員集まっていないね。
一様全員にメールは送ったんだけど…」
そう言って三浦は心配そうに周りを見渡す。
「Nクラスの橘だけど、」
そう言って現れたのは少し鋭い目つきをした青髪の女子生徒。
「君が橘さんか!
よろしくね!」
そう笑顔で答える三浦だったが橘 飛鳥は返事を返さない。
「大丈夫か?」
「う、うん。
まぁその内仲良くなれるよ!」
「いや、そうは思えないんだが…」
「そんなことないよ。
頑張っていこうね!」
「そうだな…」
気を使って声を掛けたが死ぬほどポジティブだな。
「遅れましたか?」
「あれ、もしかして福原さん?」
「そうです、遅くなってしまい申し訳ありません」
そう言って頭を下げたのはNクラス最後の生徒。
福原 有栖は水色ロングの髪を揺らしながら笑顔を向ける。
その笑顔は周りの生徒が視線を向ける程に可愛らしい。
「いや、大丈夫だよ!
これで全員揃ったね」
各自目線を合わせようとしない中、三浦が口を開く。
「Nクラスのメンバー揃ったね!
僕は三浦 悟。
これから三年間よろしく!」
拍手が起こるのは俺と福原だけ。
荒沢に至っては三浦に目線すら向けないでいる。
「うん、これから重要な話をしようと思っている。
しっかり聞いてほしい。
まず、『学園ポータル』に書かれてある通り、
これから僕たちは式神と契約することになる」
三浦の言う通り、あと30分程で式神と契約する儀式が始まると掲示板に記載されてある。
式神は普通の人間では契約する機会はない。
しかしこの学園では式神と契約することが出来る。
故に世界最高峰の学園と言われ、式神を売りに世界最高峰の生徒を集めることに成功している。
実際、大賢者や英雄、勇者などが卒業生として活躍している。
「だから式神と契約したらまずは僕に式神の能力を教えてほしい。
僕は式神の能力をNクラス内で共有しようと思っている」
「馬鹿かてめえ」
しかし当然の様に反対の意見が出てくる。
口を開いたのは今まで聞く素振りもしていなかった荒沢だ。
「まだグループの仕組みも理解できてねぇ状況で情報を渡せだ?
ふざけんな。
俺は式神の情報を渡さねえ」
「私も同じ意見だわ。
今あなた達に情報を渡すことを決断できるほど信頼できていないわ」
二人の意見に俺も乗っかるとしよう。
「俺も同意見だ。
式神というモノを完全に理解しているわけではないからな。
状況によっては最初に渡した情報と違うアクションが起きる可能性がある」
その時に起こるイレギュラーは甚大な被害を及ぼすだろう。
まずは自分たちで式神の能力を温めておく方が得策と言える。
まぁどっちみち契約する式神次第で状況は変わってくるわけだが、
「そうだね…
ひとまずは保留にしておこうか。
もし式神について困ったら僕に言って欲しい。
グループの力になりたいからね」
あくまで強制はしないか。
「すみません」
「なんだ?」
肩を叩かれ声の主に目を向ける。
「凄くギクシャクしていますね。
何かありました?」
「いや、最初からこうだ」
「大変ですね」
そう苦言を呈すものの福原は笑みを浮かべていた。
ピロンと通知音が鳴る。
マナーモードにしていただけあって、俺は急いで携帯を確認する。
「悪い、呼ばれたみたいだ」
そう言って俺は携帯の画面をみんなに見せる。
そこには体育館裏口に迎えという文字。
「式神との契約かな?」
「そうだろうな」
「じゃあ、一旦Nクラスの集まりは解散にしようか。
もし何かあったら僕に相談してほしい。
出来るだけ協力するから」
そう言ってNクラスのグループは解散し、俺は体育館の裏口に足を向ける。
「ご一緒していいですか?」
福原は通知の画面をこちらに見せて微笑む。
「大丈夫だ」
「石神さん、持ってますよね?」
「何をだ?」
横並びに歩いていた福原が足を止め、俺も足を止める。
微笑む彼女は口を開く。
「”式神”契約して持っていますよね?」
【式神】
それは強者にとって必要不可欠な存在であり、この世の全てであるともいえる。
今現在、世界は著しい発展を遂げて進化し続けている。
その多くの発展を導く発明は式神と契約して得た能力によって作り出されたモノ。
英雄や大賢者と呼ばれる怪物たちの存在を語る上で式神の存在は欠かせない。
俺がすでに式神を持っていると仮定する。
つまり石神彰人は式神と契約する機会が二回訪れていることになる。
二体の式神と契約をする異常性を福原有栖は理解していない。
いや、それとも…
「悪いが、今まで式神と契約した覚えはない」
「そうですか。
すみません、少し勘で言いましたのでお気になさらず」
どういう含みの発言か、
意味を汲み取れないが多分本当に勘で聞いてきたのだろう。
そうでないとおかしなことになる。
「学生証を提示してくれ」
体育館裏口に着くと受付でそう言われ、言われるままに行動する。
念願の式神との契約。
心躍る中、手渡されたアイマスクと耳栓を着用する。
そして石神は手を引かれどこかへと連れていかれる。
「終了だ、目隠しを外して帰宅しろ」
「わかりました」
一瞬にして終わった式神との儀式。
俺が契約した式神は…
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