68話 怪物退治
1組のスローインから試合が再会された。
ゆっくりと、時間をかけながら
注意深く攻めていく1組。
「工藤止めろッ!」
警戒度は最大に上がった、、、
彼の自由を奪わなければあっという間に
持っていかれる
自由に動き回り敵を撹乱し続ける工藤に
対して、千葉は一つ対策を考案する。
「高鳥、工藤のマンマークにつけ。
元々そこにいるやつと挟んで、
アイツにボールが行かないようにしろ」
「了解、、!」
もちろん、これは付け焼き刃でしかない。
だが、昔から工藤の近くで動きを見ていた
高鳥と、元々ポジション的に近くにいる
もう一人との挟み撃ち。
マークを振り切るのにも体力を使う。
振り切る相手が高鳥ということもあり、
ある程度これで止めれるか、、
1組がパスを繋いで左サイドから
攻めてくる。
だが、工藤をある程度封じていることで
パスコースの数自体はかなり少ない。
ので、、、
「ここだッ!」
先読みができる。
パスカットをした4組の生徒が、
前にロングパスを出す。
「がってんだい!」
パスを受け取った夜羊が、今度は右の
方に侵入してくる。
1組の生徒が止めに入るが、
軽々と次々躱される、
「くっっ!」
「サクサク前へ、
カウンターNow、、」
そこに立ち塞がる一人の生徒。
「マッチアップおーけー?」
「よっ!橋本っち、、」
(橋本が相手ね、、、)
カウンターとは言え、1番使いやすい
千葉や高鳥はまだ後ろ。
一人での正面突破が最善、、!
「お手柔らかに、、、」
「やだね、、潰すよ」
左右に高速でボール動かす。
(やっぱクソ速えな、、
ダブルタッチフェイント、、)
一瞬でも気を抜けば、
このドリブラーはそこをついてくる。
集中しろ、、!
そこから前に距離を詰めてくる。
(フェイントからトップスピード、、!?)
無理矢理時間かけずに突破か、、?
ならどこまでも着いていって、、、
「残念もう遅い」
「うっ!?」
横にパスを出した夜羊。
ドリブルで抜かれないために、
彼の足元に集中してしまっていた橋本。
近づいてくるもう一人に
気づかなかった。
(パス、、?いや、ワンツー!?)
あっという間に効率よく抜かれた、、、
「足元だけ見ちゃダメでしょ?」
「ならお前も前ちゃんと見ろやッ!」
「見てますけどねっ!
木偶の坊君っ」
牧田が夜羊の前全速力で戻ってくる。
「走らされてるねぇ、、
体力自慢のつもり、?」
「そんなつもりねぇよ、、!
いつまでも見下してんじゃねぇぞッ!」
牧田が夜羊迫っていく。
その迫力、、
体ごとぶつけるような動きのディフェンス。
(コイツ、、、こんな
死ぬ気で守るタイプだったか、、?)
夜羊にとって、牧田大二郎のイメージは、
やはり攻めの印象が強い。
元々体格があることで、その強さは
ゴール前の競り合いで発揮される。
その代わりにディフェンスはお世辞にも
うまいとは言えないレベルだった。
「少しはマシになったとっ?」
「無駄口叩く余裕あんのかよ!
クソ天才がぁ!」
「うおっと、、!」
一旦距離を取ろうにもすぐ
距離を詰めてくる。
「いい気になんなよ。
所詮木偶の坊だろッ!」
タッチのキレ、体の動きが洗練されていく。
夜羊にとって、
牧田大二郎は当たり前に抜ける相手。
(タッチ細けぇ、、!
速えぇ、、!右、、!?)
「くっ!?」
「どこまでついてこれるかな?」
(いや、左!?)
フェイントを織り込ませた上で
牧田の体を片方に傾けようとする夜羊
それをギリギリで踏ん張り、
どこまでもついていく。
(体だけは前に行かせるな、、!
進行方向を常に潰せ!
狭い方に誘導しろっ!)
「邪魔くせッ、、、」
細かいロールを繰り返しながら
戦う夜羊が、
不意に動きを止める。
(パスだろッ!!)
