あなたの文字

1話だけ

あなたみたいになりたくて、あなたの文字をなぞってみた

いくらやっても、途中でずれちゃって、あなたの劣化版

あなたのように容易く書けない。ついつい力（りき）んじゃって書けない。

背伸びしてみても、どこからか綻びが生まれる

そうだ。いっそのこと、あなたじゃない文字を書こう。あなたとは、違った自分みたいな文字を

そうすれば、力（りき）まなくても、背伸びをしなくても書ける

いつかは、自分みたいな文字に憧れを抱かれて、あなたみたいな文字を書きたいと思われるかも……

いや、そんな妄想は間違っていた。

文字なんか書かなくても良いんだ。なにも、書くことがなくても

あなたみたいな文字も自分みたいな文字もなくても、地獄なんか堕ちやしない

ただ、自分があなたみたいに書きたいだけ

今の文字はあなたの劣化版。けれども、あなたみたいな文字を自分のものにしよう

何回も何回も繰り返して練習して、力（りき）まなくても書けるようになってみせる

そうしたら、あなたが分かるような気がするから