81話 尊敬
「山原中、心臓の工藤。
圧倒的なディフェンス能力で
攻めの起点をことごとく潰して回る
ディフェンダー」
「単純なサッカーのうまさもそうだけど、
目を見張るのは、小さめな体格を補って
あまりある体幹技術と、広大な視野からの
先読みの精度。」
そう説明したあと、一息つく中原さん。
「さっき言った、私の弟の瞬が工藤くんの
ことを熱弁しててね、、
もう長いのなんの、、、」
やれやれといったふうに首を横に振る。
そのあと、俺の顔を見て中原さんは言う
「瞬の試合を見に行った時にね、、
一回だけだけど見たんだっ、
工藤くんのことをさ。
まあ、つい最近までは
気づかなかったけどね」
「え、弟の瞬君ってさ、
どこの学校?
俺と地元が違うし、試合する機会なんて
無さそうだけど、、、」
地元が同じならありそうだけど、
中原さんは陽千校あたりの場所に
住んでいる。
今打ち上げをしているカフェだって、
陽千校から徒歩20分くらいの場所だ。
「多分工藤くんも知ってるよ。
陽刻中、陽千高にも、
出身者が多いところだよ」
「陽刻中?木村とか、渡辺とかの
出身校か、、?」
「そう、私もそこの出身だし、
私の弟も今そこに通ってる。」
どうやら暘刻中の出身らしい。
だが、あいにく思い出せない、、
練習試合とかしたっけ、、、
「いつくらいなんだ?
試合したのって、、」
「一年前の、5月くらいかな、、?
私と工藤くんが中3の時だよ、
私の弟が中一になったばかりくらい」
ということは、、
地元の市総体の少し前くらい、、か。
「最後の調整って、、
あの時顧問が言ってたっけ、、、」
市総体が始まる少し前、
たしか、、ひとつ練習試合が組まれていた。
市総体前だし、地元から結構遠かったこと
もあって、全然名前とかは気にしてなかった
それが、ここら辺の陽刻中だったと、、
「なるほどなぁ、、」
ドタドタ、、、、、、
「母さぁん、、、
ちょっと気分転換に
ランニングに行こうかと、、、、」
「あ、ちょっと瞬っ!
こっちは今、日菜のクラスの人たちが
来てるって言ったでしょ!」
話していると、裏の方から男の子が
出て来た。
活発そうな見た目の少年で、
動きやすそうな格好をしている。
「え、そうだっけ、、
まぁ別にいいでしょ、、
それより、少し走りに行こうかと
思うんだけど、、、」
その少年はそう言いながら
俺たちの方を見る。
「なんか、楽しそうだね、、
高校生と思えない、、、くら、い、、」
その少年がこちらを見る。
姉である中原さんが俺の隣にいるから
だろうか、、
ものすごいこちらを凝視している。
だが、驚いたような顔をして、
こちらに向かってくる。
「え、おねぇ、、、
その隣にいる人って、、」
「あ、そうだっ、、瞬。
みんなに一応挨拶して!
工藤くん、この子が私の弟の
中原瞬だよ?」
この子がそうなのか。
走りに行くとか言ってたし、
体力作りをしてるわけだな。
うん、えらいぞ瞬君よ
「工藤、、、!?
え、工藤って、あのッ!?」
「うん、俺の名前は工藤勇人。
よろしくな、瞬君」
そう言って握手を求める。
「マジかよッッ!?」
「おおっと、、」
俺の手を掴んだと思ったら、
両手で俺の手を包んで縦にブンブンと振る
痛いんだけど、、、
「なんでこんなとこに
いるんすかッ!?」
「え、中原さ、、、
いや、君のお姉さんの、
日菜さん主催の打ち上げ的な感じの
催しで今ここにいるんだけど、、、」
「え、じゃあ、おねぇと同じ学校
なんすか!!」
「お、おう、、
そうそう、、、」
ものっすごいテンションが高いなこの子、、
さっきから目がキラキラしてるけど、、、
「まじかよ、、、!
俺陽千高行こうかなぁ、、、!」
「はいはい、、話が飛躍しすぎっ!
