第7話 イソール② 英雄

ー1915年9月1日ー


俺が戦場に来てからはや二ヶ月が経った。

1日ぐらいはゆっくり昼まで寝たいが、敵の砲撃や銃はそれを許してはくれない。

俺はそんなことを考えながらも朝を迎えた。

現在オルレアン帝国の首都であるロレアン市内上空では激しい戦闘が繰り広げられているそうだ。

そんなことを俺は耳にして朝の支度を済ませた。

そしていつもの塹壕のポジションに着き、仲間たちと談笑して時間を潰していった。

そのまま夜になり、俺はマルコじいさんと夜番の仕事をした。


30年も戦争が続いているため、本国では国家総動員のため教育は停止され歴史を知らないまま戦争に従軍する兵士が多いらしい。

ちなみに俺もそのうちの一人だ。

そのことをマルコじいさんに話すと、この戦争の歴史について話し始めた。


30年前、世界は帝国主義時代真っ只中で、日々列強国が海外に領土や利益を求め競争していた。

そんな中、列強国同士は仲が悪くなり、またそれにより複雑な陣営が構築されていった。

その例がライヒ帝国、グレスティア帝国、クヴェルク王国の三国同盟である。

この同盟は後に中央同盟と呼ばれた。

またそれに対抗するべくオルレアン帝国、プロバンス帝国、イヴェール帝国の間では協商同盟がつくられた。

そんな中、プロバンス帝国の植民地とライヒ帝国の植民地の間で軍事衝突が起きたことでライヒ帝国はプロバンス帝国に侵攻を開始し、この戦争は勃発したそうだ。

また、最初は中央同盟国が有利で、プロバンス帝国の首都ブルンデンを二度占領したそうだ。

そしてそこに登場するのがプロバンス帝国の英雄アラン兄弟だ。


アラン兄弟はもともと中隊長であったが、二度もブルンデンからライヒ帝国を撃退したことで一躍国の英雄となったのである。

その後は協商同盟国が巻き返して今に至るそうだ。


マルコじいさんは第二次ブルンデン攻防の際にブルンデンを防衛して、実際にアラン兄弟を見たことがあるそうだ。

マルコじいさんの右目にある大きな傷は第二次ブルンデン攻防の時についたらしい。


そんな話を聞いていると夜が明けた。



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