85話 お開き
「よし、みんなそろそろお開きに
しようか!
流石に遅くなるとまずいし」
中原さんのその提案に皆が従い、
自分たちのグラスやバラバラになった
椅子などを元に戻していく。
中原さんや中原さんのお母さんは、
こっちが直しておくと言っていたが、
クラスの全員、それは申し訳ないと
いうことで、皆で協力することになった。
明日は土曜日で休日とは言え、
高校生が夜遅くにうろついていると
補導されるだろうしな、、、
「みんな結構夜遅いけど、
どうやって帰るの?」
中原さんが皆に問いかける。
人によって違ってくるだろう。
ちなみに俺はここからまだ家まで
遠いので、通学と同じように電車を
使って帰るつもりだ。
「親が車で迎えに来てくれるから、
それに乗って帰るわ。
俺と家が近いやつ、何人か
乗ってけよ」
橋本が呼びかける。
彼の家はここからあまり距離がない
みたいだが、自分の家から近い人は
親が一緒に送ってくれるようだ。
「大二郎、お前はどうすんだ」
「、、、、、」
「大二郎?聞いてんのか?」
「ん?あぁごめん。
少し考え事してた、、、」
さっき俺が言っていたことを気にしている
のだろうか、、
コイツにとって良い影響になっていることを
祈るしかないか
「どうやって帰るんだ?」
「俺は親が迎えに来てくれる。
凌哉と家が近いから、凌哉も
一緒に送るつもり。
なんなら、一緒に乗るか?
勇人はどうすんだ?」
俺の家は、自家用車がない。
大体家から遠くても一人で帰ることが
ほとんどで、
親自体も夜遅くまで働いているので
迎え以前の問題だ。
「一人で電車に乗って帰ろうかと思ってる」
「え、、流石に危ないよ、、!
夜遅いし、、、」
大二郎と話していると、後ろから
由紀が話しかけてくる。
「私のお母さんも来るから、
家まで送るよっ!
一人じゃ流石に、、、」
「そうだよ?電車に乗るとは言え、
乗ったあとが危ないんだから、、、
勇人くんの家、結構脇道通ってくでしょ」
少し遅れて悠太もやってきた。
「暗い道だし、もしもの時を考えなよ?
佐藤さんの車が嫌なら、
僕のとこでもいいよ?
お母さんと話してみる?」
「ちょ、、ねぇ勇人くんっ!
私のとこに乗るよねっ?
私のお母さん、勇人くんと会って
話したいって言ってたよ?」
「えぇ、、、、」
正直送ってくれるだけありがたいので、
どこの家庭の人に送ってもらうかは
任せたいんだけど、、、
「俺のとこに乗ってけよ。
勇人の家から1番近いし」
大二郎が提案する。
距離で考えれば確かに大二郎に送ってもらう
のが1番近い。
凌哉もいることだし。
「はいはいお三方?
店閉めるみたいだから、とりあえず
外に行ってね?
目の前に駐車場あるから、
そこで話をしなよ?」
中原さんが仲裁に入ってくれたので、
とりあえず外に出る。
程なくして、店の照明が落ちて
中から中原さんが出てくる。
「よし、みんな!また月曜日ねっ!
今日は楽しかったよっ!」
「うんっ!私もっ!」
由紀と中原さんがハイタッチを交わす。
クラスマッチを得て、この二人はさらに
仲良くなったようだ、、
良い笑顔を浮かべている。
「さ、どうしようか、、
勇人くん的には、誰の車に乗りたい?」
「誰のって、、、
送ってくれるだけありがたいから、
そこまでは、、、、」
そう話していると、、、
「工藤さんッ!!」
「ちょ、瞬っ!? クラスの打ち上げだから
裏にいてってあれほど、、、」
店の裏、
中原さんの家の方から、
ランニング終わりと思われる瞬君が
走って来た。
「ごめんおねぇ!
ひとつだけ、、、」
そう言って俺の方を見る。
「工藤さん、、ひとつ、
頼みたいことがあるんすけど、、」
「?おう。俺にできることなら」
「一回だけでいいんです、、、!
俺と、、戦ってくださいッ!」
「なら、さっさと始めようか。
親御さんも時期に集まってくる
だろうしな」
瞬君の要望を聞き入れ、
照明のついた駐車場で彼と
向き合う。
勝負は非常にシンプル
ボールを持った瞬君が俺を抜けば
瞬君の勝ち。
奪えば俺の勝ち。
近くに公園もなさそうだったので、
急遽まだ迎えの車が来ていない
駐車場を使わせてもらうことに、、、
「ごめん工藤くん、、、
あのバカには後できっちり
言っておくから、、、」
「いいさ、直に体験してみたかったしな。
瞬君の実力を、、」
申し訳なさそうにした中原さんにそう言う。
向かいに立つ瞬君は、
準備体操をしながら集中しているみたいだ。
由紀も近くに来て話しかけてくる。
「でも、勇人くん大丈夫?
準備体操してないし、
制服のままだし、、、」
「あぁ、多分大丈夫。
わざわざ着替えるのも面倒だ、
ちょっとした食後の運動だよ」
制服のブレザーを脱ぎ、
シャツのネクタイも外して
由紀に預ける。
シャツのボタンを上から
少し外して、
長袖を捲り腕を出す。
向かいの準備体操をしている瞬君は
動きやすい格好をしており、
本気で来るだろう。
「いいんすか?体操もしなくて、、、
それでも勝てると?」
「もしそうだと言ったら、
瞬君はどうする?」
「舐められてる、、、と思いたいですけど、
実際それくらい差があるから、
反応に困りますね、、、、」
準備運動を終わらせて、
ボールを足元で転がしながら
瞬君は話す。
「分からないぞ?もしかしたら、
あっさり俺が負ける可能性だって
あるかもしれない」
「いや、絶対にそれはない。
あなたが、俺ごときに手こずるはずがない
それだけ工藤さんのディフェンスは
凄いんですから、、、」
そうしてボールを動かすのをやめて、
俺の顔を見てくる。
戦う表情、
本気の顔だ。
「でも、ただの戯れだと油断してると
痛い目見ますよ。
本気でいきます」
「全力で来なよ、
全部受け止めるから」
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