75話 天才
「アイツ、、、
いつのまに戻って来てたのかよッ!?」
「あれ決まんないのッ!?」
(なんで夜羊が、、、!?
ゴール前まで戻って、、、)
「チッ!!」
牧田が夜羊に向かって走る
(クリアさせてたまるかよ、、
蹴らせねぇッ!
俺がここで奪えばチャンスッ!)
ゴール前にいる夜羊。そこに
全速力で近づき、右足を伸ばす。
ここで奪えばそのままゴールを
目指して蹴れる!
「夜羊!クリアしろッ!」
「こっち寄越せッ!」
千葉や高鳥が動いてパスコースを作る。
それに対して、、
「は、、!?」
「邪魔、、、!」
動いてサポートをする周りを囮に
牧田大二郎を抜き去った。
伸ばされた足を躱した後、
ヒールリフトで、
「ゴール前でリフト!?」
どう考えても正気じゃない、、
ゴール前でそんなことをしていれば
リスクが計り知れない。
もし奪われでもしたら、そのまま点を
決められてしまうからだ。
「テメェ、、、!?」
「今がチャンスッ!!」
ボールを持った夜羊に対して1組の生徒が
ゴール前に迫ってくる。
人数をかけて一斉に集まってくる。
「だから邪魔だって、、、、」
集まって来た1組の生徒を
次々と躱していく。
ダブルタッチ、ルーレット、
足裏でのコントロール。
両足の外側と内側を即座に入れ替えながら
変則突破していく。
「くっ、、!?」
「うっそぉ!?」
(うっま、、、、)
その進行方向に工藤が割り込む。
細かいタッチで左右の足を切り替えながら
右へ左へ体を移動させる。
受動型、、
こちらに先手を誘発させて後から
凄まじいボールタッチで抜くスタイル。
ボールを取ろうとした他の1組の生徒が
次々抜かれたのは、、
ボールを奪おうと躍起になり、
その焦りの感情を利用されたと
いったところか、、、
それに、、
「随分顔付きが変わってんなぁおい、、」
さっきまでと違う。
常に相手を見下すような、そんな顔がなく、
ただ勝つことだけを考えている。
「千葉あたりの熱にでも当てられた?」
「見てるだけじゃ我慢ならなかったのよ、、
あれだけぶつかり合って、
潰し合ってるの見たら、いやでも熱く
なるでしょ、、、」
夜羊が仕掛ける。
右足の外側を使って右に行くと見せかけ、
逆方向へ。
それにはもちろん反応してくる工藤、
それに対してリフトで上を狙うも、
後ろにいつでもバックステップができるように半身での構えで対策されている。
「いつだって冷静だね工藤、、、
指揮官タイプの千葉が目を付けんのも
わかるわ、、、」
一人で次々抜かしていく夜羊に対して
無理にボールを取りに行かずに
コースを切る動きを中心にする。
抜かれることが最悪と把握している。
常に相手の前に立ち、邪魔をしてくる。
(時間かかれば、他のやつもどんどん戻る。
パスコース待つか?いや、1番使える
千葉は橋本がマークしてる。
高鳥はまだ後ろ、、、
待ってたら他のやつが来て挟まれる)
他の選択肢は無しか、、!
「いっちょ超えてみますか!」
「来いッ!」
直感、即興で作り騙す!
(右足の内側でコントロール、、)
そっから、、、
右に加速、、!
着いてくる、、!
「まじやばいね反射体幹、、」
夜羊が左足でボールを少し浮かし、
キックモーションに入る
(モーションにはいった、、?
パスか、、、?)
いや、他はそれぞれがパスコースを
塞いでいる。
周だってまだ後ろ、
パスコースを待てば他が追いついてきて
本末転倒、、
(フェイクだろ、、!)
それをいなして逆か上か下か、、、
どこから来る!?
「クソ、、、
喰いつかないか、、!」
「俺がここで止めてやるよ、、
クソ天才、、、」
(根本的に変えなきゃダメか、、、
やったことないギャンブルだけど、
今ここでやんなきゃこいつは抜けない!)
今までの考えとプレーは一度捨てろ、、
ここで実現しろ、、
真逆の力を
「フゥ、、、」
集中しろ、、!
さあ、行こう
「、、、!?」
(タッチの感覚がさっきと違う、、?
ボールは動かし続けてるけど、
足元というより体全体での
プレー、、、)
足元での細かいタッチではなく、
体を使いながら相手を揺さぶる、、
動き方がさっきより大きく、
重心が自在に左右に揺れる。
そこからくる、
トップスピード、、!
「うおっ、、!?」
細かいタッチでの相手を煽るような
プレーではない。
足元の技術ではなく、どちらかと言えば
身体能力に物を言わせる戦い方。
逆にスピードで突破しようとした
夜羊に対して体を入れ込もうとする工藤。
その腕を払いのけ、
一旦スピードダウン
(フィジカルとスピードに任せた強引な
ドリブル。
それでいてタッチミスがない
安定的なボール運び、、、)
そこからすぐさま右足で左にボールを弾き、
そのまま右足の外側で前進方向に
ボールを弾く。
(ボールの動く幅が広い、、、!
一瞬の隙を見せれば速さで
抜かれて終わる、、!
安直に足を伸ばすな、、)
(速さを落とさない動き方と、
完璧なタイミングでの弾きから
作り出されるジグザグドリブル、、
まじかよ、、そんな動きできんのか、、
この天才ッ!)
なら、
身体をぶつけ、夜羊の体が
動かないようにする。
いくら足でボールを運べても自分自身が
動けないんじゃどうにもならない。
離れようとする夜羊に対して足ではなく
体を使い常に近い距離に接近し続ける。
狙うはボールが離れた瞬間、、
そこを、、、
その瞬間、、ふいに夜羊が踵で
後ろにボールが戻した。
「な、、、」
ボールを後ろに戻した夜羊が自由に
動き回り、面食らった工藤の隙を
ついて前に体を運んだ。
そこからスピードを上げて前に加速する
「いい判断、、、
あとよく気付いた、!」
「千葉、、、!」
夜羊の後ろにいつのまにか来ていた
千葉にボールが渡る。
そこからロングパスの体勢に入る
工藤の裏抜けを狙ったパス、
(やられた、、いやッ!!)
まだ間に合うッ!!
蹴り出そうとする千葉に対して全速力で
近づき、足を伸ばす。
夜羊に
パスを出させなければまだ止められる!
「ギリギリ、、、」
「いくぜッ!」
繰り出される指揮者の勝敗を分けるパス。
それは、、
キックフェイク
伸ばされた足を躱わす動き
「フェイントだろッッ!」
それすらも読み切った工藤が
千葉の足の前に体を滑り込ませる。
パスコースが塞がれ、不発に終わる
「誰がアイツへのパスっつった?」
工藤が塞いだコースではない。
千葉が横にノールックパスを出す。
「やれ、、!」
「了解ッ!」
追いついた高鳥周がパスを受け取り
前に蹴り出した。
夜羊の方に、、
「三人寄れば文殊の知恵だっけ、?
知恵じゃなくて力だけどさ、、
今のこの場合はッ!」
一瞬の隙。
工藤も目の前の天才に目を向けすぎて
他まで気が付かなかった。
工藤の注意を釘付けにした天才と
他二人の一瞬のトライアングル。
3人がかりで完全に工藤を騙し切り、
抜き去った、
工藤が後ろに戻れない現状でのカウンター
他の少ない人数で夜羊を
止めなければいけない。
「さぁ終わらせろ天才、、、
終幕の準備はやり切ってやった。
早く決めてこい、、」
「YES、My master」
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