101話 大人
「今日、君と話せてよかったよ。
いい返事も聞けたことだし、
イベント、楽しみにしている」
「ええ、まあ。
あまり期待しないで待っててください」
「それには応えられそうにないなあ、、」
店で焼肉を堪能したあと、
二人は店を出た。
中でじっくり会話したことで
すっかりお昼時は過ぎており、
暑い日差しが頬を照らす。
「私含めサッカー協会は君を
応援しているんだ。
もはや君は私たちの息子のような
存在なんだよ?」
「知らない人から息子認定されるの
気持ち悪いんですけど、、、」
「なんて酷いことを、、、」
げんなりとした表情になる。
そして車まで戻って来たところで
砂沼のスマホから着信音が鳴った。
「おっと、、休憩は終わりか。
早く戻らなきゃ怒られそうだ。
では工藤君。送ってあげれなくて
申し訳ないが、ここでお別れだね」
「仕事サボって来てたんすか、、?」
「失敬なっ!サボってはない。
ただほんの少し休憩時間が
過ぎただけさ、、、」
「もう昼の2時ですけどね、、、」
そんなことを言いながらも
急いで車に乗り込み、
砂沼透は車を走らせ
どこかに行った。
「嵐みたいな人だったな。
相変わらず、、、」
てっきり今日は休みなのかと
思っていたが、
どうやら仕事中だったらしい。
「、、、帰るか」
あの砂沼の表情。
いつもとは全然違う雰囲気に
戸惑う間もなく、砂沼は話を変えて
それを誤魔化した。
それについて思うところはあるが、
分からないことだらけで今はまだ
真相に辿り着けるとは思えない。
それに、あの男が言っていた彼という人物
も気掛かりだ。
勇人は熱い日差しの中、
家に帰るために歩き出した。
そして、、
少し歩いたところで
「待ってっ!前見て前!」
後ろから女性の声がした。
振り向くと、こちらに小さな女の子が
走って来ている。
だが、その女の子は泣いていた。
幼稚園くらいか、、?
喧嘩でもしたのだろうか、、
後ろの方では必死な表情の
女性と男性が遅れて走って来ている。
「うわぁぁん!
パパもママも大嫌い!」
「待て!危ないぞ美希!」
女の子がこちらに走ってくる
だが、危なっかしい。
全速力で走っているので
息は上がっているし、何より下を見ながら
走っている
勇人はもしものため、
女の子の方に少し駆け足で近づいた。
「ふぇっ!?」
走っていた女の子の足がもつれる
ここは路地狭い路地のような場所であり、
コンクリートの地面が少し割れて
小さな段差のようなものができていた。
それに躓いて転びそうになった
女の子の体を、勇人は受け止めた。
(危なかったな、、、
念の為近づいておいて正解だった)
腕で受け止めた小さな女の子を
見下ろして、ほっとする。
怪我はしていないようだ。
「あれ、、、?」
「大丈夫?前見て歩かないと
危ないよ?」
「あ、うん、、、」
勇人の顔を見上げて、
涙で頬が濡れた顔を見せる。
勇人は涙で濡れた頬を
指でぬぐい、
その場にしゃがんで
女の子と目を合わせる。
「どした?そんなに泣いて。
何かあったのか?」
「ママと、、パパが、、、!」
そういってまた泣き出しそうに
なる女の子の頭を勇人は優しく撫でる。
そうしたところで女性と男性が
勇人に追いついた。
女性と男性が勇人に頭を下げる。
「ごめんなさいっ!
うちの子が、、、」
「すまなかったな、、、
君、娘を受けとめてくれてありがとう。
助かったよ、、、」
「いえいえ。
それより、この子が無事でよかったです」
泣きそうになっている女の子を
見て、素直にそう思う。
女性がしゃがんで女の子と
話す。
「美希。さ、帰ろ?
ママとパパと一緒に」
「やっ、、!」
「え、、、」
女の子は勇人にしがみついて、
女性と男性に言った。
「お兄ちゃんといる!
ママとパパやだ!」
「ちょっと!?何言ってるの!?」
「ママとパパ。美希がしたいこと
ダメって言うもんっ!嫌い!」
「美希、、、嘘だろう、、?」
男性の人が頭を抱える。
勇人にしがみついて離れようとしない
女の子が勇人を見上げる。
「お兄ちゃん、、、」
「うぅ〜ん、、、、」
女の子を抱き止めながら、
勇人は女性に尋ねた。
「差し支えなければ、
なにがあったか聞いてもいいですか?
離れようとしなくて、、」
「はい、、、、」
そうしてひょんなことから
勇人はその親子たちと
話し始めた。
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