ごめんね工藤くん。
ちょっと気分があがっちゃったみたい。」
中原さんが俺から瞬君を
ひっぺはがす
「なぁおねぇ!工藤さんがいるなら
速く言ってよっ!」
「そんなことしたら、工藤くんに迷惑が
かかるでしょ、、
はい、今は私たちの時間だから、
ランニングに行った行った、、!」
そう言って中原さんが瞬君の背中を
押して裏の方に連れて行く。
そこに中原さんのお母さんも加わる。
「ちょ、待ってよ!
まだ話したいんだけどっ!」
「他のクラスの人もいるんだから、
今は良しなさい、、、
はい、いってらっしゃい」
そうして裏の方に中原家は
入って行った。
「人気者だね?勇人くん!
一方的に慕われてるじゃんっ」
「ほんとにな、、、
今日初めて話したんだけど、、」
「瞬もいたんだな」
由紀と話していたら、
橋本君が近くに来た
「そういや、橋本君も
陽刻出身だっけ?」
「そ。アイツは後輩だ。
というか、君付けやんなくて
いいぜ?なんかむずむずするからよ、、」
「ああ、そりゃごめん、」
確かにあれだけ練習とかした仲では
あるしなぁ
「で、どんな子なんだ?
実力も気になるけど、、」
「良くも悪くも、真っ直ぐなやつだな。
ストイックと言えば聞こえはいいが、
なんというか、頭が少々、、、」
「なるほど、、、、」
うん、ある程度はわかった。
さっきのテンションもみたことだしな。
破天荒というか、なんというか、、、
第一印象はそんなかんじだ
「でも、あんだけテンション高いのは
今までで見たことないぜ?」
「そうなのか?」
「おう、まぁ、工藤に対して尊敬の心を
持ってたからな、アイツ」
「なら、橋本君も勇人くんを
しってるんじゃないの?」
疑問を持った由紀が橋本に問いかける
瞬君が俺を知っているので、
同じ学校だった橋本も俺を知っている
可能性があるのではないかと
「YES、知ってたよ。
一目見た時にな」
「なんだよ、なんで黙ってたんだ?
言ってくれれば良かったのに、、」
「言ったところで、工藤は俺のことなんか
覚えてないだろ?」
「・・・・・」
はい、正直全く、、、
「ほらな?まったく、、、
泣けてくるぜ、、、」
「、、、、なんかすまん」
「いいさ、あん時くらいは、
俺もそこまで本気でサッカーしてた
わけじゃないし、、、」
あの時は、、か。
「でも、昨日はあれだけ本気で、
いいプレイしてたじゃん。
なんかきっかけでもあったのか?」
「この流れでわかんねぇのか、、、」
「勇人くんの鈍チンが発動した、」
「は?」
鈍チンとか言われても、
なんもわかんないんだけど、、
「まぁ良いわ、サッカー部入るんだよな。
改めてこれからよろしくな工藤。
近いうちに超えるつもりだから、
そこんとこよろ」
「せいぜい期待して待ってるよ、
モノマネ芸人?」
「はっ、言ってろ、」
そういってハイタッチを強く交わした。
「男の勝負ってやつだね?
なら私は近くでそれを見守ることに
しようかな。」
「もう誰にも負ける気はしないね、
工藤や千葉にもな。
そんくらいの心持ちじゃなきゃ、
あそこじゃやっていけねぇからな」
気合いを入れる橋本。
彼のプレースタイルは結構珍しいものだし、
極めれば唯一無二の武器になりそうだ。
「ファンがいっぱいだねぇ勇人くん。
この天然人たらしぃ〜〜。
うりうり〜〜」
「くすぐったいんですけど、、」
目の前で工藤にちょっかいをかけて
イチャコラする佐藤
工藤の胸に肘をぐりぐりさせている。
工藤に対してだけ距離が異様に近い
(いや佐藤よぉ、、、
お前自覚ないのか、、、?
お前が1番工藤のファンだろ、、、)
そんなことを思いながら、
内心で呆れる橋本だった。
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