74話 脇役
「行くぜカウンター、、、」
工藤の合図で1組が雪崩れ込む。
より具体的になった彼らの戦い方と
工藤のパフォーマンス。
一切の油断も許されない。
(読み切れ、、!
針の穴ひとつ、狂いなくッ!
未来を見るほどの正確な予測を立てろッ!
全員の動きを予見するんだ、、!)
千葉洋介は工藤を中心とした周りの動きを
注視する。
工藤から牧田に、
牧田から上がって来た橋本へ横パス。
そこから斜めに走り込んだ工藤に
再びボールが戻る。
トライアングル、、
1組のサッカー部である主力の三人。
その三人での連携。
(結局どっかで工藤がフィニッシュ
なんだろ、、?
ギアチェンジしてどっかで工藤が
中に侵入してくるはず、、!)
トライアングルでのパス交換をどこかの
タイミングで崩し、そこで工藤が、、
パス回しに注視した千葉が周りを見た。
そこには、さっきまでとは比べ物にならない
ほどの数で人数がいた。
「は、、!?」
(人数が多すぎる、、、
工藤がフィニッシュじゃなくて他?
いや、無理だろ、、)
ただでさえ経験者の3人でパス回しを
しているんだ。
ゴール前での正確で完璧なタイミングでの
侵入ができるやつなんているはずがない。
(なら囮か、、?
これだけいれば、、、、)
確かに囮としては機能する。
ほぼ全員での攻撃。
前線に人数をかけたパワープレイ。
そのインパクトのある戦略の影をつく。
工藤がふいにトライアングルから抜け、
前線に走り込む。
そこからゴール前の小さいスペースで
パスを待つ。
(来た、、!やっぱ他はデコイ!
本命は工藤!)
牧田から鋭く、地を這うような低い
弾道のパスが出される。
工藤の後ろから体をぶつけ、
振り向かせないようにする
「打たせねぇよ、、、」
密着して工藤を振り向かせない。
体を反転させてからのシュートができず、
これではパスしか選択肢がない。
「死ねや工藤、、、」
こいつさえ封じれば、、
「封じた気にでもなったか?
クソ指揮者」
キープしている工藤。
挟みに来た4組の生徒が来る前に、
工藤が動いた。
持っていたボールを足で浮かし、
頭の高さくらいにボールが浮くと、
そこから後ろに向かって足を
フリックする。
踵で後ろに向かってボールを蹴った。
「っそだろッ!?」
意表をつかれた千葉。
ペナルティエリアの中にいった
ボールに対して、
「行け、、」
「俺がぁッ!」
全速力で走り込んできた牧田大二郎。
工藤が無理やりにでもパスを出すと信じて、
タイミングを測りながら
中央に入って来た。
ふわっとしたボールをそのままダイレクトで
ゴールに、、、
「待てクソ野郎、、」
「う、、!?」
体を横からぶつけられ、
体制が少し崩れる。
前に足を置かれたことでダイレクトで
シュートが打てない。
「テメェは俺が見てんだよ、、、
クソ木偶の坊、、!」
(高鳥、、!?クソ、、
これじゃシュートが、、!)
「大二郎ッ!」
「・・・っ、凌哉!?」
工藤の代わりに最前線まで
入り込んできた凌哉。
「俺に出せッ!」
「く、、、オラァッッ!!」
「くそッ!」
高鳥のプレスを受けながらも
右の方に来た凌哉にかろうじてパスを出す。
「決めろ、、!」
「行くぞ、、!」
(経験者じゃなくても、、
俺がここで決めて英雄に、、!)
「脇役が、、、、!!」
「え、、!?」
凌哉の後ろから声がする。
振り向くまもなく、足元に来るはず
だったボールが弾かれた。
「こんなんで勝てると思うな、、!
クソ野郎共がぁ、、!」
「ナイス宮本、、!!」
俊足を使った決死のディフェンス。
弾かれたボールがサイドに回る。
そのボールを誰よりも早く反応して
キャッチした男
(敵陣は崩れた、、、、)
佐伯は考える。
自分の得意な俊足は広大なスペースがあって
初めて活きる。
だが今の状況は、そんなスペースはない。
細々したスペースが少しあるだけ、、、
(工藤くんにはそのまま千葉君が
マンマークについてる、、、
工藤くんへの安直なパスはダメ、、、
なら、)
近くに来た鹿島悠太と目配せをする。
(悠太君と二人で、、、!)
「そんだけじゃ足らねぇだろ、、、」
「橋本君!」
「俺も使えや、、
今なら工藤抜きでもやれんぞ、、!」
工藤のパスワークを参考に、
橋本が頭の中で考える。
鹿島悠太と佐伯実のスピード。
それをフルに活かす。
そのためのサポートに徹する。
「よし、行くぞッ!」
「「おうッ!!」」
二つのタイプの異なる速さ。
小回りのきく鹿島がボール保持者の周りを
常に動き回り、
ボール保持者がいつでも前を向けるような
距離感でパスを交換。
時には相手の意表をついて
裏抜けを狙う。
(ここでひっぱり出せば、、、!)
ひっぱり出された4組の生徒を、
佐伯と橋本がワンツーで抜き去る。
そこから広がる選択肢。
近いてきた鹿島、、
だが後ろにはひとりディフェンダーが
くっついて来ている。
このまま出せばボールを取られるだろう。
初心者がボールキープはできないから、
だから、、
「そこッ!」
それを囮に別の人へ。
三人でのトライアングル。
そこからタイミング良く空いたスペースに
走り込んできた人に、、
そう、工藤だ、、
あいつなら先を見て、いつだってゴールを
狙う。
「ナイストライアングル、、」
「行かせねえ、!
視えてんだよッ!」
「視えてるだけだろ?」
「なっ!?」
(俺に体ぶつけられてんのに、、
そっからジャンプしてヘディング!?
どんな体幹してんだよッ!?)
マンマークをしていた千葉の意表をつき、
中央にボールを落とす。
そこには、、
「おら行けッッ!!」
牧田大二郎がその落されたボールを
そのままダイレクトで
ゴールの方へ蹴った。
擦り上げるような蹴り方、、、、!
強烈な回転がかかったボール、、
「アウト回転!?」
右足でのアウトスピンをかけたシュート。
回転がかかり、
ゴールの中央に行くと見えたシュートが
外に逃げるように右に曲がる。
「ヤベっ!!」
(行ける、、!千葉は勇人の近くで
間に合わない、、キーパーの
意表をついた俺の、、!)
一発限りの騙し討ちッッ!
バァァンッッ!!!
「あ、、、!?」
「テメェ!?」
ゴールの右上を捉えるはずだった。
そこに夜羊がいなければ、、
「テメェ!?どっから、、、」
「痛ってぇぇ、、、」
前線に待機し、カウンターに備えて
いたはず、、、
キーパーが届かない場所への
一か八かのギャンブル。
入るはずだったシュートを顔面で
受け止めた夜羊。
「ボルテージ上がってんのはあんたらだけ
じゃないんだよ、、、
お兄さんら、、!」
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