「こっちだ夜羊!」
予想通りッッ!
「NO」
(は、、!?)
距離を詰めた牧田の体は、
パスコースを塞ぐような位置。
そことは逆。
ラインギリギリの方に
突破した夜羊
細かいタッチのさっきとは違い、
狭い方に強引に突破。
技術ではなく身体能力での
ドリブルに切り替えた。
「クソッ!!」
「ほいよッ!」
アドリブでのドリブル技術の切り替え、
それが決め手になった。
牧田を抜いた夜羊が中央に鋭いパスを
出した。
「クソっ!止めろ!」
それを受けた4組の生徒が
ドリブルで突破していく。
「高鳥ッ!」
高鳥周に対してパスが出される。
「任せろッ!」
「行かせねぇぇよッ!」
(、、!?
勇人、、、!!)
高鳥の前に来て体を寄せる。
体幹が強い工藤が高鳥に競り勝った
クソっ、、、
また勇人に、、!
「どけッ、、、!」
「なっ!?」
体を張られて奪われた瞬間。
奪われたボールを瞬時に
奪い返した男。
「テメェならここだと思ったぜ!」
「チッ、、!
クソ指揮者が、、、!」
千葉洋介は読んでいた。
工藤の読みはゴールを狙う獲物を狩ること
に特化している。
そして、その獲物になるのは、
サッカー部でエース級の活躍をしている
高鳥周が標的になる。
高鳥が競り合うことで、
工藤にもわずかな意識の隙が生まれる。
「怪物退治だ、、、
どんな手を使ってでも潰す!」
味方ですら利用対象、
全ては、この怪物に勝つためにッ!
「さぁ、決めるぞッ!」
動き始める指揮者、千葉洋介
「今の凄いな、、、」
フィールドの外。
階段のところで座っていた浅野舞が
声を漏らす。
「勇人が高鳥からボールを取ることまで
読んでたってわけでしょ、、、
並の思考回路じゃない、」
「そりゃ、腐っても元強豪。
そこのキャプテンだった人だしね。
千葉君」
佐藤由紀が付け加える
「勇人くんって、読みが凄く的確。
でも、だからこその隙もある。
千葉君は、勇人くんが先を読んで
カットするのをたくさん見てるから、
勇人くんの先読みのやり方とかも
ある程度わかるはず、、、
二人とも似たようなタイプだしね、、」
もはや工藤が先読みするのは当たり前。
だからこそ、読まれること前提で
次を考える。
読まれた先のことを考え、
そこからどうするかを決める。
高鳥からボールを奪った工藤に対して、
再び別の人間が工藤から奪い返す。
高鳥は、言ってしまえば千葉の思考の中では
当て馬として利用された
「勇人もまた、高鳥とは長い付き合い。
だからこそ、高鳥の動きを読んで
パスカットするとこまで読めたわけか、」
高度な読み合い、
その果てに、
味方すらぶつけてボールを奪った千葉
「1組結構やばいんじゃ?
さっきから勇人が
封じられてきてるし、、、」
工藤の強さは、最初のワンプレーで
白日の元に晒された。
工藤にとって、最初のあの一撃が
千葉に止められたことがかなり痛い。
先手での初見殺しのような一撃を
止められたことで、
工藤に対する警戒度がさっきとは
雲泥の差だ。
「さっきみたいに簡単には
行かない、、、それに、
他の4組のサッカー部だって、
みんな本気、、、、」
「うん、、、
この試合、、4組の方に傾いて来てる。
流れがもっていかれてる、」
工藤が高鳥と千葉に警戒されていることで、
他のメンバーでもギリギリになっている。
防戦一方のような感じ。
工藤がいなければ反撃の目処が立たない。
「なんとか、勇人くんがフリーに
なれば、、、」
流れが戻せるかもしれないのに、、、
「さぁ、決めるぞッ!」
千葉の指揮のもと、
フィールドの状況が変わり始める。
工藤を封じていることで、
攻めの目処が立たなくなった。
今が点を決めるチャンスだと、
4組の全員が勝負に出る。
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