第3話
「ようこそ救世主様」
「は?」
視界が晴れるとそこは大広間のような広々とした場所であった。
「な、な、な、なんですかここは?」
背中越しに田中の困惑した声が聞こえる。
なんだこれは、一体なにが起こっているんだ。
「あれ、言葉が通じていないのか、おかしい、同じ言語のはず」
あわててはダメだ。隙を見せたらダメだ。冷静にいこう。
俺は大きく深呼吸して状況を整理する。
ベールを纏い顔を隠しているが声から察するに目の前にいるのは、若い女だ。
それから日本語をしゃべっているということは、日本人である可能性が高い。
しかし俺はつい数秒前までバーで飲んでいた。だから日本にいるはずなのにどうして俺たちを囲む人間は中世ヨーロッパの騎士のような鎧をつけ、刀のようなものを腰につけている?
「ご、ごめんなさい。なんでもしますから許してくださいぃぃぃ」
俺がいろいろな可能性を考えているうちに、田中は若い女に近づいて深々と頭を下げた。
「バカっ……」
一斉に向けられる剣先に俺は言葉を失った。
「無礼者!」
背中からのつんざくような声に兵士たちは武器をおろす。
「女王様の御前であるぞ」
「マスターあんたいったい?」
俺が振り返るとマスターはいつもと変わらない笑顔でこちらを眺め、その先にいる女性に深々と頭を下げた。
「よかった、言葉は通じるみたいですね」
女王と呼ばれた女性がにこやかに返すと、田中は脱兎のごとく俺の背中に隠れた。
「申し訳ございません、彼らは王家の忠実な近衛兵でして、先ほどの無礼とあなたたちを突然この世界に召喚したことをお許しください」
「……」
俺は一言も発することはなかった。あまりにも突発的で状況が理解できていなかったからだ。
「一致さんとはいえこの状況を理解するには時間がかかると思われます。ひとまず場所を変え私しより説明をさせていただきたく思います。女王様よろしいですね」
「はい、私も同席し弁明をいたします」
勝手に話が進んでいく。
俺は周囲を見渡して逃げられるスキがないか探していた。
「一致さん」
「なんだ田中」
「私たちどうなっちゃうんでしょう」
震えた声でつぶやいた不器用な後輩に俺から贈る言葉があるとすれば、
知らん。
たったそれだけだった。
いる
異世界結婚相談所~成婚率100%を誇る俺は特別待遇で異世界に召喚されたが、全然成婚できなくてもう日本に帰りたい~ うさみかずと @okure
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