78話 戦慄
「なんだあれ、、、」
(いや、、
おかしいって、、、)
宮本は改めて周りを見た
ゴールに入ったボール
オーバーヘッドをしたあと背中から
倒れた工藤
他の生徒の歓声、どよめき、
驚き、畏怖
(オーバーヘッド以前から、
明らかに違っていた、、、)
今のゴールまでの一連の流れ、
右サイドを使った攻撃からの工藤が
フィニッシュまでの流れ、
(それぞれの場所で、アイツらは
パス交換してた、、、
初心者のくせして、動きが最初と
明らかに違っていた)
ボールをもらうまでのマークを外す動き
ボールを受け取った後の組み立て、判断。
工藤のプレーを皆が
参考に、それぞれが個人で吸収して
工藤に繋がった。
工藤が魅せていたプレー。
それが個々人たちの技術やメンタルに
影響を与えて、熱が生まれる。
いつのまにか熱中していた自分を振り返る。
勝ちたいと自然に思ってしまった。
相手が初心者ばかりの
急造チームであっても。
そう思わずにはいられなかった。
そして何より、、
「あれを、、、
全部先読みしてたってのか、、、?」
彼らがそれぞれの場所での勝負に勝ち、
自分にラストパスが来ることまで、、、
そしてそこから、
あの三人が止めに来ることまで、、、
彼らが自分の力と熱に感化され、
技術が向上し最後に勝つところまで、、、
「なんだ、、、、
なんなんだ、、アイツは、、!?」
1組の生徒が、
工藤のもとに集まっていく。
工藤に抱きついてみんな喜びをあげている。
「アアアアアッッッッ!!!!」
「っっっ千葉!?」
うずくまって叫び声を上げた千葉
拳を地面に強く撃ちつけた。
「あと、、、一歩だったッッ、、!!」
(俺が止めていればッ、、
カウンターで勝てたかも知れないのにッ!
クソッッッ、、、!!)
目の前の光景に全部意識が誘われた。
野球部のやつがシュートの体勢に入って、
咄嗟に体が前に行った。
あの時、、俺の隣には夜羊もいた、、!
あの時一旦落ち着いて、後ろから
夜羊のカバーに入っていれば、、、!
工藤から目を離さなければッッ!!
「クソがッッ、、、、、」
オーバーヘッドシュート
言葉で言えばそれだけ、、
だが、それを成功させるまでの努力と、
あの時咄嗟にそれを実行し、
成功させた判断力と実行力
自然な流れでボールをふわっと
浮かせたあと、シュートを打った。
(圧倒的な身体技術が必要で、
確実にボールに足をぶつける為の集中力。
右でアイツは打ったから、
左足を先に上げて推進力を貯める、、
いざ打つときに左足を下げることで、
その反動で威力を上げてたわけだ、、)
あの時、、
本当のラストパスに唯一反応した高鳥も、
俺も、夜羊も、、
他の連中も、、、
みんなが足を止めてしまった。
高く舞い上がっていく工藤の身体、
綺麗なオーバーヘッドフォーム。
無駄がなく、余計な力感もなくて、、
あくまでリラックスしながら、
あれだけのことを平然としやがった、、、
綺麗で、、、
完成されたラストプレーに全てが奪われた
「全部、、、
読み切って、、、
クソ、、、、クソッッ!!」
技術でも、読み合いでも、、、
最後の最後で全部持っていきやがった、、、
仲間の力をフルに出し切り、
それを全力で活用して勝つ、、、
工藤の本質の部分、、、
全員がフルに力を出し切るとこまで
読んだ上で、、
あのオーバーヘッド
「どんだけ、、、遠いんだよッ、、、!!」
勝てると思っていた、、
今度こそって、、、
自分自身明らかに動きが洗練されていた。
夜羊も、、、
なのに、、、それを超えて来やがった
「バケモンが、、、、」
「はは、、、、それな、、」
近くにいた夜羊と工藤の方を見る。
観客だった1組のやつまで降りて来て、、
工藤を囲んでいる。
「大丈夫かお前、、、」
「??なにが、、?」
「いや、俺もお前も、、
完全に出し抜かれたろ、、」
てっきり落ち込みでもしているのかと
思った。コイツ自身、、
完全に負けたことはないと言っていたし、、
こいつは選抜とかにいたレベルのやつで、、
だからこその敗北の経験なんざ
ほとんどないだろうから
「なんか、、、案外スッキリしてる、、、
確かに悔しいよ、、、
でもそれ以上に、、
もっとサッカー極めたくなった、、」
清々しい顔をしながら工藤を方を見る夜羊
「井の中の蛙大海を知らず、、、
あんな奴がまだいたなんてなぁ、、、」
そう夜羊が言ったタイミングで、
先生の声が聞こえて、
俺たちは中央に並んでいく。
俺にとっても、初めてのことが多かった。
この経験を活かして、、
次こそは勝ってやる、、、
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