93話 積み重ね

「舞っ、工藤君のことなんだけど」

「ん?工藤君?」


工藤君と話した時から、

また日が経って、、

私と舞は放課後にカフェに訪れていた。

私はそこで工藤君のことを舞に話していた。


「アドバイスくれてさ。

 舞にも聞いてほしくて、、」

「そうなの?というか、

 男子に相談したの?高鳥にも

 してなかったのに、、」

「うん、だから、なんで工藤君に相談

 したのかも聞いて欲しい。

 大丈夫、男子で一番信頼できる人

 だから」

「へぇ、、!良いじゃん

 なら、聞かせてよ。

 その工藤君のこと」


そうして私は舞に話した。

私が知ってる範囲のことを。

人を助けて、それすら誰にも見せない

優しさをもってること。

その優しさに何度も私が

助けられたこと

もちろん、サッカーのことも


「すごいね。あのニュース私も見てたけど、

 めっちゃ身近にいたんだ、、

 それに部活でも大活躍で、

 人を気遣うこともしてて、それを

 自慢げに話すこともない。

 話だけ聞くと、すごい良い人じゃん」

「だから!そう言ってんじゃん!」

「いつもよりテンション高いね?

 そうとう気に入ってんだ?

 工藤君のこと。」


そりゃもうね?

唯一かは分からないけど、

私に振り向かない人だし。

まぁ、今はそれが歯痒いけど、、、


「なら、これからどうするかも

 決まったの?今も、恋愛的に

 見てくるから、男子とは話さないよね?」


そう、私と同じ。

いや、私以上に舞は男子から人気で、

一年生ながら色々な人に告白されてる。


そんな舞だからこそ、私の悩みも

わかると言ってくれて、

いつも一緒に考えてくれる。


「舞はさ、いつも告白されても、

 バッサリ振ってるよね」

「そ、恋愛というより今はバスケに熱中

 したいし、なにより話したこともない

 ような人に告白されても靡かないって」

「だよね、、、

 知らない人にそんなことされて、

 怖くないの?」

「怖くない、というか

 怖がる必要ないもん」

「??」


舞は手元にある

アイスコーヒーを、ストローで中身を

くるくる回しながら言う


「確かに由紀の経験上、そういうことに

 敏感になっちゃって、恋愛に

 億劫になるのもわかる。男子と話すのに

 少し躊躇しちゃうのもね。

 でも、それで前に進めないとしたら、

 せっかくのチャンスが無駄になるよ?」

「チャンス?」

「もしかしたらその話した男子の中に、

 自分が好きって思えるような男子が

 いるかも知れないじゃん?」

 

 

要は男子と話さなかったら、

好きな人なんてできない。

だからこそ、少しでも話すことで

恋愛のトラウマを無くそうと言う。

その過程で好きな人ができれば

良いのではないかというわけだ。


「まったくいないの?

 気になってる人とかさ。

 例えばそう、高鳥とか、

 よく一緒にいるじゃん」

「正直、高鳥君をそういう目で見たこと

 がなくて、、良い人なんだけどね」

「そっか。

 なら、他は?」

「うぅ〜ん、、、」


今のところ気になってる人なら、、

一人いる。

でも、それを舞に話すのは

なんか違う気がした。

まだ決まったわけじゃないし、

こんなトラウマを持ってるなら、

いらぬ誤解を生みたくない。


でも、ほとんど自分の中では

確信に近い。

私は、、、工藤君のことが、、



「由紀?どうしたの?」

「え、あぁごめんね!

 少し考えてて、、」

「ちょっと聞きたいんだけど、、、」

「へ?」


疑り深くこちらを見る舞。


「もう、恋のトラウマとか

 ないような気がしてる、、、

 だって、、、、」





「さっきからさ、

 その工藤君の話をする時、

 ずっと笑顔だもん、由紀」

「え、、、」


ふと、私は自分の頬に手を当てた。


「もうなんかね、、

 恋愛とか以前に、その人に夢中みたいな

 顔してる。

 そんな顔されたら、多分誰も

 由紀に告白しないよ、、、」

「そうなのかな、、?」

「多分最初から諦めるよ、、

 あぁもう、、

 そういうことか、、

 由紀もいつのまに、、、」


そんな呆れたような顔されても、、

こっちはなにがなんだか、、


「いい由紀?これから、

 工藤君のこと話して?

 私だけじゃなくて、みんなに。

 そうすれば、もう悩まないで

 よくなるよ、、、

 間違ってもそんな由紀を見て、

 告白しようなんて思わないもん」

「、、、そんな笑顔なの私?」

「もうね、、、

 それに自覚ないだろうけど、

 工藤君のこと話してる時、かなり熱意が

 あると言うか、話が長いし、、

 よく見てるなって思った。

 多分、無意識に目で追っちゃってるよ」


そ、そうなんだ、、、

そんなに笑顔でわたし、

工藤君の話を、、

 


「完全に恋してますね、、、

 やっぱ恋したら女の子は変わる

 んだろなぁ」

「変わるって、、?」

「そりゃ、今の由紀と少し前の由紀

 全然違うもん。前は全然男子なんて

 無理みたいな感じだったけど、

 今の由紀、案外男子と楽に

 話せると思うよ?」

「え、、そうかなぁ、、?」



正直あまり自信はないけど、

工藤君や高鳥君とはかなり話せてるし、

他のサッカー部の人ともある程度普通に会話はできる。



「多分、気づかないうちに少しづつ

 トラウマというか、怖い感情が

 緩和されていったんじゃない?

 そしてその境目みたいな時に、

 工藤君に出会った。

 だから、工藤君を通じて色々男子のこと

 が分かったとかじゃない?」

「確かに、、、

 工藤君と話してから、

 少しはわかるようになった。」



分からない男子の気持ちは、ある程度

工藤君に教えられた。

知らないことは知る必要があるから。


私が疑問に思ったことは、

全部工藤君が答えてくれた。


その積み重ねがあるから、

今私は平常心を保ちながら、

いらぬ心配も抱えることなく

男子と話せるようになってるのかも知れない



「知らないことがあった前とは違って、

 今は知ってることも多い。

 だから、あまり不安を感じることも

 ないと思うよ?

 やってみよ?由紀。

 ここで勇気出してみよっ!」



「そうだね、、、うん。

 そうだ、、、!

 ここで勇気出さなきゃ、、、」



アドバイスしてくれた工藤君と舞に

顔向けできない。

しっかり解消して、、

まっさらな状態で工藤君と

改めて話したい、、





そうして私は、、

ここからやっと一歩を踏み出した。

ここからどんどん時は経っていく。



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