8話 お礼

「・・すごいね。工藤君って」

「ん?」


中瀬先生が去っていったあと、

今後のことについて考えていた時に

佐藤さんに声をかけられた。

俺のことを尊敬するような

目で聞いてくる


「あんなに怖い二人を相手にしても

 全然怖がってなかった・・

 すごいや、やっぱ工藤君は!」


怖がっていなかった、か


「まぁ、そう見えたなら良かったよ」

「・・へ?」


不思議に思う二人に向けて

自分の手を見せる。

見せた俺の手は普通に震えていた。


「流石にあの状況でびびんないほうが

 やばいよ。殴られそうな雰囲気

 だったしな。でも」


浅野さんの方を見ながら


「男でもビビるあの状況に

 女子をいさせることが1番嫌だったからさ」


あの時、浅野さんは遠目から見ても

震えているのがわかるほどだった。

そんな場面を見れば、助けなきゃと体が

自然と動くわけだ


「っっそう・・・」


浅野さんは少し顔を

赤くしながら近づいてくる

はにかむような笑顔でお礼を伝えてくる


「ありがと・・

 助けてくれて。由紀の言った通りだった」

「佐藤さん?」

「でしょ!?」


佐藤さんは俺の手を握りながら

嬉しそうにしている


「工藤君は頼りになるって言ってたのっ。

 いつだってそうだったもん」


そして

こちらに顔を近づけてきて

とびきりの笑顔で言ってくれた

「ありがとう!工藤君っ!

 私と舞を、助けてくれて・・」


本当に怪我がなくてよかった

この二人の笑顔を見れただけでも

頑張った甲斐があるというものだ。



〈グゥーー〉



「うっ」


その時誰かのお腹がなったのが聞こえた。

目の前の笑顔を振りまいていた少女は、

いつのまにか顔がトマトみたいに真っ赤になっていた


「う〜〜〜」

「っふ」

「あ!?今笑ったでしょ!?

 ねぇ〜工藤く〜ん?」


おっとつい笑いが。

見れば浅野さんも笑い声を押し殺して

くすくす笑ってる


「仕方ないじゃんか〜〜!

 お腹空いたんだも〜ん!」

「いやいや、可愛いなと思ってさ」

「かわっ!?」


顔が赤くなってぷりぷり怒ってる。

なんか小動物みたいで可愛いな


「も〜工藤君の前で恥ずかしいってっ」

「まぁあんましお弁当食べられなかったし」


そうか、この二人はあまり昼飯を

食べられてないんだったっけ


「パンいる?」

「「パン?」」


俺は空き教室に置いてあったパンを

持ってきた

買っておいた焼きそばパンと

サンドウィッチである


「男勝りなメニューで申し訳ないけどさ、

 よかったらいる?」

「でも、それ工藤が食べる用じゃないの?

 購買で買ったやつなんじゃ・・・」

「俺は大丈夫。元々少食寄りだしな

 …それに」


見れば隣にいる佐藤さんは

キラキラした目で俺を、いや

焼きそばパンを見ていた

いつのまにか小動物から

肉食動物にジョブチェンジ


「・・・いる?」

「いるーー!」


そういって飛びついてきた


「やっぱ頼りになるよ工藤様〜!」

「近い近い顔が近い」

「・・なんか色々ごめんね?」

「全然いいよ。はいサンドウィッチ」

「私にも?」

「お腹空かせてると思ってさ」


サンドウィッチを浅野さんに手渡した

そうすると少し恥ずかしそうに笑って

「・・・なんか迷惑かけてばっかだね。

 っそうだ、お金は?」

「気にしないでいいぞ。

 美味しそうに食べてくれてるし

 まぁ俺が作ったわけじゃないけど」


佐藤さんはすっかりパンに夢中である

よこで「んま〜」とか言ってるし

まぁお腹すいてたんでしょうね


「そんなにうまいか?」

「うん!」

「まぁお腹がなるくらいだしね〜」

「ちょっ、舞!」



そういってこの日の昼休みは終わった。

何事もなくてよかったよかった

ちなみにこの後浅野さんに

LINEのIDが書かれた紙を渡された。




え?、女子ってIDの紙

持ち歩いてたりする?準備良すぎだろ。




そこだけ気になった。









 

 

 

















 

 




 


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