76話 終幕
(すっげ、、、
なんだこの感覚、、、)
研ぎ澄まされていく感覚
足元にあるボールすら手足のように
操れると確信するほどの集中。
絶対の自信
周りの流れがゆっくりと流れていくような、
自分が速くなったような、、
どちらだろうか、、、
いや、そんなのはどうでもいいか、、、
「この感覚は、、、」
自分に向かって来た1組の生徒
伸びてくる足も、相手の重心移動も全て
先読みできる。
最短の動きで敵を躱わす
(考えなくても全部分かる、、、
ほら、、、そっから)
後ろから迫って来た二人の生徒を
最短で、それでいて自然に、
流れるように避ける。
その後、一気に近づき二人を躱わす。
より繊細に、より高速に、
一瞬のうちに思いついた動きを
片っ端から実践していく。
そしてそれは全て思い通りになる。
初めての感覚、、
このフィールド全てが自分の支配下に
あるような、、そんな感じ。
「やばいやばいやばい、、!
行かせるなッ!」
そんな焦り混じりの叫び声が
後ろから聞こえる。
早めに攻め上がっていたつもりだが、
やはりボールを持っている人間と
ボールを持っていない人間じゃ、
速さの違いはあるか、
「関係ないわ、、、」
どれだけ来ようが全部躱せばいい。
牧田だろうが橋本だろうが、
工藤だろうが、全部今なら壊せる
前から来た生徒に対して
足元でのボールタッチ技術ではなく、
速さで仕掛ける。足裏を使いながら
左に行くと見せかけすぐさま右に。
さっき実践したばかりだが、
もう使いこなせている。
速さ重視のチェンジオブダイレクション
急激にドリブル方向を変えて予測とは
違う動きをする。
予測されにくい動き方なので
今の状況では効果的だ。
今までの自分の細かいボールタッチを駆使
した後出しトリックではない。
身体能力を使いながら体全てを使った
最短での突破。
それによりますます効果がある。
ギャップというやつか、
(この感覚は、、、無敵、、!)
なんでもできる!
全てを壊せ、、
誰にも描けないようなものを描け。
「はぁ、、、はぁ、、、!」
「お、、、橋本、」
全速力で戻って来た橋本が
目の前に立ち塞がる。
息切れを起こして焦ったような表情。
「潰す、、!!」
突進プレス。
その体をルーレットで躱そうとしたら、
腕を使って進行方向を阻止される
その腕を振り払い、そこから距離を一気に
詰める。
右足に持っていたボールを左足の
後ろに回し、そこから前に右足の
内側を使い前に弾く。
足元をクロスさせて前に送る。
そのボールは橋本の股を綺麗に通す。
股抜きクラスエラシコ
今思いついた、、
「いや意味わかんねえ!?」
「フゥ、、、」
驚く橋本を横目に加速する。
キーパー含め残り二人。
絶対決めるッ!
「俺が止める、、、」
戻ってきた牧田大二郎。
それを越えれば完全勝利、、!
「殺す、、、」
「すっげえ殺気、、、
でもお前じゃいつまでたっても
ここには来れなそうだね、、
牧田?」
(るせぇよクソ野郎、、、
知ったような口聞いてんじゃねぇ、、
テメェに何が分かる、、、)
「所詮工藤の腰巾着なんだよお前は、、
さっきのを俺に止められた時点で、
いや、最初の初見殺しを決めきれなかった
時点で、お前は俺たちのレベルまで
くることはできない」
(そんな言葉にゃもう騙されねぇ、、、
変わるんだよ俺は、、ここでッ!
今ここでテメェを殺してッ!)
「絶望でもしてろ、、、
俺たちとお前の差にッ!」
近づく夜羊
シザースを使った超高速のフェイント。
そこから右と思わせ左に
「小細工しか脳がねぇクソが、、
小手先の曲芸しかねぇんだろ、、、」
(こちとらもう目が慣れてんだよ、、、)
足元での技術に織り交ぜ
一気に加速していたさっきのプレー。
そのドリブル対策として
体と頭は常に準備している。
「夜羊ッ!!」
「止めるッッ」
(千葉と、、悠太!?)
フォローしに来た千葉と、
夜羊を止める為全速力で戻って来た悠太
(悠太と二人で、、!)
「はっ、、!!」
「な、、!?」
千葉の方は見向きもせずにこちらを見る夜羊
そこから再び近づいてドリブル姿勢に入る。
(千葉のフォローを無視しやがった、、
一人で全部壊すつもりかよッ!)
させるか、、、!!
「悠太ッ!」
「うんッ!」
戻ってきた悠太と自分での
ダブルプレス。
完全に挟んだ、、
ここでコイツを、、
「暑苦しいんだよなぁ、、、!
どいつもこいつも、、!」
(シザースフェイクの後に、、
浮かせた、、?)
そこからボールに足が添えられる。
(シュートモーション?
無理やり打つ気かよ、、!)
「全部一人で解決できんだよ、、
今の俺ならなぁッッ!!」
そこから、
シュートではなく、地面に強くボールを
打ちつけた。
打ち付けられたボールが牧田の頭上を
越していく。
面食らった牧田が叫ぶ
「なんじゃそりゃ、、!?」
(完璧!!
後ろのやつももう追いつけない。
あとはキーパーだけ、、!)
「出ろキーパー!!
先に触れ、、!止めろおおッ!!」
前に出て来たキーパーより先にさわれば、
俺の勝ちッ、、、
浮いたボールに対して、足を限界まで
伸ばす。
そうして、つま先がボールを押し出した。
キーパーとミリ単位の差で、
先に触れた。
(これがッッ、、
俺の、、超覚醒ッッ!!)
あえ、、、、??
視界の先、
ゴールに走り込んでいる一つの影。
その後ろ姿。
バァァァンッッ!!!
入るはずだったボールが外れ、
代わりに一人の少年の体がネットを揺らす。
ふわっとしたボールをそのままダイレクトで
ギリギリクリアされ、
ボールは中央に飛んでいく。
顔が土で汚れた少年。
今ここで最も警戒すべき人物、、
工藤勇人
「クソ自分勝手だな、、!
少しは落ち着こうや、、、
ジーニアス、、?」
終焉の幕はまだ降りない。
「神がかってんぜ、、、
俺らのリーダーは、、!」
「さっすが、、、!」
「あったりまえだこの野郎、、
こんなとこで負けねぇよ俺は、、!」
残された時間はあとわずか、、
「俺らが終わらせんぞ、、、!
最後の幕は俺らで下ろす、、
全員、、最後の力を振り絞る準備と、
喜ぶ準備でもしてろ、、」
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