第10話 堀切拓実。
新爺駅に着くと駅にいた男の人が「蒲生、こっち」と言って手を振っていた。
依然厳しい顔の蒲生葉子さんは、私達を連れて「お待たせ堀切くん」と挨拶をして私も会釈をする。
堀切と呼ばれた男の人は新田樹を見て、「え?優斗の妹って彼氏付きで来たの?」と驚くと、蒲生葉子さんが「違うの。面倒な事になったのよ。この子はうちの弟、偶然愛ちゃんと同じ学校、同じクラスなんだって」と言った。
「え!?蒲生の弟と優斗の妹?いいなそれ」と言った堀切と呼ばれた男の人は、「はじめまして。俺は堀切拓実。優斗…関谷優斗とはよく話して遊んだ仲です」と挨拶をしてくれた。もしかしたらアルバムにいるのかも知れないが、初めて聞く名でしかない。
「はじめまして。関谷愛です」
「こんにちは。新田樹です」
新田樹が新田と名乗っても堀切拓実は驚く事なく、「よろしく」と言った。
その後で「蒲生?顔が怖いけどどうした?」と声をかけると、蒲生葉子さんは「愛ちゃんだけならはぐらかすのに、いっくん…弟が居るから出来ないの。今も噂になってる遺書の事や、学校で関谷くんがどうだったか知りたいって…。だから堀切くんに相談したくてずっと考えてるの」と言った。
「成程な。まあ遺書はなぁ。あるのは知れ渡っていたし、でもあの文章は姫宮の家族と優斗の家族と俺達、後は三ノ輪さん達と警察くらいだろ?」
「だから噂の遺書があるのならって、学校で噂になってて愛ちゃんが聞かれるんですって」
堀切拓実は「あれ?君は優斗の遺書を読んでないの?」と聞いてくる。
「はい、私はお通夜もお葬式も入院していたし、出てきてからはお兄ちゃんの話はしにくくて、そんなものがあったのも、新田くん達が調べてくれたから知れたんです」
私の説明が悪かったのか、蒲生葉子さんは新田樹を睨み、新田樹は「石になる!助けてくれ関谷」とやってくる。
「んー……蒲生、とりあえずさ、はしご案で行こう。で、感触を見たら明日さ」と2人だけの会話で顔を暗くした蒲生葉子さんに、新田樹は「ねーちゃん、ねーちゃんも楽になってくれよ。俺はねーちゃんが卒業式にも出なかったって、父さんから聞いて心配してたんだよ」と声をかける。
蒲生葉子さんは困り顔で「いっくん」と言ってから、「そんな簡単な問題じゃないの」と怖い顔で言うと、険悪な中なのに堀切拓実さんは、「だな、でも今見てて思ったのは、話したい蒲生と、話せない蒲生がいて歪になってるよ。とりあえず優斗の墓参りしてから少し考えよう」と言って蒲生葉子さんをなだめると、「行こう」と言って歩き出した。
「ねえ、君は優斗の妹さんじゃん。家で優斗はどうしてたの?」
「え?家のお兄ちゃんですか?」
「うん。俺たちって優斗は真面目で、放課後はすっ飛んで帰っていく謎の男だったんだよ。それで少しずつ君の為に帰ってるって聞いたんだ。だから少しでも知りたくてさ」
「お兄ちゃんは帰ってくると、1番に自分の制服に掃除機がけをして、消臭スプレーを吹きかけてからガムテープで埃なんかを取ります。そうしたら私を着替えさせて、私の制服も気にせず同じ事をして、もう中学生なのに私の顔や体を見て、『うん。今日は元気そうだね』や、『愛?なんか辛そうだから吸入しよう。後は湯たんぽ作るから胸で抱いてて』なんて言って私の事をやってくれます」
「アイツらしいなぁ…。それで?」
「学校のプリント達をまとめて、お母さんが読み易いように並べて、予定表とかをチェックしてからは、私は宿題と勉強をして、お兄ちゃんは家の掃除とご飯を炊いてお母さんを待ちます」
「懐かしいなぁ。アイツ本当に清潔感があって制服綺麗なんだよな。今もまだ家にいて掃除とか米炊きしてそう」
堀切拓実さんはそう言って目頭を押さえながら「もっと教えてよ」と言った。
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